■時すでに遅し・・とならないように


安保同盟というものに対して

我が国には勘違いをしている人が多そうです。

軍事同盟というのは、あくまで対等な損得勘定なのであります。


軍事同盟における日米関係は

どう見ても我が国が依存している片務的関係であって

経済関係や北問題、慰安婦決議に見られるような侮蔑事象と

切り離して考えるのが、国際的な感覚なのです。


新テロ法案を可決=野党反対、成立めど立たず-衆院特委

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2007111200584

(時事)



 衆院テロ防止特別委員会は12日午後、インド洋での海上自衛隊の給油活動を再開するための新テロ対策特別措置法案を自民、公明両党の賛成多数で可決した。民主党など野党は採決に抗議するなどして反対した。新テロ法案は13日の本会議で可決。衆院を通過するが、民主党が主導権を握る与野党逆転下の参院では、審議入りのめどは立っていない。延長後の会期内(12月15日)で成立するかどうかは不透明な情勢だ。


新法成立による活動再開はもちろん大切なのですが

この問題はすでに大きな痛手となっています。


「中断」という事態が何を引き起こすかと言う危機感が与党にも薄かったといえます。


何故、参院選までに強行延長採決をしなかったのだという意見もありますが

出来なかったというのが正しい。


まず参院選での与党攻撃の格好の餌食になるということで

与党内部にも「特措法延長強行慎重論」が蔓延していたし、

なにしろ選挙と言う前提がなくても

中断という結果を意識してもたらそうとする

親中派議員などの慎重意見が強かったことも背景にあります。


中断・再開と継続延長の雲泥の差とはなにか?


西村眞悟先生の月刊日本論文をへっぽこ時事放談さんから



インド洋における給油活動の戦略的意義

http://hepoko.blog23.fc2.com/blog-entry-351.html

(新・へっぽこ時事放談さん)



さらに、インド洋での給油活動の戦略的意義について、西村眞悟氏(衆議院議員) が『月刊日本』10月号に書かれた論文より引用します。

・・・テロ特措法延長問題に関して、インド洋における我が自衛艦の洋上補給活動を、海洋における我が国の戦略的活動と捉える議論は少なく、ガソリンスタンドの運用経費と営業成績を点検するというようなレベルの議論をしている。我が国はインド洋でユニークなガソリンスタンドを経営しているのではない

また、この夏の(安倍)総理大臣のインドネシアからインド、マレーシア訪問をみて大東亜戦争における南方作戦を思い起こした日本人は何人いるだろうか。この「前人未到の大戦争」を記憶に定着させておれば、ほとんどの日本人は、これが「戦略的ルート」であることが分かったと思う。この自衛艦が通過し総理一行が訪問したこのルートこそ、我が国の存立に係わるルートなのだ。


~~

また、インド洋でテロ対処活動を展開して我が国から油の補給を受けている欧米諸国は、当然自分たちの活動になくてはならない補給だと評価している。特にこの海域で、帝国海軍と戦ったイギリス人は、日本人に「我々は日本が帝国海軍以来の軍艦旗を掲げていることに感謝する」と語ったという

以上を総合すれば、我が自衛艦のインド洋における洋上補給活動は、如何にささやかであるとはいえ、戦略上極めて重要な活動であるといえる


シーレーン防衛というのは、あくまで日米安保の「サービスオプション」であって

米国が片務的に提供するものではありません。


ましてや、対テロ有志連合国が、海上給油という重要オペレーションを中断する我が国の

シーレーンを防衛する義務はなにもありません。


あくまで、自国の軍事オペレーションとのバーターが

有形無形のサービスオプションをなしているのです。


そして、今回の中断で後退する情報収集への影響ですが


海自の給油活動撤退 情報収集面の影響は不可避

http://sankei.jp.msn.com/world/america/071102/amr0711020053000-n1.htm

(産経)



 タンパには約60カ国以上が連絡官を派遣し、「有志連合村」と呼ばれる建物に入っている。そこでは毎日のように米軍が、イラク、アフガンでの活動に参加するそれぞれの国々に対し、軍事作戦や現地情報を逐一詳しく説明している。国防総省でも「有志連合」諸国の駐在武官らに、定期的に情報提供をしてきた。


 撤収が一時的である場合は、米軍が引き続き日本も情報提供の「仲間」に加える可能性はあるものの、中断が長引いた場合は徐々に情報提供の輪から外していくことも想定される


「日米同盟があるのに何故だ?」

という批判が出そうな話ではありますが

軍事同盟とはそういう物です。


個々のオペレーションにおいて、具体的な共同関係に無い場合は

同盟関係にあっても情報は共有出来ないというのが

そもそもの軍事行動の原則でありまして

「同盟関係にあるのだから」というのはまさしく平和ボケであります。


で、CIAを例にあげますと

CIAというのは、そもそも、極東で展開する情報網と

中東で展開する情報網は組織自体が違うのでありまして

日本国内でCIAとの連携があるからといって

中東のCIAの情報を共有できるわけではありません。


またパキスタン、サウジ等の情報機関、イスラエルの情報機関、

そういったものとの情報共有というのは

外交によってなされるものでして、

安倍中東歴訪の背景にはそういった水面下外交もあったわけです。


なにしろ我が国は自前の情報機関がありません。


石油輸入依存度の高い我が国において、中東情報の副次的獲得は

非常に重要な要素になっているのです。


ただし、それは、対テロ戦におけるポジションにより獲得していただけで

バーター原則の軍事外交においては、オペレーションから外れた立場では

中断によってすべて途絶えます。


一度中断するという「前科」は長く尾を引きます。


再開を成し得たとしても、その前科は関係国からすると大きな不安となります。


単に「国内事情で一旦抜けます」

っていうような単純な話ではないのです。


さて、新法がどのような紆余曲折を経て成立するかわかりませんが

成立即状況回復・・・・かというと、そんなものではない。


現実的な活動再開にも日数はかかるでしょうし、

情報を含めた関係回復には、福田政権における中東外交施策が必要です。


つまり、どんなに急いでも、この六年間で築いた体制を元に戻すには

半年やそこらでは足りません。


その間に中共がどのような面白いことをしてくるか、

台湾、北朝鮮関係含めて、表に出ない大変化がおこるでしょう^^


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京都府知事をされていた林田先生が亡くなられました。


元法相の林田悠紀夫さん死去

http://sankei.jp.msn.com/politics/local/071111/lcl0711112254000-n1.htm

(産経)


いまのネジレ政界を語るに

長く共産党支配の続いた京都の変革を思います。


まさに、革新府政から脱出した時の知事であられましたが

保守精神の方でありました。


温和な方で先の革新知事からも一目おかれていましたが

その在任中にじわじわと共産党支配の爪あとを剥がしていかれました。


まぁ、太田さんとは比べ物にならない大局観をもっておられた。

(大阪知事選はネジレどころではないでしょうねぇ)


林田先生には何度かお会いしましたが、温和でありながら、強い信念を感じる・・・

福田さんの迎合姿勢の浅はかさと比べると

反対派を懐柔しつつ事を成すことの政治力を感じたものです。


ご冥福をお祈りします。