[あらすじ]
幕末、雪深い越後長岡藩からひとりの若者が江戸へ、横浜へ、そして各地へと遊学の旅に出た。藩の持て余し者だったこの男、河井継之助はひとつの学問を究めようとするのではなく、それらの学問を究めた人々の言葉からものごとの原理を知ろうとするのだった。やがて遊学を終え、藩に戻った継之助に課せられたのは、激動の時代にいかにして藩を存続させていくかというあまりにも大きな命題だった・・・。
これこそ、司馬遼太郎の才能がいかんなく発揮された作品だろう。というのも、司馬作品の魅力は「登場人物の魅力」に尽きると思うのだ。こんな発言、こんなエピソードどこで調べてきたの?と思うような、詳細かつ人物像を表すのに的確な小ネタがどの作品にも随所にちりばめられている。
とはいえ、「才能がいかんなく発揮されている」理由は、この作品に小ネタが多いからではない。
主人公の河井継之助は、見ようによっては決して英雄ではないのだ。30過ぎまでふらふらし、芸者をあげて踊るのが趣味で、乱世のために藩の重役に取り立てられたものの、最終的には己の信念のために藩をつぶしてしまうのだから。でも、だからと言っていい加減な人物だったわけでは決してなく、やはり傑出した人物だった。そういう傑出した存在にもかかわらず、結果を出せなかった主人公であるのに、その才能、特異性、カリスマ性などを余すところなくきちんと描けているところが司馬遼太郎のすごさだろう。
高校生のとき習っていた日本史では、幕末ってちょっと苦手だったんだけど(覚えること多いし)、こうやって小説で読むと改めて面白い時代だったんだなあと思う。
BGM:R.G.B./Spangle call Lilli line
