ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。声を失い、でも動物と話ができる、作り話の天才。もういない、わたしの弟。

天使みたいだったしょうねんが、 この世につかまろうと必死でのばしていた小さな手。残された古いノートには、痛いほどの真実が記されていた。

ある雪の日、わたしの耳に、懐かしい音が響いて…。(本書裏表紙より)



短い物語の中に、温かいぬくもりが溢れていて、じっくりと読むことができました。


物語の中で、大きな事件や派手なアクションはありません。

少しだけ変わった弟を持つ、普通の姉弟が過ごす毎日を、姉の目線で静かに描いています。

物語のクライマックスとなる校庭のシーンも、すごく静かな情景なのですが、目の前に情景が広がり、なぜだかとても涙が出そうになりました。



本書の中で、主人公の弟は様々な動物の豆知識を披露していきます。果たしてそれは本当なのか? それとも作者の創作なのか? 気になりますが、あえて調べることはやめました。

「きっと本当だろう」そう思っていたほうが、なんだか楽しく過ごせそうな気がしますから。

生前の罪により輪廻のサイクルからはずされたぼくの魂が天使業界の抽選に当たり、再挑戦のチャンスを得た。

自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。

真として過ごすうち、僕は人の欠点や美点が見えてくるようになる…。

老若男女に読み継がれる不朽の名作。(本書裏表紙より)


本屋で書店員の推薦文にすすめられるままに購入。

内容は人の死を扱っているので少し重めですが、軽快な語り口にすいすい読むことができました。

主人公が中学生なこともあり、ぜひとも中学生に読んでもらいたい内容です(もちろん大人が読んでも十分楽しめます)。


家族のこと、学校のこと、友達のこと、好きな子のこと、青春時代を構成するすべてのパーツが物語に詰まっており、読んでいて懐かしくもくすぐったい感覚になります。

物語自体のオチは少しわかりやすいですが、本書はストーリー性よりもメッセージ性を強く打ち出していると思うので、特に気にはなりませんでした。


はじめはモノクロだった主人公の視野が、徐々に様々な色で満ちてきて、最終的に世界がカラフルに染まっていく描写は大好きです。

外国人窃盗団に雇われ、通帳から現金をおろす出し子の男が最後に打った手は(「ラストドロー」)。

住宅ローンに押し潰されそうな主婦が選んだ最後の仕事とは(「ラストジョブ」)。

リアルで凶暴な世界に、ぎりぎりまで追い詰められた者たちが、最後に反撃する一瞬の閃光を描く。明日への予感に震える新境地の連作集。 (amazonより)


人生のどん底にいる7人のお話です。

内容自体がとても重く、読んでる最中何度も読むのをやめたくなりました。


・ラストライド

 借金で首が回らなくなった町工場の社長の話。家族と自分、どちらの未来をとるべきか?
・ラストジョブ

 住宅ローンを抱える主婦が、携帯の出会い系サイトで援助交際に手を出す話。
・ラストコール

 潰れかけのテレクラで出会った少女から受ける思いもかけない告白の内容とは?
・ラストホーム

 ボタンの掛け違いから人生を転げ落ちた男が、最後の住処としたのは上野公園のブルーシートハウスだった
・ラストドロー

 外国人窃盗団に雇われ、通帳から現金をおろす出し子の男が最後に打った手は
・ラストシュート

 ベトナムでの少女売春の話。7つのうちで一番救いがなく重いです
・ラストバトル

 新橋の駅前で看板持ちをする男が挑む、人生最後の大勝負の行方は?


物語の善し悪しは別として、僕はこの本を好きにはなれません。

世の中の暗部に目を向け、それを切り取るような視点は素晴らしいと思います。

ただ、どの話も消化不良気味に終わっており、救いを見出すのが難しかったです。


テーマはこのままでもいいので、できれば長編で丁寧にじっくり書いてほしかったです。