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神無月のはじまり。~転職できんの、これ?!↓

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神無月のはじまり。~ついに社長とサシ向かい・・・↓

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会社を辞めなきゃいけないのに、
辞められなくて
どんどん日数ばかりが過ぎてゆく日々。

社長以外の人は、私の退職をまだ知らないから
少しでも私が会社に馴染むように
気を使って話しかけてくれる人もいた。

それが、負担でしょうがない毎日。

ある日、
「ディアボラさん、コレ、できましたよー。」
と言って総務部の年配の女性がニコニコして
持ってきたものは・・・







・・・新しい保険証・・・。



小さなクリアケースに入ったソレを見下ろしながら、
私の保健の手続きで一手間取らせたことすらも申し訳なく思って、
私は「スミマセン、アリガトウゴザイマス」と小さく言った。



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そして、
別れは突然やってきた。



その日、私は、連絡のない彼に会いにいこうとしていた。



けれど、もう正直言ってどうしていいか分からなくなっていたので
私は、行く前にジャマール・ママに電話した。
自分から電話することなんて初めてだったけど
そのときは、ママに電話したい気がした。




「もしもし、ディアボラですけど・・・」

「まぁ、ディアボラ!」

「・・・えっと、もしかして、もう寝てました?」

「ん、いや、ただベッドで横たわっていただけよ。」

「あー・・・、すみません。」

「いいのよ、どうしたの?」



どうしたの、と優しいトーンで彼女が聞いてきて、
いったい自分はどうしたのか、と説明しようとしたその瞬間、
次の言葉が一切出てこなくて、
そのままボロボロ泣いてしまったのを覚えている。


驚いて彼女は口調を強めた。

「ディアボラ!どうしたの!」



・・・どうしたのか。
私。
私たち。


あんなに固く将来を誓った人が
今はとても遠く感じる。


あんなにいつも私のそばにいてくれた人が
背中を向けて立ち去ろうとしている。


私は、もう駄目かもしれない、ことを彼女に告げ
それでも今から彼に会いに行ってくる、と言った。


彼女は、励ましてくれた。

彼は仕事でちょっと疲れているだけよ、
私にさえもあの子は最近は電話してもいつも忙しいと言っているもの、
今日は、花束でも持っていって彼を甘やかしてあげなさい、
大丈夫、彼のストレスを取り除いてあげればいいのよ。



それは、彼のことを本当に愛している母親らしいセリフで、
自分に代わって私に、彼をケアして欲しいと言う親の本音だった。


ああ、そうか、
私のすべきことは、彼を傷つけることじゃなくて
癒してあげることなんだなって、
傷ついたり、理解してもらえないからと言って怒ったり、
そういうことじゃないんだなって、
彼女のためにも、私は彼を大事にしなきゃな・・・・
少し恥ずかしい気持ちになって、落ち着いた気持ちで電話を切った。






それで、私はお花屋さんで
ハロウィン仕様にアレンジされた大きな花束とキャンディーを買って、
彼の家へ向かった。

まるごとかぼちゃがついたその花束は可愛くて
オレンジ色と茶色のコントラストが明るい気分にさせてくれて、
これならきっと彼も気に入ると思う、と
横須賀に向かった。






けれど、そこで私を待っていたものは、
取り付くしまのない冷たい彼の態度だけであり、
何も話も出来ないまま、
私は顔をぐちゃぐちゃにしながら帰ってきた。




あの時のことは、思い出すことすら今はちょっとキツイ。






とにかく私の3年の恋が終った瞬間であり、
婚約破棄、
今生の別れの日であった。




どこをどう帰ってきたのか覚えていないけれど、
唯一覚えているのは、帰りの電車に地元の女子高生が
5~6人がやがやと乗ってきて、
誰々と誰々が付き合っている、とか
女子高生らしい恋愛話に花を咲かせはじめた。

すると、それまで噂話に身を乗り出していた一人の女の子が
急に無口になったかとおもうと、突然ボロリと泣き出した。
きっと片思いの好きな男の子のことを思い出したんだろう。
回りの子たちが「ちょっと、この子マジに泣いてるよ!」と
慌てふためきながら慰めていたが、
その子はうつむいてもっとポロポロないていた。



その子の涙を私はサングラスの奥から
ぼーっと見ていた。



多感な年頃の10代の彼女たちにとっては
好きな男の子のことを思って涙することが
愛情が本気である証である。
たとえ片思いで話したこともない相手であっても
きっと彼女は泣きたいほど、彼を毎日目で追っているんだろう。


だけど、1メートル隔てたその車内で、もっと悲惨な状態の女が
人前で泣くことも出来ないで、
腫れた目をサングラスで隠している。


彼女の涙と自分の涙を比較して
私は、滑稽な気持ちになった。







・・・つづく。