母を連れてタクシーで会場に向かう。なんでこうも出がけにああだこうだと出発が遅れるのか。私は子供の頃、これは母方の女性連の特徴だと思い込んでいたのだが。母をプリントの前に立たせて記念撮影、その場でサンフランシスコに住む妹に送ると、後ろに巨大な九代目團十郎や、三島由起夫や樋口一葉がいるというのに、母の持つ杖が「短過ぎる」との返事。他にいうことはないのだろうか。 本日も二度目という来場者もおられ、有り難い事である。廃れてしまったオイルプリントを初めて発表した当初、この絵のような写真作品はなんだ、というわけで、技法について説明しないと目に灯りがともらない、というのを会期中何度も目撃した。それは比喩ではなく、本当に灯らないのである。人に何かを伝えるというのは難しい。それを思うと今回は、来場早々目をピカピカさせている方々が多いのは嬉しいことであった。私には人間ほど興味深く愛おしく、また面白可笑しいものはない。それがそのまま伝わったとしたら、これ以上の喜びはない。 この会場は多目的ホールである。天井にミラーボールが着いている。閉場後、点灯させ記念撮影。数日前に見た時は賑やかに感じたが本日はもの寂しく、総入場者数6810人。蛍の光が聴こえるようであった。
プロバイダの変更に伴いなくなっていたHPが復活。リニューアルどころか数年滞っている更新にもまだ手がつけられそうにないのだが。
『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回
