居酒屋の河本について書いているタウン誌深川は、次号はピッチャーとキャッチャーというタイトルで書いた。酒場において自分の話を聞け、というタイプと聞かされるタイプについて、という意味なのだが、選んだ写真にはアンダー気味だが、手前に大きく静かに飲んでいる人物がいる。その後ろに手振りを交え喋っている人物。当然読者はピッチャーは背後の人物で、手前はキャッチャーだと思うだろう。ところが手前で渋く飲んでいる人物は飲むと声がでかくなり、近辺の酒場で顰蹙を買いつづけた人物である。つまりキャッチャーとはとてもいえない。定年で田舎に帰ったので最近は実に静かであるが。まあこの人物を知る連中のブーイングを私が浴びれば済むことである。 神奈川近代文学館より『百年目に出合う 夏目漱石展』に出品していた夏目漱石が戻って来た。出品目録には漱石のデスマスクが載っていないので出品されなかったのかもしれない。だとしたら私の漱石像は鼻がおかしいと思われたことであろう。漱石の遺品をならべ、書斎を再現した展示がある。おりをみて撮影させていただくことになっている。そこに漱石を座らせる。私のことだから、きっと猫を配することになるだろう
『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回