食欲はわかないが、とりあえず冷蔵庫にあった食材で、腐りやすいものから腹に詰め込んでいる。
昨夜からラジオの緊急地震速報が減って緊張感が緩んだのか、強烈な睡魔に襲われ気を失ったように寝た。
今日は天気がよいので、風呂の残り湯で三日ぶりに寒さに震えながら頭を洗った。
とりあえずサッパリして、頭の中がクリアになった。
目の前は旧4号線だが、水や食料を求めてかなり渋滞している。仙台中心部の電気の復旧は早かったが、物流が完全にストップしているので、長蛇の列に並んでも殆ど何も手に入らないだろう。
兵糧攻めと同じだ。こういうときは無駄に体力を使わないほうがいい。
山で遭難したときの対処と基本的なノウハウは違わないはずだ。
地震があった日の午前中、たまたまガソリンを満タンにしていて本当に運が良かったと思う。
昨日、コンビ二を何件か回ってみた。開いていたファミマの暗い店内は見事なまでに空っぽで、残っているのは溶けたアイスクリームと酒類、コンドームと雑誌くらいだった。
不謹慎だが、在庫一掃できて羨ましいと思った。
その店で買った八本入りのアイスを子どもと三人で分け合って食べた。
甘いものを摂ったからか、ふとアイデアが浮かんでもう一度店内に戻り、冷凍のままのファミチキが残っているのではないかと思った。
勘は当たっていた。10枚入りのパックが手に入った。
その後、べつのファミマでビール数本と焼酎を買って帰路についた。
帰ったら、子どもが電気ついてる!と叫んだ。
すぐに携帯を充電した。
日が暮れる前に急いでご飯を炊き、残っていたサラダ油でファミチキを揚げ、子どもはうまいうまいと無邪気に喜んでいた。
私はファミチキをあてに、2本ビールを飲んだ。
こういうとき、慌ててはダメだ。ドッシリ構えてじっくり相手の出かたを考える。森内名人のように「重厚な受け」の姿勢が必要なのだ。
慌てて悪手を打って自滅しないことが大切だ。
まだこんな事を書くのは早すぎるし、不謹慎だと思う。しかし、嘆いてばかりいても始まらない。
もう、起こってしまったことだ現在進行形で。
一部の民放テレビは繰り返しセンセーショナルな映像を流して視聴者の感情を煽るだけ煽りながら、そのくせ冷静に行動しろという。
海岸沿いの惨状を目の当たりにすれば、誰だって感情的になる。お祭り騒ぎのように全く役に立たない情報ばかり流すその姿勢が少々腹立たしい。やはり、ラジオとは全然違う。
海岸沿いの地域に知り合いも沢山いるし、家族を失った方々や救助を待っている子どもたちのことを思うと胸が締め付けられる・・
しかし大局観的に、これをチャンスと捉え直したい。
千年に一度の自然災害ではあるが、見方を変えれば巨大な有効需要の出現と捉え直すこともできる。
ケインズ政策、つまり日本版ニューディール政策の発動だ。
客観的にみても、やはり東北人というのは、相当辛抱強いし、粘り強い。
こういうことを書くのはあまり好きではないが、日本人はひとつの明確な方向性が見出せれば、一致団結する力もある。
どんなに形勢不利な局面であっても、最善手を指し続ける。
とにかく、あきらめずに最善手を指し続けることによって、閃きも生まれるし、どこかで状況が変わっていつの間にか逆転している。
生協にトグロを巻いて並ぶ買出しの風景を眺めながら、つくづくそう思った。
行き詰っていた日本経済は、この東北での大震災を契機に復活するような気がしてならない。
加えて言うなら、壊れかけていた家族という共同体としての絆も間違いなく再構築されるはずだ。