仙台七夕の前夜祭の今晩は花火大会です。毎年この日は、街の人出とは裏腹に、お店のほうは全く暇になります。そんな訳で久々に時間に余裕があるので、ファッションについて書いてみたいと思います。
まず、コレで飯を食っている人間。つまりプロといわれる人というのは、,実際に服を手に取ってみる頻度が普通に生活しているのひとの何百倍、あるいは何千倍も多いということになります。当たり前の話ですが、ということは数のうえだけの話なら、十年やそこらの短期間で、普通に生活しているのひとが一生の間に接する服以上の数を目にしていることになります。するとどういうことになるか・・。
勿論、そのひとの産まれ持ったセンスというものがあるので当然差はあるのですが、ある程度の期間、一定以上のファッションに関する刺激や情報を与えつづけられることで、ある境地というか、視点が確立されてきます。
若い頃というのは、経済的な理由でも精神的な意味でも自分の引き出しが少ないので、トータルでファッションをコーディネートするということが難しいものです。勿論、まだ何歩か後ろに下がってみて、自分を俯瞰するというか客観視する視点を持ち合わせていない時期でもあります。幼い頃から、鏡を見る機会の多い女性のほうが、この自分を客観視する視点を持つのが明らかに早いのは、異論がないところだと思います。
かなり大雑把な言い方かもしれませんが、概して一般的な20代位までの男性はシャツなシャツ、靴なら靴といったように、それぞれのアイテムについては、それなりにこだわりを持って選んでいるようなのですが、いざそれらを組み合わせる段になると、途端に破綻してしまっているケースが少なくない気がします。素材感やサイズ選び、カラーコーディネート、天気との兼ね合いや、立ち振る舞いなども合わせて、その組み合わせの可能性はほとんど無限と言ってもいいほどあるのですが、ひとつひとつのアイテムに固執するあまり、トータルしてみると色数が多過ぎたり、強めの反対色を組み合わせたりして、いわゆる”ケンカ”している状態だったり、サイズ選びが上下でバラバラだったり・・。あるいは大体はOKなんだけど、靴選びで台無しにしてしまったり・・ダメに見える組み合わせの可能性も、というかそちらの方も無限に広がっています。つまり、組み合わせが過剰になりがちで足し算で失敗してしまっていることが多いのです。
仕事柄、どうしても街を歩いているひとのコーディネートに目が行がちになるのですが、時々上手いなぁ~と感心させられるひとを見掛けます。そのほとんどは、90%以上の確率で女性です。共通して言えることは、彼女達の組み合わせはヘアスタイルから、つま先までよく計算されていて、決して色数が多くないことです。つまり引き算の美です。女性の場合はメイクという要素もTPOに合わせて使い分けることもあるでしょうから、その組み合わせ、バランスを調和させることは、男性より難しいと言えるかもしれません。生物学的に女性のほうがもともと、特に色に対する洞察が鋭くできているということはあるのですが、微妙な中間色や色目の組み合わせはやはり我々男性よりも上手です。「あぁ~、その色の組み合わせがあったかぁ~」なんていうふうに感心させられることはしょっちゅうあります。
さて、配色がシンプルになればなるほど差が出てくるのが、その服のデザインやパターン、そしてサイジングです。そのサイズ選びにしても、身体のラインを強調するときにはこういう素材感とか、ルーズなパターンのパンツのときにはドレープの出やすい生地選びや軽い配色を持ってくるなど、よくレディースのコーディネートからインスパイアされることがあります。
簡単に言って、メンズカジュアルの場合、レディースと違ってもともとアイテムの幅というか、持ち駒が少ないので、その少ない持ち駒のなかでバリエーションを増やしていく以外ないのですが、だから余計にその引き出しを多く持っているひとと、そうでないひとでは、いざ組み合わせをすると差が歴然としてしまうんだと思います。
よく、「自分はこういうの似合わないから・・」と端から未知のものにトライすることを拒むひとがいますが、これでは進歩がないどころか、新しいものにポジティブな女性との差は開くばかりです。失敗を恐れてばかりいては決して進歩はありません。我々もそういう意味では、そうとう勉強代を払っているのですから、ある程度、”服を見る目”ができるまでは、石橋を叩くのもほどほどに・・と言いたいところです。
販売をしていて感じるのは、例えばよくシャツの着丈を気にする方がいらっしゃるのですが、それはパンツのとの組み合わせに対して長い短いを差していることが多く、合わせる靴のつま先やヒールの高さ、もちろん自分の身長や体型まで含めた、全体のバランスに対してのシャツの着丈としての視点が抜け落ちていることが多い気がします。当たり前ですが、ワンサイズ違えば傍から見た印象はガラリと違ってしまいます。ですから、決して派手ではなく、むしろ地味な配色なのに、全体のコーディネートやバランス感覚がいい方が来店したりすると、お店の空気までもガラッと変わってしまうことがあります・・。
こういう話を書き出すとキリがなくなるので、これくらいにしておきます・・。