海底ケーブルは19世紀半ばから国際通信のネットワークに利用されてきました。
第1次世界大戦後に、大陸間の国際電話用として短波による通信システムが実用化され、第2次世界大戦後には静止衛星を経由する無線通信がテレビ中継などでもてはやされましたが、現在では再び大容量でエコーの少ない海底ケーブ(光ファイバー)が国際通信の主役になっています。
2021年現在、447本の海底ケーブルが世界中に張り巡らされて、その総延長は地球30周分に達しています。
海底ケーブル世界地図(TeleGeography資料)
海底ケーブルの敷設・保守費用は高額となるため、それぞれの海底ケーブルは関係国の通信会社で共同保有されています。
世界で60隻の海底ケーブル敷設船が新規の敷設と既存ケーブルの保守に従事しており、そのうち6隻は日本の通信会社の所有です。
KDDI Cable Infinity:写真はKDDIから
きずな:写真はNTTから
ジェンサンの自宅ではフィリピンの大手通信会社PLDTのブロードバンド・サービスを利用していますが、スピードが遅く接続が不安定で、ときには1−2日接続できないこともあります。
海底ケーブルのフィリピン近海地図を見て、障害は主として海底ケーブルの不具合によるというPLDTの説明が納得できました。
殆どの国際海底ケーブルの揚陸点はルソン島で、そこから国内ネットワークが構築されているため、ミンダナオ島はネットワークの最南端に位置しています。
海底ケーブル・フィリピン近海地図(TeleGeography資料)
2021年の世界のインターネット利用者の割合は63%です。
残るのは、島嶼、内陸部に位置する途上国で、通信インフラ整備費用が高額となるため、サービスの提供が困難なケースが多いでしょう。
接続が不安定な程度であれば、以て瞑すべきかもしれません。
世界のインターネット利用者の割合(世銀資料)
世界の大手通信会社さへ手を出そうとしなかったこの問題に、たった一人で立ち向かったのがElon Muskです。
彼が率いるSpaceX社は、2020年代中頃までに約12,000基の小型人工衛星を低軌道(約550km)に展開するというスターリンク計画を遂行中です。
当初は衛星インターネット・サービスに、次には携帯電話サービス、最終的には軍用、科学、探検などの用途にも販売することが計画されており、10年に及ぶ計画の総コストは100億ドルに達すると推計されています。
60基のスターリンク衛星打ち上げ:写真はSpaceXから
2022年末には3,000基を超える衛星が打ち上げられ、45カ国でブロードバンド・サービスの提供が開始されました。
そして、今年になってからフィリピンでもサービスが提供されることになったのです。
スターリンク・サービス・エリア(ホームページから)
利用申し込みはスターリンク社のホームページ(starlink.com)から行い、アンテナ、ルーター、ケーブルなどのハードウェア1式は国外の配送センターから2−3週間で送られてきます。
自動追尾式アンテナの寸法はL51xB30xH61cmと小型で、重量もケーブル込みで4.2kgと軽量です。
アンテナ:写真はスターリンクより
費用は次の通りです。
受信場所移動契約もあるので、通信インフラの整わない地方では重宝するでしょう。
高速インターネットを世界のどこでも楽しめる。
そして、我が家ではスピードが遅く不安定なサービスとはおさらばです。
Elon Muskの発想力と実行力に感謝するほかはありません。
スターリンク利用費用