5月1日正午に、世界中の港に停泊している外航商船で一斉に汽笛が吹鳴されました。

 

国際海運会議所と国際運輸労連が122万人の外航船員を労おうと提唱したもので、船員自身も自分たちを勇気づけるため快く賛同したと思われます。

 

Photo by Sander van del Wel

 

COVID-19が世界的に蔓延している現状では、入港しても揚荷、積荷、燃料・飲料水・食料補給などをするだけで、上陸は許されていないでしょう。

 

乗組員の交代もできないので、多くの船員が長期間の乗船勤務を強いられています。

 

Photo from MOL

 

世界の物流の98%は海上輸送により担われており、世界の経済発展とビジネスの国際化により国際物流は年々増加しています。

 

戦争危険地域へも、伝染病感染地域へも物流を止めることはありません。

 

Photo from MOL

 

Photo from MOL

 

横浜港で712人のCOVID-19感染者を出したDiamond Princessと、サンフランシスコに入港し、122人の感染者が確認されたGrand Princessについては日本でも報道されましたが、それ以外にも多くの客船で感染者が発生しました。

 

4月20日に3隻の客船がジェノア、バルセロナ、ロスアンゼルスで船客を下船させ、世界の客船314隻全てが運行を停止しました。

 

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運航再開の目途が立たない中で、客船会社はナビゲーション・クルーだけを残し、20万人のホテル・クルーは下船させたいところでしょうが、大半の客船は米国とヨーロッパ諸国をホーム・ポートにしているため、簡単ではないでしょう。

 

造船所で定期点検や修繕をしている船以外は、ホーム・ポートの港外で錨を入れて停泊しています。

補給を受けながらひたすら待機するだけです。

 

そして、それらの客船でも5月1日正午には、汽笛が一斉に吹鳴されたことでしょう。

密閉された空間で最後まで船客サービスを続けた多くのホテル・クルーが感染し、亡くなりました。

 

Photo from Cruise Industry News

 

トリアージという言葉の意味を初めて知りました。

医療資源が限られた状況下で、傷病者の緊急度に基づいて治療の優先順位を決めることで、国際的な基準があると言います。

 

Photo from Otis Historical Archives

 

COVID-19の爆発的な感染拡大を起こしたイタリアやスペインなどでは、医療現場で極限的な状況が発生しました

 

多くの重症患者が発生したため、人工呼吸器が不足し、誰を生かすかの選択を迫られたのです。

 

人命を救うために選択した職業で、多くの医師や看護師が苦渋の決断を下しました。

 

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今、ヨーロッパの多くの町で、感動的な情景が繰り広げられています。

 

通りに面する家の住人たちがロックダウンの不安に耐えながらも、バルコニーや窓際から医療従事者への感謝の気持ちを込めて一斉に拍手や声援を送っているというのです。

 

勤務明けで、私服に着替える余裕もなく自宅に向かう医療従事者を見かけた市民の誰かが始めたことなのでしょう。

 

Photo from WeMove Europe

 

ニューヨークでは午後7時から2分間、医師や看護師への労いと感謝の気持ちを込めて、通りに面したアパートやコンドミニアムの住人たちが一斉に拍手と声援を送っています。

 

困難な状況下で任務を全うしている医療従事者を勇気づけるこれ以上の行為はないでしょう。

 

Photo from NY City

 

COVID-19との長い闘いは始まったばかりです。

 

しかし、私たち誰もが持っている使命感と優しさで乗り切って行けると信じるようになった出来事でした。