天ぷらのおと
子供のころ、暑い暑い夏の日に、
私のおばあちゃんは「あっつい、あつい」と言いながら
ビール片手に首にタオルを巻いて、
よく大好物の天ぷらを揚げていた。
そんなおばあちゃんも、4月に亡くなり、もう今は天国にいる。
そして、家に来ている母親が
同じように揚げ物をしていた。
私はその様子をぴちぴちという油のはねる音を聞きながら
おばあちゃんに出会ったことのない
自分の子供と一緒に眺めてる。
こうした日々の何気ない出来事のなかにある
音だったり、匂いから蘇る、大事な人の記憶が
実は一番切ない。
でも、それは悲しいとはちょっと違う。
あ、自分の中に大事な人が生きていて、
私は知らない間にそういう思い出を心に
刻み込んでいたんだ、とほんのり胸があたたかくなる。
私もこれからそういう何気ない思い出を
日々の生活を積み重ねていくことで、
自分の子供や家庭に刻み込んでいきたいと思う。
もうすぐお盆だから、
ちょっとだけ、おばあちゃんが様子を見に来たのかもしれない。
安心してね、みんな元気でやってるよ。
春奈