テレビや雑誌、書籍など、健康に関するものはごまんとあります。
「こうすれば治る」
耳目を集め、売れるためには、どうしても単純でわかりやすいものになってしまいます。
自信たっぷりに自説を展開し、体験者の成功談を列挙されれば説得力もありますが、そのまま
それぞれの事情を抱えた人に適応できるとするのは傲慢の極みではないでしょうか。
読み手である我々も注意しなければなりません。
病気は悪いことだ。
病気になったのは自分が悪いからだ。
病気がないことが健康なのだ。
こうした考えを植え付ける言説は、たとえ善意からであっても、病人を精神的に追い詰めるものである限り、想像力を欠いたものであると言わざるをえません。
薬を使うのはもってのほかだ。
西洋医学は受けてはいけない。
言うのは簡単です。
生きるか死ぬかの時に、七転八倒の苦しみの中で、その苦痛を和らげ、命を救い出す手段に貴賤はないと思うのです。
病気になったのが、その人の一挙手一投足に還元されるなら、病気は過失に対する懲罰でしかないのでしょうか。
誰もが、この現代社会のあらゆる業を背負っています。
病気にならない方がおかしい、否、健康だから病気になれるのです。
風邪ならまだしも、死の宣告に等しい癌と直面した時の悲壮感は、人情としては避けて通れないものでしょう。
様々な葛藤があるに違いありません。
悟った聖者ならまだしも、我々庶民にとって、いつまでも死は恐怖でしょう。
どんなに知識を積み上げても、優しい言葉をかけられても、孤独は募るばかりで、悔やんで最期を迎えるのでしょう。
健康だから。