Modern Tradition -10ページ目

旅度

マイティーチャーの陶展

スパコの千年、リョウコの十秒


テレポート。
それは瞬時に異なる場所に移動できる夢の技術。

cosmic
Cosmic Microwave Background by warneka


ちょっと前に、ニュートリノが光より速いという観測結果が発表され、もしかしてタイムマシンできるかも?という期待が膨らみました。しばらくして、どうもあの観測結果は信憑性に欠けるということで代表が辞任するという騒ぎになり、結局よく分からないままになっています。
科学は、推論を正しく観測した結果に基づき理論を裏付けたり動かし難い観測結果から推論を導いたりと、交互に連動しているのが面白いところですが、専門職の方にとっては生活が懸かっているものですから飛躍した言動も多くなりがちです。そんなこんなで結局、夢みたいな話は現実性がないと思われてしまいそう。

しかし、最近の研究ではテレポートは夢ではなさそうだ、ということになっています。
なんと量子レベルではテレポートが現実に行われるようになっているのです。
(厳密には違うのですけれど)

まずは先日のニュースを。
Photons Teleported 60 Miles By Chinese Researchers

要するに、97kmの量子テレポーテーションに成功したという記事なのですが、意味がわかりにくいですよね。
シッタカにならない程度に補足を入れていきたいと思いますのでユルい感じで眺めてください。



◆量子テレポーテーションとは?


Symph0ni4cM4ni4 by xero-sama


量子テレポーテーションとは、光子などの量子を使って離れた場所に情報を送ることです。

どうしてテレポートできるのかと言うと語弊があり、実際にはテレポートしたように見えるということです。

これは「不確定性原理」が基礎になっています。
「光子や電子の性質は観測するまでは確率でしか知ることができない」という原理で、ある一方を観測することで、もう一つの性質が決まるということです。

あえて魔法で例えるなら

①魔法使いのA君とB君、二人はそれぞれチェックとストライプのシャツを着ています。
このシャツはリバーシブルで、チェックにもなるしストライプにもなります。

②二人は同じが嫌なので、誰かが観た時には、どちらかがチェックどちらかがストライプになるようにシャツには魔法がかかっています。

③不思議ですが、シャツは誰かが観るまでチェックでもありストライプでもあります。
A君とB君がどちらのシャツを着ているかは、誰かが観た時に初めて決定されます。

魔法なので、なんとなく受け入れてもらえるでしょうか。
こういう魔法のような話が、量子の世界では似たようなことが起こり得るのです。
常識的に、あるモノの性質は始めから不変であるかのように思われがちで理解し難いと思いますが、天才の代名詞アインシュタインですらこの常識に固執したのですから仕方のないことだと思います。現代でも決定的な理論ではないようですし。


▼仕組みはこちらが分かりやすかったのです。
双子の光と量子テレポーテーション


念のため、将来的に会社から自宅への移動も一瞬になるとか、そういう話ではありません。

例えば、SFのスタートレックでは、異なる地域に「本人」がテレポートします。
しかし量子テレポーテーションの場合、オリジナルは粒子に分解されてしまい、情報配送先の物質によって再構築されます。

分かりやすく言うと、出来上がるのはクローンで、本人は消滅します。
オリジナルが残らないという点でSFのテレポートとは少し違うのですね。
ですから、生命をテレポートできるかどうか現時点ではワカラナイといったところです。

理論や技術はどうあれ倫理的に問題がありすぎるので、実用化は現実的ではなさそうです。

いろいろ意見が分かれる所でしょうが、研究者の地道な観測に頼るしかありませんので、私たちは余計なことは考えず、量子は瞬時に移動できるということだけ事実として捉えておきましょう。

◆量子テレポーテーションの実用性

 future
future landscape by LisandroLee


さて、生命のテレポートは難しそうですが、この技術の進歩は他に実用性がありそうです。
量子暗号通信や量子コンピュータの将来の登場を促していると言えます。

すでに複数間の量子テレポーテーションに成功していますので、ネットワークでの利用が現実性を帯びてきたということを示しているのです。

まずは暗号について。
昔から暗号といえば「開けごま」に代表される共通の鍵を用いた暗号ですね。
暗号と復号に同じ鍵を使うスタイルです。


インターネットでは、盗聴などのリスクのために、共通鍵の取り扱いに大変な気を遣わなければなりません。誰かに知られてしまったら困りますが、覚えるのも大変!
忘れにくいものは他人にも想定されやすいですし、覚えにくいものはどこかに書いておいたりするものですけれど、またこれにもセキュリティが必要になってしまったりして面倒なことが一杯!

そういう訳で、現在インターネットの暗号システムは主に公開鍵暗号が用いられています。文字通り、暗号を公開しちゃってるわけです。

冗談みたいですけれど本当のことで、ショッピングサイトなどで使われるSSLやサーバ接続などに用いられるSSHなどはRSAシステム(公開鍵暗号)と呼ばれる技術で暗号化しています。
本来、秘密にしなければならないはずの鍵を公開しているのに、なぜ安全なのでしょうか。

理由は「計算が大変」だからです。



公開鍵は素数と素因数分解をもとにしていて、「桁数多い素因数分解は計算が難しい」ということを利用しています。
例えば、ある二つの素数を掛けると

154 × 94 = 14476

このような計算は、数学の時間が早弁タイムでしかなかった私でも楽ちんです。
もちろん電卓のおかげで!

では逆に、14476を二つの素数に因数分解して!と言われますと…

あきらめた♪ってことになるわけです。



答えを知っていなければできないですよね。
素因数分解は式が確立されていないので簡単には解けません。
実際のRSA暗号には、1024ビット以上の数(300桁以上の数字)を用いているので、現実的に解読は困難=安全だということになるのです。

私たちが安心してインターネットを楽しめるのは、公開鍵暗号のおかげなのですね。

しかし量子コンピュータが誕生すると、トンデモナイことになってしまいます。
公開鍵暗号が意味をなさなくなるのです。




◆量子暗号通信ってナニ?

量子暗号通信は、現時点の理論上、唯一完全な秘密通信技術とされています。

本当に完全な秘密通信はワンタイムパッドでなければなりません。
ランダムな数列を1回だけ使う、使い捨て暗号が原則です。

一般に量子暗号通信は量子鍵配送を指しますが、これは盗聴が検知できる通信チャネルで暗号鍵の情報を送受信します。
法則により、盗聴したら必ず痕跡が残るので、盗聴されたらまた安全なチャネルで送受信します。

この情報を傍受したところで、実体のない情報のため意味がないということです。

▼こちらが分かりやすかったです。
量子鍵配送について教えてください

日本の企業では三菱電機などが研究を進めているそうです。

◆量子コンピュータがもたらす未来



Digital Future by Greattsauce


本当にできるか不明ですが、資金力のある所は動かざるを得ないでしょう。
量子コンピュータが実現すれば、今のコンピュータが古代遺産のような存在になってしまうからです。

先に量子コンピュータの登場でトンデモナイことになると言いましたが、これは量子コンピュータの圧倒的計算速度により公開鍵の計算がアッという間に完了してしまうからです。公開鍵は計算の難しさを利用しているため、簡単に解かれては暗号になるどころか、ただ答えを教えているようなものになってしまいます。



▼量子コンピュータの速さについてはこちらが分かりやすいです。
量子コンピュータとは?

スーパーコンピュータで数千年かかる難解な計算だとしても、量子コンピュータなら数十秒でOK。
「お前の一生、矢沢の2秒」超えの圧倒的スケール感です。

「スパコの千年、リョウコの十秒」これが未来のロック。

いや、笑える話ではありませんね。
世界のどこかで量子コンピュータが誕生した時に、私たち一般人の安全な通信は確保されなくなってしまうのですから。ようやくSSLなどの価格が安くなってきたところに他のサービスに変更せざるを得なくなり、安全の名目でネットの固定費は値上がりしそうです。
対応に追われるWeb業界でも一騒動起こりそう。
しかも今回、量子テレポーテーションに成功した国家は中国。一部の国家では、個人の意志はあまり意味を持たないことが知られています。どのような使われ方をするのか果たして…。

量子コンピュータの特殊な性質から、一部で実用化したところで一般化は困難で、普及したとしても長い年月が必要となるでしょう。その間、量子コンピュータを持つ国家・企業・団体が情報を支配することは明白ですし、また技術の転用により想像し難いほどの高性能ロボットが誕生する可能性もあります。支配者層は効率化を求め、あらゆる場面で"遅くて効率の悪い"人間は労働力として認められなくなり、高度なロボットの利用が増えることになりそうです。これまで10000人必要であった仕事が、数人の管理者にロボットとロボット管理会社で完結してしまうかもしれません。そして本来不要な"サービス"を生み出すことが大衆の主な仕事となり、大多数は貧困層となる…なんてことも一つの可能性として考えられないわけではありません。

本当によくあるSFのストーリーのようですが、現代でも、その傾向は現れています。現実に経済規模が発展しても労働人口はほとんど増えおらず、失業率はゆるやかに上がっています。当たり前の道理なのですが、どうやらごまかしたい方々も大勢いるようで。

多くの一般的未来像は、先進技術ともに大衆の貧困と頽廃が付きもの。人類の本能が時代を予知しているのかもしれませんね。確かに世の中どうにもならないことが多々ありますが、だからといって何もしないのはつまらないことです。今が楽しければ良いというのも、私にはつまらないことのように思えてしまいます。技術の進歩が人類の進歩となりますように願っています。


The Rule of Law by arsdraw


IBM、量子コンピュータ実現に向けて新たな一歩

ダイヤモンドLEDで光子を1個ずつ室温で電気的に発生させることに世界で初めて成功

"Electrically driven single photon source at room temperature in diamond"
(ダイヤモンドを用いた室温動作する電流注入型単一光子発生源)


なき仁

琉球の王朝については少数の文献しか残っておらず、とてもミステリアス。

舜天王統(1187頃)~英祖王統(1259頃)~三山時代(1350頃)と続き、佐敷の小按司(領主)であった尚氏が統一。尚王統(第一尚王統)を興したとされています。三山以前の英祖王統は、確かに存在したのではないかという学説が有力のようですが、舜天王統については実在したかどうか、定かではありません。
残された文献の一つ『中山世艦(1650)』に、話題の平清盛で主人公「清盛」の好敵手である「源為朝」その人が沖縄に流れ着いたと記されております。そして、なんと為朝の子孫が舜天の祖であるとされています。しかしながら、これは疑う余地なくでっち上げでしょう。1609年、薩摩によって実質古流球は滅びており、以後、琉球は国家という名目の薩摩一所領にすぎなくなっていました。1600年の関ヶ原の戦い以降、徳川の世が決定的になったことはよく知られていますが、その後の大阪夏の陣(1614)に至る間、薩摩によってこのような侵略が行われたことはあまり知られておりません。『中山世艦(1650)』が編まれる少し前、江戸幕府は林羅山らに『寛永諸家系図伝(1643)』を編纂させました。この系譜によって、幕府の禄を受ける諸家の出自を明らかにし、後世までの奉公を期待したのです。徳川家は三河を所領するにあたり、徳川の祖を源氏と称し、その後、藤原姓に。征夷大将軍になるために再び源氏へと、コロコロ祖先を変えるのですが、ともかく江戸時代は源氏を称しておりました。また薩摩といえば代々藤原姓を称しておりましたが、幕府によって源氏との繋がりにあるものに変えさせられ、源氏と称すようになったのです。そういった徳川の事情を色濃く受け、「琉球の人々も源氏ってことにしちゃおうよ」という 『中山世艦(1650)』が編まれたのですから、為朝説は著しく信憑性に欠けると言えます。

金丸の謀反によって尚氏一族は滅ぼされ、尚氏を自称した金丸が王位につき尚王統と呼ばれているのですから、姓が如何に曖昧なものであるか、建前が如何に現実的でありながら物事をねじ曲げる恐ろしいものであるかを考えさせられます。

今帰仁城


薩摩侵攻の際、真っ先に落とされたのが今帰仁城(なきじんぐすく)です。この城の起源もわかっておりませんが、様々な伝説が残っており、その一つに絶世の美女、乙樽と千代松の物語があります。

三山時代、北山を治める王には、王妃と第二王妃である乙樽(うとだる)という美しい妻がありました。長らく子を成せずにおりましたが、老齢になって王妃が身ごもります。世継ぎの誕生を待たず老齢の王は病気になり亡くなってしまいますが、可愛らしい男の子が生まれました。この子は千代松と名付けられ、もう一人の美しい王妃乙樽が乳母として我が子同様に千代松を育てました。
そんな幸せも束の間。突如、謀反が起こりました。子を産んだばかりの王妃は亡くなり、千代松は家臣に守られて落ちのびることができましたが、戦乱の中、乙樽と生き別れてしまったのです。その後、千代松は各地を転々とし、百姓姿で身を隠すなどして長い年月を過ごします。
18年後、丘春と名を改めた千代松はかつての家臣を集め、城を奪還します。そして生き別れた乙樽を探し出し、北山最高の神女ノロに任じたと今に伝えられています。

宝剣千代金丸も有名です。尚巴志によって滅ぼされた最期の山北王、攀安知(はんあんち)が所有したとされる金装の宝剣。部下の謀反により絶体絶命になった攀安知は、私が死のうとしているのになぜ独り生き残るのかと守護の霊石を十文字に切りつけました。そして自害しようとしたのですが、主の命を守る宝剣の霊力によって死にきれず、刀を川に投げ捨ててから脇差しで最期を遂げたとされています。
これだけ聞くと悲劇の王ですが、例の『中山世艦』には淫虐無道とこき下ろされております。また、現存する千代金丸の製作年が1600年代ではないかと言われておりますので、伝説は正しいのか、真相は当時の人々が知るのみです。いや、当時の人々でさえ「噂」によってしか攀安知を知らず、本当の姿を掴んでいなかったのかもしれません。歴史はどこまでもミステリー。


今帰仁猫


でもまぁ、そんなこと吾輩の知ったことではないのである by 今帰仁キャッツ


なまず

忙しい時こそやりたいことが集中するもので、今回はナマズ話でも。
現代でこそナマズを見かけること機会もありませんが、古代神話や寓話に登場するユニークなキャラクターで馴染み深いのではないでしょうか。江戸時代にも…安政2年(1855)のことですが、事情によりナマズが大流行しました。

およそ27万年前から9万年前、阿蘇の大地にて大噴火が度々起こりました。これにより形成されたのが世界最大級のカルデラ、阿蘇カルデラ(熊本)です。カルデラとは、マグマが出た分陥没し凹んだ窪地のことですね。ここに水がたまり、古代には巨大な湖があったのです。想像しがたいかもしれませんので繰り返しますが、これは世界最大級のスケールです。

伝説では、阿蘇大明神(健磐龍命たけいわたつのみこと) が阿蘇を干拓(田園地帯にかえる)なされた時、湖に大鯰が横たわっていたので退いてもらったそうです。これ以降、阿蘇では鯰の精を祭り、阿蘇の地域ではナマズ食べる風習がないそうです。と言っても私も食べたことはありませんが。
で、そんな大鯰いたのか?とお思いでしょう。
いますやん。


やっほー。現代の主だよ。

このような御方が古代のスケールとなると…萌えます。

この時勢、あまり話題にしにくいのですが、鯰と言えば地震との関係が深いことで知られています。古代(江戸時代?)には地震は鯰が起こすと信じられていました。この鯰(地震)を抑えたのがタケミカヅチです。古事記では「建御雷神」日本書紀では「武甕槌」と記されていますので、まぁタケミカヅチで。神秘的でいかめしい「御厳(
ミイカ)」と助詞の「ツ」、神霊を意味する「チ」から成る古代最強位の神です。国譲りの際、諏訪へ逃れた「建御名方神タケミナカタノカミ」をタケミカヅチは屈服するのですが、この力比べで使った技が「霊気之法」であり、これが柔術の基とされています。ちなみにタケミカヅチと言いますと雷を意味するように思えますが、剣との関わり合いが大変深い神です。タケミカヅチの生まれも「十拳の剣(とつかのつるぎ)」に関わりますし、神武天皇に献上された「韴霊剣(ふつのみたまのつるぎ)」もタケミカヅチのものです。そして時は至り、タケミカヅチが祀られる鹿島神宮の 「鹿島の太刀」で知られる戦国時代の剣聖 「塚原卜伝」が「鹿島新当流」を開くことになるですが、現代でもよく知られる柳生宗厳(柳生新陰流)の師「上泉信綱(新陰流)」が塚原卜伝に師事したと伝えられていることからも最強ぶりが伝わるというものです。鹿島の歴史は大変古く、紀元前660年(神武天皇元年)と伝えられており、ヒミコ(卑弥呼)の時代が3世紀と考えますと、それより千年近く前という計り知れないお話ですね。で、能書きが長くなりましたが、伝説ではタケミカヅチ(鹿島大明神)が鹿島の要石を抑えているから鹿島付近で度々地震は起こるものの大きな被害は受けていないというのです。ナマズと地震との関係性は分かっていませんが、ナマズが電気に敏感であることが知られており、地震の起こる前にはナマズが反応すると言われています。
…ところで日本のナマズ様どこいっちゃったんだろう。

メコン川のダムと生態系
ラオスダム計画延期