H28予備試験刑法 | 後藤が最優秀講師になるまで

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H28年予備試験の刑法です。

この年の刑法はかつてないほど基本的な問題でした。

おそらく、本番で何を書けばいいかわからなかったという人はいないと思います。

したがって、いかに答案を上手く書けるか(事情の拾い方、使い方、メリハリのつけ方等)というテクニックが顕著にあらわれる問題といえます。

知識はあるのに答練で点が伸びないという方は、合格者にこの年の問題をといて、見てもらうのもいいかもしれません。

 

では、内容に入ります。

まず、犯罪の成否を検討すべき行為を特定していきます。

甲と乙は終始共同して犯行を行っているため、この問題で甲と乙の行為を区別して検討する必要はなく、「甲らの行為」としてとらえれば足ります。

そうすると、

1 甲宅に発火装置を設置

2 乙宅に発火装置

という二つの行為があります。

(厳密にはお互いの家に放火目的で入っていますが、共犯であるため明らかに住侵は成立せず、メリハリの観点からも省くべきでしょう。)

 

1について

まず、わざわざ発火装置を用いているため、マッチを使用した場合と異なり、いつ燃える危険性があったかはっきりしません。

私も本番でこれ(実行の着手)を書くべきか気にはなりましたが、書くべきではありません。

なぜなら、設置から作動までに、障害となるような事情(Bがいなくなった等)がないため、実行の着手がいつであってもあまり問題がないからです。

 

本番の科目は答練よりもはるかに難しいため、思いついたことすべて書けば点が伸びていく答練とは異なり、いかに基本的理解、方向性があっていることを示せるかが重要となるからです。

(その証拠として、本番では各科目25点取れれば合格ですが、答練で25点では話になりません。)

そして、こういった実益のない部分をいかに削れるかが、答案バランスに響きます

 

次に甲らはBがいるとは思っていなかったため、故意(38条1項)がありません。

そこで、抽象的事実の錯誤を検討することとなります。

当たり前ですが、故意がなければ犯罪は成立せず、また、錯誤があるとき故意の範囲で構成要件該当性が認められるのは当然の結論ではありません。

したがって、ここはコンパクトに書くならまだしも、省くことは絶対にできません。

 

結論としては判例に沿って法定的符合説に立って肯定すればよいでしょう。

 

2について

有名判例があるところで、物置に放火しただけで「現住建造物」に放火したといえるかが問題となります。

これを知らないというのは演習不足だと思いますが、仮に知らなくても、物置も当然家というのは不自然ですし(とても家が大きく、遠く離れていることもあります笑)、どこまでが家といえるのかと考えれば、十分気づけるかと思います。

 

ここも、判例に沿って、物理的機能的一体性を検討すればよいでしょう。

肯定するのが妥当かと思います。

 

また、乙宅は犯人乙と、旅行中のAの二人暮らしですので、「現住建造物」といえるかが問題となります。

ここは短答知識ですが、判例を知らなければ「使用方法の変更」という規範を導くのは難しかったかと思います。

司法試験の短答が3科目になり、予備試験では知識の広さを試そうという意識もあるかと思います。

 

また、乙は消火活動を行っているため、中止犯が問題となります。

中止犯や正当防衛は、本来(問題がない場合)検討しないのであるから、検討する場合は答案に実益を示す必要があります。

 

結論としては肯定するのが妥当かと思います。

いずれにせよ、中止犯は規範が単純であてはめ勝負になるため、事情を拾いきる意識が重要かと思います。

 

罪数は、「家二つ燃やしてるんだから併合罪だろう」と感じるかもしれませんが、放火罪は公共の危険の発生を防ごうとするものなので、生じた危険が一つなら包括一罪とも考えられます。

細かい知識ですが、短答で出題されたところなので(旧司か新司か、予備校の答練で一度解いた記憶があります)、かなり勉強が進んでいる方はよぎったかもしれません。

2キロ離れていることを考えれば、併合罪が妥当でしょう。

結果的に併合罪ですので、気づかなかったとしても問題はないかと思います。

 

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