さて、別件のため一回飛んでしまいましたが、2の続きを進めたいと思います。
それでは具体的な処置について話しを進めましょう。
1. 修復前の写真撮影、および状態調査
ここでしっかり調査をしないと、ちゃんとした修復方針が立てられません。
2. 額装からの本紙の分離
作品を額装から外します。
本紙を傷つけないように丁寧に作業します。
3.本紙表面の処置
画面にドライクリーニングを行い、表面の汚れを除去しました。
その後、虫糞などの付着物を除去しました。
そして墨字部分と朱印に剥落止めとして、約2%膠水溶液(膠:板膠)を塗布しました。
4.クリーニング
本紙全体にウェットクリーニングを行いました。
本紙を精製水で湿らせた吸い取り紙で挟み、クリーニングを行いました。吸い取り紙に汚れを吸着させて、全体の水染みなどの汚れや斑点を軽減します。吸い取り紙を取り替えて、同様に数回にわたりクリーニングを行いました。
吸い取り紙に汚れを吸着させる。
5.旧裏打ち紙の除去
旧裏打ち紙を剥がします。
旧裏打ち紙の除去作業。
6.本紙の裏打ち
本紙に肌裏打ち(画像)と増裏打ち(画像)を行いました。
・肌裏打ち紙;矢車染め薄美濃紙(長谷川聡製作 手漉き楮紙)
・増裏打ち;八女楮紙(溝田義秋製作 手漉き楮紙)
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
裏打ち作業。
これで本紙の作業は終了です。この後ゆっくり乾燥させて、額の仕立てに入ります。
次回は仕立ての行程です。