扁額(へんがく)の修復 3 | 伝世舎のブログ

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 さて、別件のため一回飛んでしまいましたが、2の続きを進めたいと思います。

 それでは具体的な処置について話しを進めましょう。


1. 修復前の写真撮影、および状態調査
 ここでしっかり調査をしないと、ちゃんとした修復方針が立てられません。


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修復前の状態調査。


2. 額装からの本紙の分離

 作品を額装から外します。
 本紙を傷つけないように丁寧に作業します。


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額装から本紙部分の分離。


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分離した本紙(奥)と額装(手前)。


3.本紙表面の処置


 画面にドライクリーニングを行い、表面の汚れを除去しました。
 その後、虫糞などの付着物を除去しました。
そして墨字部分と朱印に剥落止めとして、約2%膠水溶液(膠:板膠)を塗布しました。


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付着物の除去作業。


4.クリーニング


 本紙全体にウェットクリーニングを行いました。
 本紙を精製水で湿らせた吸い取り紙で挟み、クリーニングを行いました。吸い取り紙に汚れを吸着させて、全体の水染みなどの汚れや斑点を軽減します。吸い取り紙を取り替えて、同様に数回にわたりクリーニングを行いました。

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吸い取り紙に汚れを吸着させる。


5.旧裏打ち紙の除去


 旧裏打ち紙を剥がします。


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旧裏打ち紙の除去作業。


6.本紙の裏打ち


 本紙に肌裏打ち(画像)と増裏打ち(画像)を行いました。
 ・肌裏打ち紙;矢車染め薄美濃紙(長谷川聡製作 手漉き楮紙)
 ・増裏打ち;八女楮紙(溝田義秋製作 手漉き楮紙)
 ・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)


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裏打ち作業。


 これで本紙の作業は終了です。この後ゆっくり乾燥させて、額の仕立てに入ります。


 次回は仕立ての行程です。