シリンダーヘッドのチェック

 



確認事項

カムシャフトジャーナル部に異常はないか
バルブに異常はないか
バルブ軸部、バルブガイドに傷はないか
カムホルダーの締め付けトルク確認
カムシャフト空組み時の動作確認
バルブをセットし最終確認

 

1 カムシャフトジャーナル部に異常はないか

カムシャフト、シリンダーヘッドのジャーナル部に焼き付きや線傷などはないか。





爪に引っかかるような傷や焼き付きがある場合はカムシャフトの修正交換、シリンダーヘッドの再ラインボーリングが推奨されています。

これはペーパー等でならしただけでは、わずかな遊びによりカムシャフトが暴れてしまい破損へつながるためで、肉盛り溶接をした後に再整形という手法がベターなようですが、エンジンの生命線であるカムチェーンバルブ、スプリングの圧力を受けながら高速回転している軸+軸受け部になるので長く乗る場合は慎重にいきましょう。

ホルダーとのクリアランスはプラスチゲージを潰して確認します。

限度0.15mm

 

2 バルブに異常はないか

圧縮漏れがないか確認します。

カーボンを落とし清掃した後にポートから灯油を注ぎ様子を見ます。

そのままにして漏れがなければ圧縮漏れもないという考えです。

このあとバルブを外してしまうので省略しても構いません。



3 バルブ軸部、バルブガイドに傷はないか

タペットシム、リテーナーをマグネットツールなどで引き抜きます。バルブスプリング密巻きが下になりますがこちらも大小も取り外します。回転の落ちが悪い場合はこのバルブスプリングの劣化も考えられます。(ハイカムにした際に回転の落ちが悪い場合も同様)キャブセッティングで調子が出ない場合はこちらのスプリングを純正品、ハイカム用の強化品に交換しましょう。



スプリング自由長限度

インナースプリング 33.8mm

アウタースプリング 41.5mm



その後、バルブコンプレッサーを使いコッターを外してバルブを引き抜きます。ピンセットとマグネットツールがあるとコッターを取り外しやすいです。分解後、バルブの軸、バルブガイドをチェックし傷や摩耗があった場合はいずれもバルブ&ガイドセットでの交換が求められます。


バルブとバルブガイドのガタ

吸気側0.09mm

排気側0.10mm


バルブステム径 限度

吸気側6.900mm

排気側6.805mm


バルブステムトップ限度

4mm


線傷や摩耗がありバルブステムシールを替えてもオイル下がりが止まらない場合は打ち替えを内燃機屋さん相談しましょう。



 

4 カムホルダーの締め付けトルク確認


カムシャフトを設置しカムホルダー(カムキャップ)を規定トルクで締め付けられるかチェックしましょう。トルクがかけられない場合は分解しているこの状態でリコイルしてしまった方が賢明です。


  カムホルダー締め付けトルク
  8.82-10.7Nm

 

5 カムシャフト空組み時の動作確認

バルブがない状態でカムシャフトが規定トルクで空組されていると思います。

この時に手でカムシャフトを回しするするとスムーズに回転すれば問題ありません。しかし、カムホルダーが交換されてしまっている場合は、がたつき引っ掛かり、最悪の場合はカムシャフトが回らないなんてこともありますのでその場合はクランクシャフトへダメージが行く前に内燃機屋さんへ相談した方が良いと思います。

また、後期のシリンダーヘッドではカムシャフトがスラスト方向へ動きカタカタとずれてしまう場合がほとんどです。この場合はスペーサを入れて手でスムーズに回せる範囲でがたつきを抑えてあげましょう。

 

6 バルブをセットし最終確認

再度バルブを組みなおし、圧縮漏れがないようにポート側から灯油を注いでバルブの密閉度をチェックします。

※バルブのすり合わせを行う場合は光明丹であたり面を確認しながらすり合わせます。当たりが均一フェイスの中央に出ると良いのですが、最悪の場合はシートカットによりあたり面を出す必要があります。



シートあたり面限度1.5mm

バルブフェイスの中央があたるように

下部から0.5mm以上



灯油の漏れがないことを確認できたらシリンダーヘッドの確認はこれで終了です。滲み程度なら可としています。