19世紀英国のファッショントレンドを牽引したのは、ヴィクトリア女王。 | 個人用途の新速記法 EPSEMS(エプセムズ)

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2022年12月2日 日本経済新聞より引用 消えたジュエリー(8) ジュエリージャーナリスト 本間恵子 ジェットのネックレス



女王やプリンセスが流行を牽引(けんいん)するのは、今も昔も変わらない。19世紀英国のファッショントレンドを牽引したのは、ヴィクトリア女王。その好みはジュエリーの流行にも大きな影響を及ぼした。

1861年に夫のアルバート公が逝去すると、女王は長い服喪の期間に入り、女性たちもそれにならった。当時、夫が亡くなると、妻は2年以上も喪服を着る習わしでもあった。きらびやかなジュエリーはつけてはいけない。そこでこのネックレスのように、漆黒のジェットがジュエリートレンドの最前線におどり出たのだ。

ジェットは化石化した樹木。英国のウィットビー近郊で産するものは質がよく、細かな彫刻にも向いていた。しかしデザインが次第に時代遅れとなり、需要が衰え、採掘場も閉鎖されるに至った。

今年9月、エリザベス女王の葬儀に参列した雅子皇后はジェットのビーズネックレスを着用していたようだ。英国の王族にジェットをつけた女性はおらず、みな思い思いのジュエリーで装っていたのが対照的だった。本場ではとっくの昔にすたれているにもかかわらず、日本では今も葬式用として、中国産ジェットが売られ続けている。(1860年頃、米ヒューストン美術館蔵)




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