昔のこと。
私はお母さんが大好きでした。
お母さんには彼氏がいて、いっつも家にいるわけじゃないから
一緒にいる時は、会話がなくてもすごく幸せで。
お母さんが働いてなくて、
お父さんの遺産とおじいちゃんからの、お金で遊んだりしてても。
大好きでした。
お母さんは
授業参観に来てくれる親でもありませんでした。
きっと、友達のお母さん達からの評判が良くなかったから、来にくかったんでしょうね。(苦笑
でも授業参観のあと、
一緒に晩ごはんを食べて、映画見て、買い物して…、
お母さんなりに気を使ってくれて。
それが私たちの”約束”だったんだと思います。
数年前、六月中旬だったと思います。
今日みたいに雨が降っていました。
授業参観も無事終わり。お母さんはもちろん来ませんでしたが。それでよかったんです。
友達がそれぞれお母さん達と帰っていくのを見ながら、
私は約束の場所で待っていました。
…お母さんは来ません。
10分20分の遅刻はあたりまえ~なお母さんだったので、30分待って、電話をしました。
出ませんでした。
1時間たってまた、電話しました。
それでも お母さんは 電話 に 出ません でした。
私は自分でもコントロール出来ない怒りを覚えました。
仕方なく
雨に打たれて帰りました。
家に着いて、
車があることを見てあれ?と思いました。
このときから、胸のあたりがざわざわとしていました。
家に入ってからまず
お母さんの携帯電話の有無を確認しました。
…家には、ありませんでした。
あったのは、お母さんの彼氏の上着だけでした。
私は
母が
私の事を見限ったのだと思いました。
わざと電話に出ないのだと。
私の事を嫌いになったから
だから無視をしているのだと。
男のほうが大切なんだろうと。
…そう思いました。
そしてそれは事実でした。
そこで私は、ああ、あぁぁ、手首を切りました。ボールペンで。
意外とざっくり切れました。
だら、 たら、 だら、 くらいに血が流れて、
うわぁ、ボールペンで切れるんだ…。と思いながら、座りこんで、切り続けました。
ボールペンの黒と、赤黒い血液は、どんなにリアルなホラー映画よりも
鮮明で、本当で、真実で…、これだったんだなぁ、…
しばらくして、お母さんが帰ってきました。
私の部屋に来て、私を叱りました。
だけど私は、なんで怒られるのかが理解出来なくて
また泣きました。
すると
お母さんも泣き出しました。
私は
お母さんの言葉が理解できませんでした。
一言一言を理解出来なくて
この人が
日本語を話しているのかどうかも、それ以前に
言葉がわかりませんでした。
分からなくなっていました。
お母さんは
「床、拭いておきなさい」
と言って、また出かけて行きました。
いま思うと、私は現実から、目を、そらし続けていました。
夕食は作らない。学校に来ない。目を合わせない。帰ってこない。
無関心。 嘘。 虚偽。
アァ
コノヒト ハ
カンシン ガ
ナインダ。
気づくのがちょっと遅かったんです。
私はお母さんから誕生日にもらった、私の宝物を燃やしました。
写真 で 微笑んでいる
…お母さん。
…私。
…お父さん。
お父さんの顔がヂリッという音をたてて溶けた時は、泣くかな。と思いました。
私は強い子でした。
弱い私は、これから生きていけませんから。
だけど最後に、腕から流れる赤い液体が
私の代わりに 泣いてくれました。
すぅっ と息を吸って
上を向いて
私は ゆっくり 目 を 閉じました。