園子温監督「ヒミズ」を錦糸町の楽天地シネマで鑑賞(ある意味本作には絶妙な場所)。




本作は「今最も客が呼べる日本映画の監督の新作」「ベネチア映画祭受賞」「震災後が大きなテーマ」など、話題性に事欠かない。

身勝手で暴力とお金でしか社会との関係性を保てない大人たちの間で、「住田」(染谷将太)と「茶沢」(二階堂ふみ)が、文字通りのたうちまわる姿は「大人はわかってくれない」と感じた経験があれば、きっと胸を打つ作品ではないかと思う(ヤン・イクチュン監督「息もできない」と同種の衝撃があった)。

個人的には、園監督の「性と凶器と暴力が行き着いた」前2作「冷たい熱帯魚」「恋の罪」とは、一連の連作、、という位置づけのように思えた。

どれだけ暴力に暴力を重ね、完腐なきまで勝利しようとも、結局震災や津波の前では、全くもって無力であること、しかし相変わらず大人たちは暴力や陳腐な言葉でしかコミュニケーションができないこと、そういう中で、若者たちには這ってでも立ち上がってほしいこと。。

そんな事が3つの作品全体を通じて、はじめて見えてきたことだろうか。最後の「ガンバレ!住田!」という終わり方に、大変余韻が残った。83点。
スタバ丸の内三菱ビルで「ボケずに健康長寿を楽しむコツ60 アルツハイマーにならない食べ物、生き方、考え方 (角川oneテーマ21)」読了。

昨年たまたま調べていて驚いたのだが、医療用医薬品で最も売れているのは降圧剤でなく、今や「アリセプト」である。

いわゆる「進行を遅らせる」アルツハイマー型認知症の薬剤(まる子ちゃんが宣伝してるやつ)。
昨年ようやく新たな承認薬も出てきたものの、未だ抜本的な解決策がないのが現状である。

しかし、生活習慣に気をつければ発症リスクが抑えられる。それを「TIPS」風にまとめたのがこの本。内容は、題名の如し。著者の生田哲さんは薬学博士で、EBMに基づき「ウラ」をとってあり、どの著作もはずれがない。

食べ物で例を挙げると、青魚、カレー、ブルーベリー、シナモン、フルーツ、豚レバーなどが良い。
行動面ではボランティア活動、マルチリンガルの学習、自然を歩く、などがよいそうだ。

面白いところでは「ネットサーフィン」「ヨガや瞑想」などもいいようである(親に勧めておこう)。
食べ物/生活習慣に加え、発症のモトとなるタンパク質やアミノ酸名もきちんと記述してあるので、既知であるが、改めてメモに取った。

ただ存在が悲しいかな、地味な存在の本。。題名はもっと売れるよういま風に「アルツハイマー HACKS!」やら「残念な人の認知症の習慣」とかにしたらいいのではないかと思った(ふざけすぎか)。

2011年7月刊。

ボケずに健康長寿を楽しむコツ60 アルツハイマーにならない食べ物、生き方、考え方 (角川on.../生田 哲

¥760
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内田貴氏の「民法改正:契約のルールが百年ぶりに変わる」(ちくま新書)を真鶴にて読了。

著者の民法教科書は、司法試験受験生を中心に、とっても有名である。

その民法改正の中心的な存在の学者によって、改正の必要性や論点がまとめられていて、たいへんわかりやすかった。

日本の民法は既に100年以上経過しており、それでも相応に機能しており、完成度も高いわけで、改正の必要性はあるのか?というのが、自分も含め思うところ。

そもそも94条2項とか、177 条とか、条文番号で何となくイメージできちゃっているものが変わってしまうのは、いささかキツイ。。それは法曹に携わる人なんかは、率直な意見ではないだろうか。。

しかし「法務コストの削減」「国際競争の観点」「成長戦略としての位置づけ」「約款」(←リアル。。)等の点、またそもそも教科書とかの解釈論に委ねないとならない民法は、市民のものか?単なる学者とか専門家だけがわかるものでいいのか?という問題提起がなされ、かつ具体的に制度疲労を起こしている事例なんかを挙げていて、大変読みやすかった。

「成長戦略」という面では、カンボジアでは昨年末新民法が適用開始となったが、日本の民法学者が起草に携わっている。

例えばそこでは、「錯誤」の効果を「取り消すことができる契約」など日本の改正論議を先取りした内容となっていたりして面白い(日本ではおなじみ95条は「無効」)。

あと、現行民法の解釈を精緻に体系化したのが、鳩山一夫の弟鳩山秀夫であった。しかし「単なるドイツ語の翻訳」と同僚の厳しい批判にあい、学者を辞めてしまう。。

そのとき悔しさのあまり住込みの書生の手をとって涙を流したというのだが、その時の書生が、あの著名な我妻栄先生という、何か「果たし状」みたいな内容もあって、楽しめた。

2011年10月刊。

民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)/内田 貴

¥798
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岩田規久男著「ユーロ危機と超円高恐慌 (日経プレミアシリーズ)」を総武線で読了。

ここ近年、著者は「円高の根本原因はデフレ誘導を続けている日銀にある」と主張してはばからない(「デフレと超円高」など)。

統計データの引用だけでなく、経済学の理論モデルに基づいて話が展開されているので、極めて説得感・納得感がある。

本作では、ユーロ危機の根本が「最適通貨圏」という考え方から、仮に北海道や沖縄が自国通貨を持っていたら、、という具体的な仮説を基に、説明を展開している。
で「本来ユーロを導入すべきでない南欧諸国が加入していることが危機の原因」という結論が導き出されている。

またマスコミの批判にさらされている米国の金融政策も、実は正しい方向性であるのだと、論を展開している。

デフレ、大震災、そして今回のユーロ危機、などにタイムリーに出版をされている。本来現実の危機に対応すべきなのが経済学(社会科学)の役割だと思うので、スピーディーな出版活動は拍手を送りたい気分。

歯ごたえはある本なので、マクロ経済学のモデル(マンデル=フレミング、フィッシャー方程式、フィリップス曲線あたり)の結論レベルの予備知識はあると理解ははやいかも。

日頃「ユーロはなくならないか?」「米国は基軸通貨なのか?」的な質問ばかりうけて、村上春樹的にいえば「やれやれ」な小生にとっては、ちょっとしたネタ本的な感じであった。2011年12月刊。

ユーロ危機と超円高恐慌 (日経プレミアシリーズ)/岩田 規久男

¥893
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