民訴、商法と解いて、最後に民法に取りかかりました。設問1は、94条2項の類推適用の問題であることはすぐにわかったのですが、それに至るまでが難しいと感じました。

 

94条2項類推適用に持って行くためには、Cはいちど対抗要件でAに負けなければいけません。ところが、甲建物には所有権移転登記がありますが、その原因は架空の譲渡担保です。このような場合でも対抗要件といえるのか。

 

ただ、問題文の当てはめ用の事実の長さからすると、帰責性があるか、帰責性の程度はどこまでなのか、が本問のメインと思いましたので、本題に入る前に長々と検討するのは避け、登記については検討せずにスルーしました。

 

無過失まで必要か、については意思外形対応説なんてのがあった気がしますが、あやふやな知識を使うのは危険と思い単に帰責性の程度としました。

 

設問2はよくわからなかったので、条文を挙げて検討するようにしました。

 


第1 設問1
1 Cとしては、弁済供託(494条)により取得した甲建物の所有権に基づき、本件登記の抹消登記手続を請求することが考えられる。これに対しAは、Cは甲建物の所有権を取得していないと主張することが考えられる。どちらの主張が正当か。
2 Aは、Bから、平成23年7月14日、甲建物を1000万円で購入している。また、Cは譲渡担保付きではあるが、Bから、平成23年12月13日、甲建物を500万円で購入している。すると、AC間の関係は、Bを起点とする二重譲渡関係になるから、所有権移転登記を得ているAが所有権者となる(177条)。したがって、Cは甲建物の所有権を取得できないのが原則である。
3 もっとも、CはBから甲建物を購入する際、譲渡担保契約があり、債務を弁済すれば甲建物の所有権を得られると信じている。94条2項によりCを保護できないか。
(1)まず、AはBに欺されて譲渡担保設定契約を締結しており、通謀がないから、94条2項を直接適用することはできない。
(2)もっとも、甲建物について譲渡担保を登記原因とする所有権移転登記があることから、94条2項を類推適用できないか。
 94条2項は、虚偽の外観を作出した者に帰責性がある場合、その者の犠牲において第三者を保護するという権利外観法理にある。すると、94条2項を類推適用するための要件は、①虚偽の外観の存在、②外観に対する信頼、③権利者の帰責性、であると解する。
 本件では、Aは、甲建物について譲渡担保を設定する意思がないのに、その旨の登記をしており、虚偽の外観を作出している(①をみたす)。また、Cは、契約締結に際して譲渡担保設定契約書と甲建物の登記事項証明書を提示され、貸金債権を弁済することにより譲渡担保を消滅させられることを考慮して甲建物の代金が低く設定されていることから、譲渡担保を原因とする所有権移転登記の存在を信じ、債務を弁済すれば甲建物の所有権を取得できると信頼しているといえる(②をみたす)。さらに、たしかにAはBにだまされているものの、Bの言葉を鵜呑みにし、登記申請書に署名押印している点で帰責性がある(③をみたす)。
 したがって、94条2項を類推適用できる。
(3)さらに、無過失まで必要か。この点、権利者の帰責性が通謀虚偽表示と同等であれば善意のみで足り、そうでなければ無過失まで必要と解する。
 本件では、たしかに、AはBの言葉を鵜呑みにし、架空の貸金債権を担保するための譲渡担保設定契約書や、譲渡担保を登記原因とする甲建物の所有権移転登記の登記申請書について、書面を持ち帰って検討することなく、その場で署名押印しており、帰責性の程度は大きい。しかし、Aは法律の知識に乏しく、AがBを信じ切っていることを利用され、Bにだまされていることから、Aの帰責性は通謀虚偽表示と同等とはいえない。したがって、無過失まで必要である。
 本件では、Cに過失があるから、Cは保護されない。
4 以上より、Cの請求は認められない。
第2 設問2
1 CE間の法律関係
(1)Dは、Cの承諾を得て、平成26年8月1日、甲建物をEに転貸している。賃貸人の承諾があることからEは適法な転借人である(612条1項)。
(2)その後、平成27年3月10日、CとDは甲建物の賃貸借契約を解除する旨合意している。この場合、CはEに合意解除を対抗できるか。
 この点、398条は抵当権の目的となっている地上権の放棄は抵当権者に対抗できないとする。この規定の背後には、ある権利の対象となっている用益物権の放棄は当該権利者に対抗できないという法意があると考えられる。転貸借は原賃貸借の存在を基礎とするから、398条の法意は転貸借と原賃貸借の場合にも当てはまると解する。
 したがって、合意解除は、転借人に対抗できない。
2 CはEに対し25万円を請求できるか
(1)CはEに合意解除を対抗できないから、CとEとの間では、原賃貸借は存続しているものとして扱われる。そうすると、DE間の転貸借も存続している。
(2)転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う(613条1項)。この場合の義務とは、転貸借における義務だから、転借人は、転貸借における賃料以上の金額を支払う義務がない。
(3)したがって、Cは、月額15万円の範囲で請求できる。
3 EはCに対し30万円を請求できるか
(1)Eは、608条1項の費用償還請求権に基づき請求することが考えられる。建物に雨漏りが生じたままでは建物を使用することができないから、雨漏りの修繕費用は「必要費」にあたる。しかし、必要費の償還を請求できるのは転貸人に対してである。賃貸人に対しては、転借人は義務を負うのみで、権利を有するわけではない(613条1項参照)。したがって、608条1項を根拠としては認められない。
(2)不当利得(703条)は、原賃貸借の賃料が修繕費を考慮して相場より安く設定されていることから、Cは対価なしに利得を得ているわけではないため、「法律上の原因がない」とはいえない。したがって、認められない。
(3)Cとしては、196条1項の必要費償還請求権に基づき、甲建物の返還時に30万円の償還を請求することができる。Cは明渡しまで償還を受けることができないが、明渡しまで相場より安い賃料で利用できることから、不当な結論ではないと考える。

以上

 

 

AD