016 詩:子供が逃げた |  “ RAVEN's void ”                         = 異端派・弾き語り =

 “ RAVEN's void ”                         = 異端派・弾き語り =

大 鴉 - れいぶん - と申します。
ギターはオヴェーションのマトリックス。
音楽的にはプログレッシヴ・ロックやトラッドに影響されました。

妖しくほの昏い世界を今後も掘り下げてゆきたいと思っています。



『 子供が逃げた 』

 夜明け前に子供が逃げた 
靴も履かず もつれる足で
闇に沈む古い家から 
あとも見ずに 転げるように
凍りつくよな静けさに追われて 
静けさの 更にその 深みへと

屋根のからす(くちばし)閉じて 
 身じろぎもせず夜明けを待つ  
闇に沈む大きな家に
何を 置きざりにして来たか
子供は何も もう覚えていない 
ただ 走り続ける 喘ぎながら

人も車も消えたハイウェイ
子供は走る センターラインの真上
駆けて行く子供
止まれない子供
狂いかけた子供
狂えない子供

 夜明け前に子供が逃げた 
靴も履かず もつれる足で
闇に沈む古い家から 
あとも見ずに 転げるように
凍りつくよな静けさに追われて 
静けさの 更に その深みへと

喉に恐怖が厚く厚く張りつき
もう叫び出す事さえできない
後ろで夜が 今ほつれ始める 
夜明けが全てを暴き始める

夜明け前に子供が逃げた
夜明け前に子供が逃げた
夜明け前に――

                        

          《 詩・曲 大 鴉 - れいぶん -