サッカーの本なのに教育に携わる方に読んでほしい。 | リーンのガラパゴスサロン~趣味や娯楽の広場

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 ブラジルW杯が今、佳境を迎え、決勝トーナメントに入っている。ブラジルはチリとPK戦の激闘の末勝ち上がり、日本に勝ったギリシャもコスタリカに追いつきPK戦で敗退したものの同点に追いつくしぶとさを見せた。これを書いている3時間後にはフランスがナイジェリアと対戦する。フランク・リベリを故障で欠いたことがかえって結束を高め、フォーメーションが固まった結果になったのだろうか。南アフリカ大会でボイコット騒ぎを起こして惨敗したことからすると予想以上の躍進かもしれない。
 そのフランスサッカーは下記の本によれば

 ヨーロッパ31カ国のトップリーグを対象に選手の国籍を調査した結果、フランスがブラジルに次ぐ世界第2の供給大国になっている。(7P)


 というほどの人材輩出を遂げている。その秘密を青少年時代の育成から探ったのが下記の著書である。


フランスの育成はなぜ欧州各国にコピーされるのか―世界最先端フットボール育成バイブル/結城 麻里
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 だが、今回はフランスサッカーの歴史と躍進についてではなく、教育と日本の現状を鋭く突いた批評についての文章を書いてみたい。で、私が惹かれたのはこの文章だった。


 “落ちこぼれ”“失格者”の烙印は押さないことである。(219P)


 とかくレッテルを貼って差別しがちな日本にとっては刺激的な一文だが、エリート選手を育成するはずの組織においてそんなことができるのだろうか。先に挙げたリベリは2歳の時に交通事故で顔に傷を負う見た目のハンデをつけられ、さらに育成センターに入っても勉強に身が入らず(基本的には文武両道)、結果的にセンターを追い出されてしまう。ところが3部リーグのチームが拾い上げ、やがてバロンドールの最終候補者にまで上り詰める。もちろん、彼の「ラージュ」といわれる怒りにも似た負けじ魂のなせるところが大だが、センターから落伍してもサッカーから追い出さずに救ったチームがあるところにフランスの懐の深さを見る。これは国の育成組織と各チームの連携が出来ていることにあるようだ。


 リベリの栄光物語を読むだけでも興味深いのだが、フランスと日本には何か国情の違いがあるのだろうか。


 ……「よく、アフリカや南米と比べて、日本人にはハングリー精神がないという人がいるが、おかしいんじゃないかと思う。豊かな国であることを批判されても……」と言っていたことがある。

 確かにその気持ちはよくわかる。貧しい国になった方がいいと思う人はいないだろう。

 だが、フランスの経済力は世界第5位、日本の経済力は世界第3位。大ざっぱな経済指標では大差ない。

 むしろフランスの方が本当の豊かさを持っている気がすることも、しばしばである。では、何なのだろうか。

 私(著者)は、問題は別のところにあると思っている。日本のフットボーラ―育成が、まだまだ貧困層や不安定層の子たちに届いていないのではないだろうか。(222P)


「福島も熊本も有料なんだよ……。地元の政治家も資金援助もしたが有料では……」

この話(親がお金を出して習わせるということ。筆者注)には、フランス人の誰もが、「ゆ、有料!?」と目を点にする。「有料じゃ、優秀な選手なんか、最初から集められないじゃないか!」と叫ぶ人もいる。

「もしフランス育成が有料だったら、優秀な選手の輩出数はぐんと減っていただろうね」(347P)


 国の豊かさとはなんだろう。フランスでは親たちが支払うのは中学校の給食費のみ(64P)なのだそうな。お金のかけ方、使い方に見ると、日本の精神的貧困をここでは見てしまう。子どもたちに等しくチャンスを与える。親の収拾に関わらずに将来への道をつくる。こと、サッカーにおいてはフランスの方が先を行っている。結局、個人の財力と各チームのバラバラの育成に頼る日本ではまだまだW杯の決勝トーナメント進出は運だのみだろうし、サッカー大国と言われるのは夢のまた夢といえる。たかがサッカーでも国の内情をあぶり出すことはできる。