達郎 そして10曲目がブランニューな1曲でございます。今回のアルバム、そういう意味で純粋にブランニューな曲は3曲でございますが、これはこのアルバムでは異色な1曲でありまして、いわゆる女言葉の歌です。今まで女言葉の歌なんてほとんど歌ってこなかったんですけれど、ちょっとそういう曲が作ってみたくてですね作った曲なんですが、メロウなブラコンのサウンドなんですけれども詩だけ読みますと完全に演歌であります。いわゆるお水のお姉さんがですね男に尽くすという、よくある昔からあるですね演歌のパターンで、これもマイナーメロディーで展開した完全に演歌なんですけれども、これをそうしたブラコンのえー、ちょいと70年代的なメロディーラインでいくのでですねそこがミソなんですが、えーそれをまた女言葉で歌うといいかな、という。ホントは若い演歌歌手の方に女性でも男性でもいいんですけれども歌っていただけたらな、と思いつつですね。でも意外に自分でこう脇道にそれた曲だと気に入ったものが意外にできるんですよね。こう、作家的パトスといいましょうかそういうものがあるのでですね、じゃあ自分でレコーディングしてやってみようかな、と。これもなかなかこの音世界をまとめるのにですね、すごく難しくて時間がすごくかかったんですけれども、がんばっただけのことはあると自負しております。10曲目、タイトルからして演歌チック、「いのちの最後のひとしずく」
♪ いのちの最後のひとしずく
えー、わたくしのアルバムに「レアリティーズ」というレアトラックばかり収録した、もともとあれに入っておりますが、もともと鈴木雅之さんにかいた「MISTY MOUVE」というのがありますが、ああいうような路線の1曲であります。「いのちの最後のひとしずく」、こういう曲を書くようになった自分も大人になったなあという感じがいたしますがですね、でもなんか、意外と自分で気に入ってたりするんですよ。まあ、そんなことはいい。
リーン で、この曲をカバーすることになった栄えある最初の歌手、それがKinki Kidsだそうで。デビュー曲「硝子の少年」はオリコンチャート初登場1位、そしてミリオンセラーを暗黙のうちに約束させられたとのことで、達郎さんはかなりのプレッシャーを感じながら作曲したとか。結果はみなさん御存知のとおり、大ヒットになりました。この曲からして中性的でムード歌謡といったメロウな響きがしますが、それを歌いこなしたKinkiのふたり、特に光一さんには「いのちの最後のひとしずく」は似合うでしょうね。
生まれて 出会えて
今 愛し合う
心のすき間をふさぐ口づけ
今夜はもうどこにも行かないで
あなただけを
あなただけを
感じたい
まさに女性が求めてやまない素直な愛情を達郎さんが歌う、実に摩訶不思議な歌世界であります。
人生はたった2秒で何もかも変わってしまう、1秒でもなく3秒でもなく2秒、と歌っているのがなんとも微妙な浮遊感を醸しだしている。そして切実に相手を求める。欲しくてたまらない。そばにいてほしい。
……
そして、次の曲で、山下達郎が同胞のために切実な祈りを叫ぶのです。メロウな曲のあとに痛切な叫びが朝に響きわたります。個人的な愛の結びつきの後にそれは悲しく高らかに響きます。