<原発短信> 東海第二原発の拡散シミュレーションは意図的に30キロに収めたもの | 脱原発の日のブログ

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12月8日は1995年、もんじゅが事故を起こして止まった日。この時、核燃料サイクルと全ての原発を白紙から見直すべきだった。そんな想いでつながる市民の情報共有ブログです。内部被ばくを最低限に抑え原発のない未来をつくろう。(脱原発の日実行委員会 Since 2010年10月)

みなさまへ(転載歓迎)

東海第二原発の放射能拡散シミュレーションが公開されました
県のホームページにあります
https://www.pref.ibaraki.jp/bousaikiki/genshi/kikaku/kakusansimulation.html

報道にもありますが、これは県が原電に要請したもので、①事故対策設備が一部機能した場合と②ほぼすべてが機能しない場合の2通りを想定し、いくつかの気象条件を設定して24時間後の放射性物質の拡散範囲を分析した結果、避難者が最大となったのは②のケースで最大17万人(避難対象人口92万人)、①のケースでは5キロ圏を除いて避難が必要となる地域は発生しなかったという結果になっています。

拡散シミュレーションは、昨年6月に、茨城県が避難計画の実効性を確認する目的で原電に依頼、昨年12月には原電から県に提出され県は14自治体に説明していましたが、公開について意見が合わず、1年近くたってようやく公開されたものです。市民側からはすぐに公開して一般に検証を受けるよう要請していました。

公開されたばかりですが、ざっと見ただけでも問題ありありです。

県は昨年6月に原電に要請した段階で、「実効性のある避難計画」の策定について、という文書を出し、その中で拡散シミュレーションについて以下のように説明していました。

〇最悪の事態も念頭に災害を想定のうえ、事故の進展や放射性物質放出後の拡散等に関するシミュレーションを実施し、避難計画の実効性を検証する。
(検証の観点)
・放射性物質の放出までに避難ができるか
・安全・安心に屋内退避を継続できるか(被ばくの軽減効果、ライフラインの確保等)
・バスや福祉車両が確保できるか など

この時期、県民投票条例案に対する大井川県知事の意見書にも同様の記載がありました。

一番の問題は、このときの説明に反して「最悪の事態」が想定されていないことです。昨年6月の時期に県と交渉を行う機会があったので「最悪の事態」についても聞きました。例えば福島第一原発事故に相当する事態であると回答がありました。

ところが今回の想定は
〇事故想定が、大口径破断事故とあるだけで、具体的にソースターム(放出される放射能の種類と量)がどこにも書いてありません
〇放射能の放出は24時間で止めています。何日にもわたって各方面に放射能が届いた福島第一原発事故の様相とは異なります
〇②の安全装置がほぼすべて機能しないケースについても、よくみると一部、可搬式のポンプ車を機能させています

よくみると②のケースのタイトルは「シミュレーションⅡ 30キロ付近の距離まで避難・一時移転となる区域が生じるよう、事故や気象条件を想定」となっています。正直に書いています。

すなわち、約束の「最悪の事態」ではなく、避難基準となる線量がちょうど30キロに届くように想定しただけのものなのです。朝日新聞によるとそのことも県は認めています。

--県は試算について、国への提出が義務付けられている30キロ圏内の住民らの避難計画をつくるためのもので、「最悪の想定ではない」との立場だ

では一体なんのためのシミュレーションなのか。同じく朝日新聞にある知事の一問一答によると知事は

--92万人が同時に避難する必要はない。最大17万人が避難するということなので、それに対応できる避難計画を準備すれば実効性が担保できたといえる
--避難に必要な車両の数や検問の体制など、広域避難について県が準備を進める過程で、各市町村に対しても必要な調整を行う

などと述べています。「最悪の事態」を想定するとの約束を破り、避難基準の放射能が30キロにちょうど届く想定で、避難の規模を小さくして、懸案のバスや福祉車両の確保などのハードルを下げることが目的に行われたとしか思えません。

阪上 武(原子力規制を監視する市民の会)