“疲労を知る”・“刺激を考える・与える” | 酒井根走遊会のページ

 

みなさんこんにちは。

 

酒井根走遊会です。

 

今回は“疲労を知る”・“刺激を考える・与える”というテーマでお送りします。

 

皆さんはワークアウトの次の日に疲れを感じていますか。シューズを履きたくない気持ちになることもあるのではないでしょうか。

 

コーチングを勉強したり、コーチから実際にコーチングを受けたりする中で“大きいストレスの日の後の小さいストレスの日の日数・回数”などを話し合っても私自身、“疲労を知る“ということがあまりよくわかっていませんでした。

 

少し私自身の経験を書きたいと思います。

 

疲労回復には猫の手も借りたい!?

 

トレーニングキャリアとサイクル

1、中学生 … 陸上競技は7月下旬から10月中旬の約3か月

・     主に6㎞~8㎞JOG+1000m もしくは 200m数本

・     週に1回休養日

#練習を毎日行い9月に3㎞のレースを2~3回、10月に駅伝1回という内容

#中学生の時期は、疲労は特に感じていなかったので毎日調子がいいと感じていた

#年間の継続したトレーニングは約3か月のみであったため毎日成長を実感できた

(冬シーズンの12月下旬から1月下旬までサッカーでのランニング中心のトレーニング)

 

2、高校生 … 年間を通しての長距離トレーニング

・     朝練習 10~12km(3‘45/㎞~3’00/㎞)午後練習 10㎞~12㎞(JOG)

・     土曜日はレースもしくは距離走(30㎞ 4’00/km)

・     週に1回休養日 (日曜日、 日曜日がレースの場合は月曜日)

#練習の方針

“疲労している時に大きいストレスのワークアウトを行って強くなる”

“故障カ所は筋力が弱いから故障するのであって、故障しても走り続けて筋力をつけて治す”

#高校生の時は、特に1年生・2年生時は常に疲労を感じながら練習をしていた

#週間というサイクルで見ると、月曜日から疲労を蓄積していって土曜日の30㎞で限界を迎えて日曜日に回復するというサイクル

#2年生の終わりごろから3年生になるとチーム練習に対してかなり余裕が持てるようになっていた

#2年生の終わりは“距離”にこだわり月間1000㎞を目標にたくさん走ることを目的として、日曜日など休養日も走っていた

#3年生の頃は自分の体調に応じて練習での出力を変えていたことでおおよそのレースパフォーマンスがわかっていた(必ず休養日は休養)

 

3、大学生 … 年間を通しての長距離トレーニング

・     朝練習 12~15km(4’00/㎞)午後練習 朝と同じ・もしくはワークアウト 

・     日曜日はレースもしくは距離走

・     週に1回休養日 (月曜日)

#練習の方針

“ワークアウトを確実にこなして、間の日にはイージージョグでも疲労を取る”

“JOGの基本は速く(4‘00/㎞前後)”

“上級生になると月曜日もJOGをする”

“距離を稼ぐ”

#高校生の時に疲労したまま継続することで1年生の時に飛躍的に記録が向上したので、そのイメージのまま練習をしていた

#コンディションと呼ばれるレース前の1週間の調整期間でまとまった疲労を抜くという流れを大きな流れで繰り返していく

#ワークアウトでもワークアウトの間の日でも疲労感は常に感じている状態

 

4、社会人 … 毎日同じ練習・週末の試合

・     朝練習 40分JOG +1000m  夜練習 40分JOG (午後200m数本)

・     土曜日 レースもしくは3k(9‘00)+1k(2’40)

・     日曜日 レースもしくは休養

#社会人(日本で)になってからは、常に同じ練習を繰り返す流れで行っていた(通勤JOG+校庭で1000m)

#毎日の練習はストレス強度が小~中で週に1回休養日がある流れ

#練習の中で体が全く動かないような疲労を感じることはなかった

#疲労が全く蓄積されない練習にもかかわらず1500m~10000mで自己ベストを記録している

 

5、現在(34歳時) … 8日サイクル

ストレス強度

小-大-休-中-小-大-小-小

・     4日に1回ストレスの大きいトレーニングを行う

 →ワークアウト・ロングランなど

・     8日の中に1回中程度ストレスのトレーニング、休養が入る

・     小の日は軽いランニング(10㎞~15㎞程度)と動きづくり・ジムなど

#まず目標にする大会に向けて、必要な能力開発を設定する

#大ストレスの日・中ストレスの日に能力開発できる刺激を得られるよう準備する

#準備とは動きであり、ステップアップ

 

 

中学生・社会人

この時は“疲労が少ない”もしくは“疲労がない”状態で毎日の練習を継続していました。(おそらくもっと増やそうと思えばできた)しかしこの期間に大きく記録を伸ばしています。対照的に高校生・大学生の期間は、練習量は中学生・社会人の期間のほぼ倍(400㎞→800㎞)の練習量であったにもかかわらず、競技力自体はほぼ横ばいでした。

長期的に疲労が少ない場合というのは、“疲労を感じやすい”状態になっていることがトレーニングを継続するうえで有利に働きます。また、少し疲れているだけでも、走りが変わることに敏感になっています。そのため『今日は負荷を上げない方がいい』という判断が即断できます。

レースで負荷の高い日はあらかじめわかっているので、その日に得られる体への刺激、その日のために必要な刺激を“疲労しすぎない範囲”で継続して行っていたことが自己ベストへとつながっていったと考えられます。

(日本はレースが多かったこと、自身の選択するレースの距離がうまく次のレースに繋がったこと、これらによってレースを“必要な刺激“であり”大ストレスの練習“としてうまく利用できていた。)

 

トレーニングサイクル

大ストレスの日

大ストレスの日はフレッシュな状態で臨むことが重要で、良いパフォーマンスを発揮できるように準備する必要があります。

自分の狙った能力開発の刺激を入れることが重要なので、疲れていてゾーンに到達できない、もしくは維持できない場合は日を改めた方が良いと考えられます。

 

長距離種目においてレースの日はそのほとんどが”大ストレスの日”といえる。”小ストレスには小リカバリー”・”大ストレスには大リカバリー”が必要であることを理解する必要がある。特に距離が延びればその分ストレスも大きくなる。全力で挑むマラソンのレースは特大ストレスといえる。

 

大ストレス以外の日

大ストレスの後は必ず疲労が出るので、ストレスの小さなトレーニングもしくは休養を取ることが推奨されます。

次の大ストレスまでに疲労を取るための数日間(1日~3日程)の軽い練習の日があります。この中では、練習量を増やすのではなく

①     大ストレスで得た刺激を体に適応させる

②     次の大ストレスに必要な動きを作る

③     維持が必要な能力に刺激を与える

④     長期的な計画の中で必要な能力を刺激する

などを行って無理のない範囲で練習するようにします。

 

8~10日サイクル

多くの選手が月曜日から日曜日の“1週間”サイクルで練習を行っていることと思います。チーム練習や生活週間から水曜日と土曜日にワークアウト、日曜日にロングラン、月曜日に休養、といったように一週間の曜日の中で重要になってくる練習を設定しやすいため、多くの選手が採用している方法です。

この場合水曜日と土曜日のワークアウト間・2日間のリカバリーで体が適応しなかったり、土日で疲れすぎてしまったりする失敗も潜んでいます。

曜日を気にせずに大ストレスと大ストレスの間を何日間取るか、どの程度の刺激を与えるかということを考えてトレーニング計画を構築していくと1週間というサイクルがうまく働かなくなってくることもあり、実際に1週間よりも大きなサイクルを作った方が疲労を気にせずにいい動きとステップアップで練習段階を引き上げてくることができることもあります。

出典元:『IAAF Introduction to coaching』より

 

疲労を知る

今回のテーマ“疲労を知る”・“刺激を考える・与える”は、このサイクルという考え方からも見ることができます。

“疲労をしたからいい練習だった”・“疲労をしたから効果があった”

という考え方は少し間違った考え方といえます。

日々の練習で大切なことは、

“体に必要な刺激を与える”

ことです。これは体力的(有酸素や無酸素など)なことから技術的(フォーム・バランスなど)なことまですべての練習に対して言えることです。『今日の練習の目的はなんですか?』と聞かれて回答はこの“刺激”を指しています。

それが結果的に、時に“大きなストレス”となったり、“体を疲れさせた”となったりします。

 

陸上競技の中長距離は技術よりも体力に重点が行きがちです。そのため“疲労”と“いいトレーニング”はほぼ同じように捉えられてしまいます。しかし“スポーツ全般”を見渡した時に、レベルアップのために最も必要なことは“必要な刺激”を適切に積み重ねていくことです。

球技であれば“ボールの扱い方・テクニック”、格闘技であれば“間合いや体位”など体力的ではない技術や経験なども必要な練習・必要な刺激といえます。

つまり“必要な刺激“は疲労を伴う場合もあれば、伴わない場合もありさらに、大きい負荷になることもあれば、小さな負荷になることもあります。

トレーニングサイクルの中で“大ストレス“の日だけを週に2回行って後は休養日でも記録は向上させていくことは可能だと思います。そこへさらに、”中ストレス“・”小ストレス“といった日を組み合わせることによって、”大ストレス“の日には得られない違った刺激を体に与えることができます。そうした様々な能力開発が組み合わさり、次のレベルへのステップアップへ、一つの大きな結果へつながります。

 

“疲労を知る”・“刺激を考える・与える”

トレーニングで得られる“刺激”と“疲労”は繋げて考えずに、ランニングのトレーニングにおける“大きなストレス”の日には“疲労”があるが、この度合いを考えながら常に“適切な刺激”を与えていくサイクルをつくり自らが目標に向けてレベルアップしていくサイクルを構築することが重要です。

“疲労を知ること”

“必要な刺激を考え、実際に与えること”

これらが上手にトレーニング計画上、コーチ・選手相互理解の中に描かれてはじめて計画的であり戦略的なトレーニングが可能になります。



取り組むことは至ってシンプル。海外選手のトレーニングでも特別なこと、魔法の練習は存在しない。自分に必要なことと疲労をよく知り、判断できる分析力が優れた競技力に繋がっている。


もっともシンプルに考えると、目標とするレースに向けてその日に“必要な刺激“と”疲労“が常にわかっていれば、目標は達成されると考えられます。(セルフコーチングで伸びていく選手はこのコントロールが非常に優れているといえる。)

それを具現化・可視化したものがトレーニング計画といえるでしょう。選手とコーチはその可視化された図の中で、実際に起こったことを相談し・調整しながら大きな目標に挑んでいきます。