朝、窓を開けるとすべてが霧に包まれていた。ああ、電車が遅れるんだろうなと、娘や孫娘1を思う。

 

こんなに霧が深い時、必ず思い出す。高校一年のこと。

 

その日は家庭科の授業でケーキを作ることになっていた。当時のわが校は発展途上で、家庭科室の設備は十分ではなく、紅茶用のカップアンドソーサーを各班で用意することになっていた。

ちょうど我が家には、少し前にお返しか何かでいただいたきれいなラベンダー色のカップアンドソーサーのセットがあった。

見栄っ張りでもなかったが、私はそれを持っていきたくて手を挙げた。

 

それはいいが、当日は驚くような濃霧、電車は遅れた。遅れてきた電車は激込みだった。だいたい普段から混雑の悪名高いJRの環状線だった。

押し合いへし合いの電車、鞄に詰めた食器は割れたかもしれない。不安のまま、大幅な遅刻で登校した。同じ班の人たちは私が来ないので、心配したようだ。家族も新しい食器が割れたのではと心配した。学校へ持っていくことに、もったいないと母や姉が反対していたのだから。

結果、家庭科の授業には間に合い、食器も無事であった。

 

あの当時、大阪環状線は毎日激込みで、冬の着ぶくれの季節は窓ガラスが割れることもあった。そんな中をよく通ったなあと、若き日の自分を少し褒めてみようかと思う。