わたしの父は、国家公務員だった。
子供のころ、年に何度か出張があり、そのたびに、姉とわたしにお土産を買ってきてくれた。
東京に出張の時には、銀座の鳩居堂で和紙で作られた栞などを買ってくれて、
そのころは鳩居堂はおそらく銀座にしかなかっただろうから、わたしは友達にも自慢だったものだ。
女の子だから、今は使わなくても、いずれは役に立つ。
緑のめのうは大学生のころブラウスの襟元に
よくつけた憶えがある。
赤いめのうは使った記憶がない。
でも、ウールのコートの襟元に合うかも、と、
今日しみじみ眺めて、次の秋が楽しみになってきた。
忘れないように手帳の11月のページに記入しよう。
「ベージュのアルパカのコートに赤いめのう」 と。



