――場内、ざわ…
「本日の演目は『阿闍世、ただいま
反省中』でござい」
第一幕:推し活は“名号”一択
お釈迦さま、韋提希に向かってスッと言う。
「この言葉をたもて=
無量寿仏の名をたもちなさい」
推し活みたいに“名前を抱え続ける”——ここが入口。
頻婆娑羅(父上)は幽閉中でも
目連・富楼那から八戒を受け、
聞法をつづけて穏やかな最期。
ブレない父、推しはぶれない。
第二幕:ママの一言が刺さる
阿闍世、母を解放。
ママ(韋提希)が窓越しに見たのは——
泣く我が子の指の膿を、
口で吸い出す阿闍世。
「あんたも昔、同じことを
父上にしてもろたんやで」
ズドン。
ここで“父の慈悲”が心にド直球。
「父上を救え!」
と走らせた家来が帰るなり——
「おそかった…」
ここで阿闍世、罪悪感バースト→
原因不明の業病発症。
第三幕:主治医は“耆婆”、処方は“仏”
名医・耆婆曰く
「これは内科でも外科でもない、業病。
主治医はお釈迦さま」。
でも阿闍世、
かつて仏敵ムーブしてたから行けない。
そこで夜半、どこからか声。
「早う仏のもとへ行け」
父・頻婆娑羅の声でござんす。
親ってのは最後まで親。
第四幕:月愛三昧の“ただいま”
象に乗って祇園精舎へ。
門の影、ふんわり光。耆婆が囁く。
「太子、お釈迦さまがお迎えです」
阿闍世、象から転げ落ち、
にじり寄る。
「来てくれたか。待っていたぞ」
これが月愛三昧。
満月みたいな慈悲の光で、
しぼんだ蓮がまた開く。
阿闍世、土下座の大懺悔。
「懺悔滅罪の徳」と微笑む仏。
白毫の光がサッと照らすと、
瘡蓋スッキリ、
心も体もオールクリア。
「今後は外護の王になります!」
——闇属性ボーイ、
推し変して覚醒。
幕間トーク:悪役、ありがとう
親鸞聖人は言う。
- 『観経』『涅槃経』の提婆・韋提希・阿闍世は、ただの悪役じゃない。大権の聖者、還相の菩薩。
- 彼らがいなければ、凡夫往生の道は照らされない。
- 第十八願の「唯除五逆・誹謗正法」は“切り捨て”ではなく、罪の重さを知らせるための掲示。
だからこそ、十方一切が名号で往生す、と親鸞は受け取る。
本願は醍醐の妙薬――苦いけど、一切の病に効くやつ。
最終幕:王舎城はあなたの胸の内
阿闍世の震え、韋提希の嘆き、提婆の欲。
「いやいや、うちにはおりません」って?
いいえ、胸の内の王舎城に全員おる。
だからこそ、出口は同じ。
光明=外縁が背中を押し、
名号=内因がタネになる。
因と縁がカチッと噛み合ったら、
南無阿弥陀仏。
持ち合わせのまんまで、
ただ今ここから。
――お後がよろしいようで。