こちらは、2002年3月11日に行なわれた、オランピア劇場公演からの映像です。

 

ステージ出演が「極端に少ない」とも言えるクリストフ(1945-)は、何と「1974年11月以来」というオランピア劇場でのライヴであり、「カムバック公演」と、「大きな話題」を集めました。

 

この作品、「les mots bleus "青い言葉"」(1974)は、まさしく、その「前回公演」の頃に発表された曲であると言うことが出来ます。

 

そのオランピア劇場公演の「直前」(2002年3月9日)には、「テレビ」にも出演してこの曲を歌い、変わらぬ「ハイトーン」の声と歌を披露して、一同を驚かせました。

 

出演者の中には、その翌年に、同じく「オランピア劇場」での公演を行なった、マルク・ラヴォワーヌ(1962-)の姿も見ることが出来ます。

 

こちらは、発表から2年後のテレビ出演の模様で(「音声」は、「オリジナル録音」のレコード?)、1976年9月23日放送のものだということです。

「冬が似合う名曲」、今回は、この方で行ってみたいと思います。

 

 

今回紹介する作品は、その独特の「ハイトーン」を誇るベテラン歌手、クリストフ(1945-)を代表する1曲、「les mots bleus "青い言葉"」(1974)です。

 

 

クリストフは、本名をダニエル・べヴィラックァと言い、1945年10月13日(「誕生日」が私と同じ!)、フランスの「首都圏」、エソンヌ県のジュヴィジィ=スュル=ロルジュ(「パリ・オルリー空港」の南約5km)に生まれました。

 

元々が「イタリア北部」からの移民の家系であり、1891年、曾祖父がこの地で、「同郷人」たちとともに、「暖炉の取り付け修理工」を始めたのが、「べヴィラックァ家」としての「始まり」だと言います。

 

「父の代」になり、「セントラル・ヒーティング(集中暖房)」の工事を請け負う「企業」にまで「発展」したということですが、これに対して母親は、いわゆる「仕立て屋(お針子)」の仕事をしていたそうです。

 

「8歳」の頃、クリストフは、エディット・ピアフ(1915-63)や、ジルベール・ベコー(1927-2001)に憧れたと言いますが、次いで「ブルース」にも「ハマった」ようで、幼くして、「アメリカンドリーム」を夢みたようでもあります。映画館へも足しげく通い、その「場面」を、「詳しく再現」してみせるほどだったと言います。

 

1950年代の終わりには、やはり、エルヴィス・プレスリー(1935-77)や、ジェームズ・ディーン(1931-55)に憧れ、そのプレスリーが所属したことで「伝説のレコード会社」とも言える、アメリカ「サン(Sun)・レコード」を「崇拝」していたということですが、同時に、ジョルジュ・ブラッサンス(1921-81)の影響を「強く」受けていたことも、よく知られています。

 

「来たるチャンス」に向け、ギターやハーモニカを学んだクリストフは、1961年、「ダニー・ベイビー&フーリガン」(「ダニー」は、本名の「ダニエル」から)というアマチュア・バンドを結成し、ギターを片手に、「yaourt(元の意味は「ヨーグルト」のこと)」という、「英語に似せた歌」をよく歌っていたということです。

 

 

「兵役」の後、クリストフは、さっそく「シングルデビュー」を果たしましたが、それは「失敗」だったということです。

 

こちらがそのデビュー・シングル、「reviens Sophie "戻って来て、ソフィ"」(1963-64)ですが、みなさんはどう思われますか?

 

 

最初の「成功」となったのは、翌年発表のこの曲です。

 

「Aline "アリーヌ"」(1965)。

 

フランスの他、スペイン、ベルギー、イスラエル、トルコ、ブラジルでも「No.1ヒット」となり、「ミリオン」を突破したということです(フランス国内だけでも、推計40万枚売れたと言われています)。

 

しかし、この作品は「盗作」だとして、この「2年前」に、「la romance "ロマンス"」(1963)という曲を発表していた、ジャッキー・ムゥリエール(1944-)により「提訴」されました。

 

この曲ですね。

確かによく似ています...。

 

クリストフは、最初の審議では敗れましたが、1970年代の終わりの「抗告」では「勝った」ということです...。

 

 

クリストフの「トレードマーク」とも言える、「口ひげ」と、ブロンドの「長髪」は、「1970年代」からのことであり、また、1971年に、フランシス・ドレフュス(1940-2010, 「ドレフュス事件(冤罪事件)」の、アルフレッド・ドレフュスの「ひ孫」)が設立した、「モーターズ・レコード」への移籍により、その活動は、いよいよ「本格化」しました。

 

フランシスは、クリストフに、当時「新進気鋭」のアーティストであった、ジャン=ミシェル・ジャール(1948-)を紹介し、そこから「快進撃」が始まりました。

 

 

その「第1作」、「les paradis perdus "失楽園"」(1973)。

 

こちらは、1976年1月3日のテレビ番組からの映像で、クリストフは、「男女」2種類の声色を使い分けて歌っていると見られます。

 

この映像では、「最後」の部分を、ミシェル・デルペッシュ(1946-2016)が歌っていますが、「他の動画の紹介」で隠されてしまっていますね。ちょっと「残念」です。

 

 

そして、その「翌年」(1974年)に発表された曲こそが、今回紹介している作品、「les mots bleus "青い言葉"」です。

 

ジャン=ミシェル・ジャールが「詞」を書き、クリストフは「曲」を書いています(前作、「les paradis perdus "失楽園"」も同様)。

 

「恋愛感情」をうまく表現することの出来ない「不器用な男」を見事に描き出しており、クリストフの書いた曲も「神秘性」にあふれ、いつ聴いても「名曲」だと思いますが、後の、2002年3月に行なわれたオランピア劇場公演(上掲動画)でも、「衰えることない」ハイトーン・ボイスを聴かせてくれたところが、またいっそうの「驚き」だと思います。

 

 

それでも、さすがに近年では、「朗唱風」にチェンジするようなところも見られます。

 

こちらは、2014年3月に公開された映像です。

ちょっと、後年のレオ・フェレ(1916-93)をも思わせますね。

 

何はともあれ、この曲の「大ヒット」もあったことで、1974年11月には、最初のオランピア劇場への出演を果たしましたが、その2日間の公演は、ともに「満員札止め」で、「当日券」が販売されることはもはや「なかった」ということです。

 

 

最後にこちらの曲を...。

 

 

1974年のアルバム、「les mots bleus "青い言葉"」は、その「タイトル曲」が「B面第1曲目」ですが、「A面第1曲目」はこの曲となります。

 

「le dernier des Bevilacqua "ベヴィラックァ家の末っ子(最後)"」。

 

「約9分」という「長い曲」ですが、曲の最後に、「les mots bleus "青い言葉"」の一節が「イタリア語」で歌われており、「アルバム」としての「構成感」も感じられます。

 

2002年のオランピア劇場公演でも、この曲に続けて「les mots bleus "青い言葉"」が歌われました。

 

以下に、「les mots bleus "青い言葉"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

それではまた...。

 

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les mots bleus  青い言葉

 

il est six heures au clocher de l'eglise

dans le square les fleurs poetisent

une fille va sortir de la mairie

comme chaque soir je l'attends

elle me sourit

il faudrait que je lui parle

a tout prix

 

教会の鐘が6時を告げる

広場では花が美しく咲き誇り

ひとりの娘が役場から出ようとしている

僕は毎晩のように彼女を待つ

彼女は私に微笑んでくれる

僕は何としても

彼女に話しかけなくては

 

je lui dirai les mots bleus

les mots qu'on dit avec les yeux

parler me semble ridicule

je m'elance et puis je recule

devant une phrase inutile

qui briserait l'instant fragile

d'une rencontre

d'une rencontre

 

僕は彼女に「青い言葉」を言うことだろう

僕たちが「眼」で言う言葉

「馬鹿げている」とも思うけれど

僕は突進して、また後ずさる

役に立たない文章の前に

壊れやすい瞬間は打ち砕かれることだろう

この出会いの

この出会いの

 

je lui dirai les mots bleus

ceux qui rendent les gens heureux

je l'appellerai sans la nommer

je suis peut-etre demode

le vent d'hiver souffle en avril

j'aime le silence immobile

d'une rencontre

d'une rencontre

 

僕は彼女に「青い言葉」を言うことだろう

人々を「幸せ」にするような言葉を

僕は、彼女の名を挙げることなく電話することだろう

僕はたぶん、「時代遅れ」なんだ

「4月」なのに、「冬の風」が吹きつけている

僕は、この「静けさ」が好きなんだ

この出会いの

この出会いの

 

il n'y a plus d'horloge, plus de clocher

dans le square les arbres sont couches

je reviens par le train de nuit

sur le quai je la vois

qui me sourit

il faudra bien qu'elle comprenne

a tout prix

 

ここにはもう、「時計台」もない、教会の鐘もない

広場の木々は眠っている

僕は「夜行列車」で帰る

駅のホームで

僕に微笑みかける彼女の姿を見る

彼女は何としても

理解するべきだろう

 

je lui dirai les mots bleus

les mots qu'on dit avec les yeux

toutes les excuses que l'on donne

sont comme les baisers que l'on vole

il reste une rancoeur subtile

qui gacherait l'instant fragile

de nos retrouvailles

de nos retrouvailles

 

僕は彼女に「青い言葉」を言うことだろう

僕たちが「眼」で言う言葉

すべての「言い訳」も

盗まれる「キス」のよう

壊れやすい瞬間を「台無し」にする

「微妙な恨み」がまだ残っている

この久しぶりの再会の

この久しぶりの再会の

 

je lui dirai les mots bleus

ceux qui rendent les gens heureux

une histoire d'amour sans paroles

n'a plus besoin du protocole

et tous les longs discours futiles

terniraient quelque peu le style

de nos retrouvailles

de nos retrouvailles

 

僕は彼女に「青い言葉」を言うことだろう

人々を「幸せ」にするような言葉を

もう、形ばかりの礼儀なんて必要としない

言葉のない「愛の物語」を

そして、そのいくらかの形(スタイル)を、色褪せたものにしてしまうような

取るに足らない、長いだけの演説もいらない

この久しぶりの再会の

この久しぶりの再会の

 

je lui dirai les mots bleus

les mots qu'on dit avec les yeux

je lui dirai tous les mots bleus

tous ceux qui rendent les gens heureux

tous les mots bleus

tous les mots bleus...

 

僕は彼女に「青い言葉」を言うことだろう

僕たちが「眼」で言う言葉

僕は彼女に、すべての「青い言葉」を言うことだろう

人々を「幸せ」にするような、すべての言葉を

すべての「青い言葉」を

すべての「青い言葉」を...

 

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(daniel-b=フランス専門)