身ばれを避けるために、

あった出来事の日時をずらして記述する。

この頃、自分の老化現象が加速していて少々慌てている。一気にシミが増えた。

一昨年のお遍路のせいかな。


自然の中、四国の日差しの中を何キロも歩いた。朝一度、化粧しただけでは汗で落ちている。


自分の風貌をやたら気にするのは、出来すぎ君が気になるからだ。

10歳以上年下の彼が気になって仕方ない。


バレンタインデーに、実は彼だけにお菓子をあげた。女性の先生にも同じお菓子を差し上げたがメンズは彼だけ。

料理が得意なT先生は、手作りチョコケーキをメンズ教員や学生にまで配っていたが、私はチョコレートを用意できず(冬鬱なので起きて職場にくるだけでヘロヘロ)、幸い、南関東の自宅に戻った帰りの買い置きお菓子があった。東京駅で乗り換える際、キヨスクでお菓子を2つ買っておいた。


出来すぎ君が私の研究室に資料の入った袋を取りに来た時に渡した。

出来すぎ君は、女性教員からも人気があるほうなので、すぐにピンときてくれるかと思ったが、袋の膨らみに気付き中を見て、きょとんとしていた。


「これ、バレンタインだから、ここ、男の人多いから、先生だけ」内緒にして欲しいとポーズすると、出来すぎ君は、いつもとかわりなく笑って、「あ、じゃあ、お祝いということですね」(彼は博士課程に合格していた)。


そういって、いつも通りさっそうと自分の研究室に戻って行った。その後も彼と私の距離は縮まらずだった。出来すぎ君は、ホワイトデー前後、長期の休みをとっていたが時々大学に顔を出していた。


ホワイトデーは期待したが、お返しはなく私はやさぐれた。

翌々日、休みのはずの出来すぎ君が、一番なついている女性教員の研究室から出てくるところを私を慕ってくれているI先生と一緒に目撃した。

I先生も出来すぎ君を気に入っている。

I先生の話では、出来すぎ君ともう1人のメンズ教員と年上女性教員二人と比較的若く綺麗な女性教員1名でホワイトデーに飲み会をしたらしい。I先生が悔しそうに話していた。

私は平静を装いながらも、心の中は雨が降っていて、帰宅後さらにやさぐれた。


翌日は地震があり寝るのが遅くなった。

家族や友人からたくさんのラインが届いた。

翌々のランチの時に、食堂に向かおうとすると出来すぎ君が歩いてきた。私は、地震後の校内点検のメール報告についてお礼を言った。


すると、「今、お時間ありますか?」

→「あ、お昼行きます」

「この間のお返しをお持ちしていいですか?」

→「あ、はい」

出来すぎ君は、そういうと小走りで部屋に戻り、小さな袋を持ってきた。

廊下には数人の教員がいたので、私の研究室に招きいれた。

「これ、ホワイトデーのお返しです、こんなものって思われるかも知れないですけど」。

「こんなものなの?」

私が突っ込むと笑っていた。

私に小さな袋を渡すと、出来すぎ君は、さっさと出ていった。


その後、私の心が踊ったのは言うまでもない(ちなみにお返しは300円くらいのキャンディと小さな入浴剤が1つ入っていた)。


高校生で彼氏が出来てから、家人と結婚迄、付き合った男性達から、高級ブランドのアクセサリーの数々、コートやバッグや靴をいただいてきた。


若い頃の私は、言い寄ってくる男性や付き合った彼氏を本気で好きになれずにいた。


今、こんなに年が離れた彼に夢中になれたのは、若い頃の自分ができなかったことを追体験するような気持ちになれるからだと思う。