男性はサングラスを外し、自己紹介をしてくれた
「Aクラブの後藤と言います」
そこのクラブは県内では他のクラブとは一線を画す印象で
規模的には小さく
だが、少数精鋭と認知されているテニスクラブ
入りたいと希望したが断られたという話も小耳に挟んだことがある
後藤さんと名乗るその男性はそこのヘッドコーチだと言った
そして雄大のことを知っているようだった
色々聞かれたが私に答えられることはほとんどなく
答えられたのはたった二つ
『ご両親のどちらかでもテニスのご経験があるのですか』
『小林君の将来的な目標は何ですか』
これだけだった
何も知らない自分が情けないと感じる
夫婦ともテニスの経験はない
雄大の将来的な目標はプロになること
すると、後藤コーチは言った
「息子さんを僕に預けてみませんか」