“コーダ” この単語を知ったのは、紀伊国屋書店でもらったscriptaに掲載されている五十嵐大「コーダを生きる」を読んだ時だった。

ろう者の親から生まれた、聞こえる子供のこと。

だからこの映画が気になって観たかった。

ろう者の両親と兄の通訳をし続けている主人公ルビー。

でもこの映画は予想外に楽しかった。

高速手話&身振り手振りで下ネタ乱発。

ラブラブ両親とお年頃の兄。

ユーモアありすぎて、客席からも笑い声がするくらい、笑いのタイミングが抜群で。

一家で漁をして暮らすも笑いが絶えない。

音は聞こえなくても健康で、よく笑い、よく食べて、よく働く一家。

もうっ!お母さんたら!とか、お父さんのバカッ!みたいな、どこの家でもある日常生活の風景。

ルビーが常に通訳をかってでているが故に学校生活よりも何よりも家を優先しなければいけない状況だけど。

それでも楽しかった。

面白かった。

歌の練習をし始めたルビーが紆余曲折ありながらも前進していく姿がたまらなく素敵だった。

自分の人生を優先することで家族を助けられない、でもそれは見捨てるということではなくて、ルビーが犠牲になることではなくて。

ケンカしたって家族の愛情は途切れるこてはなくて。

音楽の先生、ヴィ先生がものっそいいいキャラしていて時に厳しく、時に優しく。

導いてくれる人がいて良かったなあと。

圧巻はフェスティバルでの歌唱シーン。

怖かった。

こんなにも怖い世界で生きているのかと思った。

音のない世界。

音は時には暴力にもなり、時には優しい力にもなる。

父親がルビーの歌を感じ取ろうとしてくれるその愛情に救われる思いがした。

終盤の歌唱シーンでは家族の愛につつまれてあたたかい気持ちになった。

見終わって思ったことは、歌の好きな女の子とその家族の物語なんだなって。

障害を持つ家族の話などと気負う必要はなく、楽しめる映画だった。

笑って、泣いて、いい映画観たなあって思った。

楽しい時間だった。