写真に撮られるのを妙に嫌がる人間がいる。
私だ。
 
「何故?」と聞かれても答えようがない。
「理由なんかない」と言うのは答えではないらしい。
 
これが「何故旅に出るの?」「どうして私のことを愛してくれるの?」と言う質問なら、キメの答えとしてとっくに認知されているのに「なんで写真イヤなの?」「何故洗濯物をカゴに入れないの?」「さっきからずっと私の足を踏んでいるのは何故?」といった問いの答えとするにはチト世間の風は冷たい。

「嫌だから」という答えも当然説得力が無く、かと言って「お祖父ちゃんの遺言で駄目なんだ」とか「魂が抜かれるから」と言っても信じてもらえない。

「ジョニーデップそっくりの私なのにそうは写っていないから」と言おうものなら「いや、誰が見ても君そのものが写ってるよ」と嘘までつかれる始末。

面倒なので最近では「金ちゃんヌードルが関東では手に入りにくいから」とか「独我論ておかしくない?どう思う?」などとフザけると何故か「フザけるな」と言われる。
フザけているだけなのに。
 
自分に注目を向けられることが嫌いなのだと思うが「誰がお前の写真なんかに注目すんだよ!」という野卑な質問は受け付けない。
そーではないのだ。
 
上手くは言えないが、カメラの前に立つという事はそれだけでレンズの向こう側にいる無数の目に晒される可能性があり、それなりの覚悟が必要だと思うし、そんなものが残ってたまるかの気分なのである。

(それほど大袈裟なことじゃないだろうと言う意見もあることは知っておる。)  
 
視覚的匿名性を持つところから、意見を言うのが好みなんだがな。
 
こういう感覚の持ち主はしかし割といて、母親もそうだったし、姉もそうだ。
だから写真が少ないことこの上なし。
家系遺伝なのだろうか。
いやそんなことはない。
友人達にも多いし。

みんな中年(人によっては老年)だからか。
確かに若い友人達は平気なようだ。
イヤイヤ、私を含め友人達も皆若い頃から苦手だったぞ。