(今度は、なんだ?)
ショータもユウジも黙り込んで、顔をこわばらせる。
ピキッ ピキッ ピキッ ピキッ
岩がひび割れるような、音がする。
(どこから聞こえるんだ?)
ショータとユウジは、グルンとあたりを見回す。
フワ~ッとわずかに、風を感じる。
そうして黒い煙のようなものが、風に乗って、洞窟内に流れ込んできた。
何だか…怪しい空気を感じる。
「気をつけろ」
押し殺した声で、ナイトがもう一度言うと、あっという間に、辺りを
黒いものでいっぱいになる。
「ケムリ?火事?」
「いいから」
しぃっ!
おとなしくしろ…と、ナイトは二人の頭を下に押し付ける。
何が何だかわからないまに、ただ息をひそめて見ていると…
黒い煙が、次第に形を作り始めた。
一体、二体、三体…
次から次へと、黒い物体がボコボコと現れる。
ナイトは杖を振りかざすと、風をおこして、その煙を崩そうと
試みる。
ビュービューと、ナイトの頭上で、激しい風が巻きあがる。
一体がかき消え、
二体が消滅し…
そうして黒い煙が消えた。
「やった!」
ユウジが立ち上がろうとする。
「いや、まだだ」
ナイトは険しい表情をして、辺りを見回す。
「えっ」
黒い煙が消えたか…と思いきや、その霧がコールタールの
ような粘っこい液体に変わり、ジワジワと床にしたたり落ちた。