その目の前にそびえる大きな木の幹に、ジュンペイが抱きつくと
「すごい、大きいなぁ~ブランコでも作れそう!」
頬を赤く紅潮させて、興奮気味に言う。
そこにロープでもあれば、すぐにでも結び付けたら遊べそうだ。
あまりにもずっと抱きついているので
「おいおい!あんまり触るなよ」
さすがにオジサンが声をかける。
急にさえぎられたので、ジュンペイは不満そうに口をとがらせると
「え~っ、なんでぇ?」
甲高い声で叫んだ。
今にも木登りをしたそうに、モゾモゾしていたけれど、裕太とオジサンの顔を見て、
ジュンペイはしぶしぶ、ぶら下がって遊ぶのをあきらめた。
「だって、落っこちたら危ないだろ?
この辺りはまだ…岩がゴロゴロとしているんだから!」
暗に、この木の枝が折れたら、どうするつもりなんだ、と責めているような
感じになった。
ピョンと木から離れると、ジュンペイはまだ、名残惜しそうに、ポンポンと
木の幹をたたく。
「そんなに簡単には、折れたりしないと思うよぉ」
つまらなさそうに、ジュンペイがポツリと言う。
「いや、それもあるけど…
枝にぶら下がって、万が一落っこちたら、危ないから」
少し険しい顔をして、オジサンがキッパリとした口調で言う。
そうかぁ~とジュンペイはまだ、不満そうにつぶやくと
「ねぇ、ここを真っすぐ行けばいいの?」
戸惑った顔をして、聞いた。
(この木、倒れたりしないかなぁ~)
裕太はこわごわと、その大きな木を見上げる。
(よく、こんな所に生えているなぁ~抜けたりしないのかなぁ)
さすがに、ジュンペイのように、無邪気にぶら下がる勇気はない。
その代わり、その大きな木の幹に、そぅっと手を触れた。

