あわててエラが駆け寄って行くと、

「おそい!」

ねずみの御者が、キーキー声を上げて、文句を言う。

エラはまだ、息を弾ませながら、

「ごめんなさい」と言うと、

「あら、ガラスの靴は?」

目ざとくトカゲが気が付いた。

エラはようやく、自分の足元を見ると…いつの間にか左足がはだしになっていた。

一生懸命だったので、そんな余裕がなかったのだ。

「えっ」と言うと、そういえば…ボールルームを走り抜け、階段を駆け降りる時に、

靴が階段のじゅうたんに取られて、脱げたことを思い出していた。

なにしろあの靴は、ガラスで出来ているので、ツルツルすべるし、固いし

脱げやすいのだ…

 

「さっさと切り上げてくれば、よかったのに…」

みんなが一斉に責めるけれど、その間も、時の鐘が鳴り響いている。

(一体、何回鳴るのかしら?)

チラリとそう思うけれども、こうしている場合じゃない!

「それよりも!」

エラはあわてたように言う

「早く出発しましょ!」

おう、そうだった!

ネズミとトカゲの御者が、あわてて所定の位置におさまると、馬車はガタンと大きく揺れて、

急ピッチに走り出した。

エラだけではなく…ネズミもトカゲもネコもカエルもみんな…

動物が魔法で変身しているのだ。

早くしないと、魔法がとけて、とけたらすべてが水の泡。

それに、もしかしたら王子の追手が、近くまで迫って来るやもしれないのだ。

気持ちははやるけれども、それでもエラは遠ざかって行く、お城の方を振り返ると、

「だけど…とっても素敵な舞踏会だったわ」

うっとりとしたように、ポツリと言った。

 

 そんな風に、しみじみと噛みしめている間も、鐘は鳴り響く…

馬車はきしみながら、全速力でひた走る。

御者の台が、

馬車の窓枠が、

車輪のフレームが…ボロボロと外れ始め、そのたびごとに、大きく揺れる。

最後の鐘が鳴り響いている間…ガタゴトと揺さぶられ、窓から投げ出されないように、

エラは手に汗握り締めながら、

「神様、お願い!

 どうか間に合わせて!

 せめて…あの人には、見つかりませんように!」

必死に願うのだ…

 だが突然、ガタン!と大きな音がして、メリメリ…と何かが割れるような音がした。

ドサンと車輪が木の根っこに引っかかると、大きくバウンドして、跳ね飛ばされる。

その瞬間、かぼちゃに大きな亀裂がはしり、その反動で、エラは思い切り馬車から

振り飛ばされたのだった…

 


 

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