「ほかにも、預かるものは?」

女主人の方を見ると、思ったよりも落ち着いた様子で、

「あ、他にもありますが・・・まずは、この大きな時計ですね」

と言うと、善行はキュッと唇を引き結びました。

「どうにかなるかなぁ」

先ほどから、この時計の大きさを目で確かめているのです。

「あてはあるのか?」

他人事のように、よっちゃんはのん気な声で聴きます。

善行は首をグルリ・・・とよっちゃんの方に向けると、

「ゼンゼン!」と言って、頭を振りました。

よっちゃんは「えっ」という顔をすると、まったくもって善行頼み

だったので、開き直った善行をポカン・・・とした顔で、

見つめました。

「とにかく、これを」と言って、時計を見ると、

「車に乗せることだな!」

よっちゃんの顏を見て、反応を確かめます。

「ま、そうだな」

さして危機感のない顔をするので、善行は

(コイツ、わけわかってないな!)

と、心の中で、思います。

ひとまず、商店街に1つだけ残った、時計屋に、持って行こう・・・

と、考えています。

 

「お願いします」

その時、背後から声がしました。

見ると、車いすから、善行の方を見上げています。

せっかくの立派な時計・・・このまま無用の長物にするのが、

もったいない、と善行は思います。

どうせ預かるのなら、ベストな状態で・・・

もしくは、もう1度、時を刻むことが出来るなら、再び手元に

置いてもらえるかもしれないな・・・と善行は思います。

 

「直るようなら、また連絡します。

それでいいですね?」と善行が言うと、

「それは、もちろん」

女主人は、はりのある声で、返事をしました。

 

 

 

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