「それって、一体、なんなんですか?」

 せっかく善行が気を使って、黙っていたというのに、この男、

待ちきれずに聞いてしまいました。

これで、水の泡じゃないか・・・と、善行は思わず、よっちゃんを

にらみつけました。

「あら、言いませんでしたっけ?」

車椅子の女性は、笑いをこらえるような顔をします。

「これです」

ためらいもなく、車いすを動かして、その傍らに立ったのは、

やはりあの大きな柱時計でした。

この人たちは、私に対して、果たして何を期待しているのだろう・・・

善行は戸惑います。

「預かってもいいですが、私は時計屋ではないので・・・

直すことは、できませんよ。

時計屋に預けた方が、直してもらえるし、いいのではないですか?」

善行がそう言うと、困ったように顔を上げました。

ひたむきな瞳を善行に向けると、

「この時計は、古いものなので・・・部品とか、もう手に入らない

かもしれません」と寂しそうに言います。

「なら、こちらで直るようなら・・・直してもいいですか?」と聞くと

「もちろん」

大きくうなづきます。

「昔はね、ちゃんと時を刻んでいたんですよ。

でもそれを見る人が、1人ずついなくなり、

後は自分、と思っていたけれど、そんなに時間は

なさそうね・・・」

おばあさんは、少し寂しそうに言いました。

すると俄然、闘志が湧き上がってくる、善行なのです。

 

 

 

 

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