「おいくらかな?」

 じいちゃんは、青年に向き直り、にこやかに聞いた。

裕太はあわてて、じいちゃんの前に立ちすくみ、

「いいよ!母さんに怒られちゃう!」

泣きそうな顔で言うと、じいちゃんは裕太の目の高さに腰をかがめ、

「大丈夫だって・・・ワシに払わせてくれ」

そう言うと、裕太の耳元で、こそっとささやいた。

「実はな、昨日年金が出たから、少し懐が暖かいんだ」

まるで、いたずらっ子のような顔で。

「そうなの?」

聞き返す裕太に、じいちゃんは大きくうなづいた。

 

 2人が話し込んでいる間、男は念入りに、高さを調節したり、

タイヤを点検したり、空気を入れたり、ブレーキの聞き具合を

チェックしたりして、たんねんに、自転車を仕上げた。

「ほら、これが君のものだよ」

そう言って・・裕太の前に置いた・・・

「ありがとう」

裕太は目の前の自転車を見つめる。

「ありがとう」

裕太は、男の人とじいちゃんとを、かわるがわる見ている・・・

「自転車ないと、不便だもんな。

遊びにも、行けないだろ?」

男の人がそう言うと・・・

「そうそう」

じいちゃんは、自転車屋さんの顏を見る。

「お宅さ・・・しょっちゅういなくなるけど、1体、何してるんだい?」

遠くで、電話が鳴っている・・・

 

 

 

 

 

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