裕太はもちろん、ちゃんとわかっていた。

じいちゃんは年金暮らしなので、いくら一緒に暮らしているとはいえ、

オネダリしたらいけないってことは。

じいちゃん自身、金がない・・・と言ってたし、普段たしなむタバコでさえ、

母さんに言われて、買うのを辞めていたから・・・

「健康のためだ。裕太が大人になるまで、長生きしないといけないしな」

と笑っていたけれど、それだけじゃない、というのは、裕太もなんとなく

分かってはいた。

そんなじいちゃんに、ましてや、自転車なんて、そうやすやすとは買ってはもらえない・・・

冷静になって、気付いた時、「あっ!」と声を上げて、

裕太は自転車から、飛び降りた。

 

「どうだい、いいだろ?」

裕太の逡巡など気付かずに、ニコニコしながら、自転車屋のお兄さんは、声をかけて来る。

裕太から、自転車を受け取ると、その反応を待ち構えていた。

「いいです、すごく」

そう言いながらも、裕太は少し、浮かない顏になる・・・

「どうした?気に入らないのか?」

裕太の表情に気付いて、じいちゃんが心配そうに、近付いて来た。

裕太の目が、少し潤んで、うつむいて頭を振る。

「いいんだ。やっぱり、母さんに買ってもらうから」

少しぶっきらぼうに、言う裕太。

「綾女さんにかい?」

じいちゃんは、驚いた顔になる。

母さんの性格を知ってるから、その顔は「ムリだ」と言ってるようだった。

「いいよ、じいちゃんが買ってあげる」

そう言うと、

「子供は遠慮するもんじゃない」と言って、ズボンの後ろポケットから、

サイフを出した。

 

 

 

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