「どうして、そんなに、この人形にこだわるのですか?」
男は、善行の顔をじぃっと見つめました。
視線と視線が交錯して、その光に、真実を見た時・・・善行はうなづくと、静かに
話し始めました。
「私は、この人形のことは、何も知らなかったのです。
ごく最近、ある年配の女性から、預かったのです。
それまで、会ったこともない女性でした・・・
そして、風変わりな頼み事をされたのです。
もしも、元の持ち主が現れたら、渡して欲しい・・・と」
そう言いながらも、善行はこの男から、目を離しませんでした。
善行の視線を受けるようにすると、ゆっくりと視線をずらし、
「それは、お気の毒に・・・」
と言うと、はぁ~とため息をつきました。
「お役にたてるかどうか・・・」
と、かすれた声で言うので、善行は食いつくように、
「それでもかまいません。何か、ささいなことでもいいから、教えてください」
と言うと・・・ふふっと男は鼻で笑い、
「大した話ではないですよ。
でも、久しぶりに、人形の写真を見たから・・・
つい、本物の顏が見たくなっただけですから・・・」
ふわっと微笑むので、それは、幸次郎の言っていた、仕掛けなのだな、と
悟りました。
チラリ・・・と幸次郎を振り向くと、黙ってうなづくので、善行は男にわからないよう
小さく、手で合図をすると、続けて会話を試みました。
にほんブログ村

人気ブログランキング



