ハルミくんはそれでも、少し後ずさりして、善行の影に隠れるようにして、

父親の顔色をうかがいました。

おそらくハルミくんは、日常的にも、こうしておびえた顔をして、

暮らしているのでしょう。

父親は、少しムッとした顔になり、

「なんだ?言いたいことがあるなら、この際言ってくれ」

と、ぶっきらぼうに、言いました。

すると、ハルミくんは、目をキョロキョロと、落ち着きなく動かし、

小声でポソッと、

「母さんの腕時計・・・あれ、ボクにくれるって、約束してたんだ・・・」

と言うと、うまく聞き取れなかったのか、父親は

「はぁ?」と、大きな声で聞き返し、

「おまえ、男だろ?女の腐ったような顔をすんな」

と、どなったので、よっちゃんはすかさず

「おこらないでぇ~はいっ、深呼吸~」

と、例の、のーんびりとした声を出しました。

父親は、話の腰を折られたので、ムスッとして、よっちゃんを見やると、

わずらわしそうな顔を、しました。

本来なら、怒り出しそうなものなのに、よっちゃんのヘラヘラした顔を見ると、

なぜだか腹をたてる気にならないようで・・・

今度は、少し冷めた声で、

「だから、」もう1度、聞こえるように、言ってくれ」

と、幾分引きつった顔で、笑いました。

善行は、少しハラハラしながら、見守っておりましたが、ここは親子の問題だから・・・

と、あえて口をはさむのを、ガマンしていました。

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