僕はまったく野球を観ません。

というか、皆がどういうきっかけで巨人ファンになったり、阪神ファンになったり、仙台育英とか、浦和学院とかを応援するんだろう、というのが、人には聞けぬまま長年の謎なのです。東京在住の僕の場合は、東京が本拠地の巨人、なんですかね。ただ僕が小学生の時分、原辰徳の野球ボードゲームで遊びながらも、巨人ファンってのはさすがに安直、という空気もあって、かと言って父親も特に贔屓にしてる球団がなかったですし、ご両親が広島出身の友達が応援してる広島カープを便乗して応援するのもトンチンカンな気がしましたし、関西の人がアンチ巨人の名の下に阪神を応援する、みたいな構図も特になく、はじめの一歩を踏み出せずに今日に至って居ます。

そういえば小さい頃に、単純に阪神の柄が好きで、今思えばそんな理由で父親にねだって阪神のキャップを買って貰ったことがあるのですが、途中で「あれ?これって、黒と黄色の色彩と、HTっていう柄が好きなだけか?ってか、野球のキャップってそんな理由で被るものじゃないのでは……」と一度冷静になってしまったら、子供心にも恥ずかしくなって、以後その帽子を被れなくなってしまいました。

そう、野球を応援するには、周りを見回しても明確な理由と責任を問われているような気がするんです。言うならば人生を掛けて、健やかなる日も病める日も、その球団と心中する覚悟はあるのか、くらいのレベルのことを。

そんな野球に関して考え過ぎの人生を送って来た僕ですが、昨日の長嶋監督と松井選手の国民栄誉賞セレモニーは、単純に感動してしまいました。長嶋監督、松井選手ともに38歳での引退。一般的に30代といえば、どんどん経験値が増えて人生が楽しくなってくる頃ですが、スポーツに関しては体力が反比例していきます。巨人軍やヤンキーズで華々しく活躍した後、最後はレイズとマイナー契約した松井選手。才能、努力、プライド、突きつけられる現実、葛藤、
諦め……通常ならば一生を掛けて受け入れる栄枯盛衰の行程を、人の数倍ものスピードで、男盛りの38歳の時点で一度清算しなくちゃいけない宿命。野球選手の引退に向けられた拍手は、目の前で人生の縮図を見せてくれたヒーローに対する心からのそれ。

各選手たちがそんな重みを背負った野球というものをどうせ応援するならば、今日テレビで死ぬ程流れていたお2人の人生のドキュメンタリーみたいに、各選手の経歴を知ってからにしたい。野球に関して常に考え過ぎの僕が至った今日の考え過ぎな結論です。

その点、音楽って、曲単位で無責任に好き嫌いを言って良いもののような気がしていて、更には現役で還暦を超えた山下達郎さんや島健さんのような方々がいらして、中には85歳でステージをバリバリこなすトニー・ベネットなんていうのまで居て……歩みの遅い37歳の僕ですらまだまだ発展途上と思って良いのかな、という希望もあって……38歳で引退しなくてよくて……なんて自分向きなんだろう!!

そんな僕は、今週もひたすらレコーディングしてます。皆さんが考え過ぎずとも、無責任に、されど心から「好き」と言える1曲を目指して。


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