三連休の中日はお休みさせてもらって3日目。初日がイマイチな順位だっただけあり、優勝するにはこの辺で大きく浮上していないと追いつけなくなってしまう。そう思って2日目の夜に順位を見たら1位の背中がかなり遠い。そして3日目朝の対戦は対戦は地力で同じくらいのユースチーム。


Bad day続けて順位的に潜ったからにはもう少し与し易い相手がいいのだけど。



Rd7 8.66VP 25-30 +1



“知ってることを知らない”



やや負けなんだけど、裁定でこちらに20IMP動いたどうにも後味の悪いラウンド。僕は珍しくSouth。


#3



画像がみにくい。


オークションはSouthから。プリエンプトはしないでおいた。



P P 1H 2C

2H 3H P 3NT//



リードはH2。HK勝って、CA。続くクラブをPd、3巡目に勝ちDx。DK勝ってディクレアラーは手を広げ上から9個ありますとの言。


手を閉じて次のボードやってる最中でふと、(上から8個じゃない?)と気づき、ディレクターコール。


確かに上からはS1H1D1C5しかない。


ディクレアラー

「もう一個取るならスペードフィネスするしかないと思うんだけど」

「裏にSKいる時はスクイズに向かうかもしれないよ?」


ディレクターはその真偽には触れず、「言った通りならダウンするプレイはあるから、3NTは1ダウンですね」とサラッと終了。


でもう一つ。



#18




オークションはEastから



1C P 1D P

1NT P 2C P

P ?



強いが、適切なビッドはない。

パスしてH8をだす。ダミーが開かれダイヤ2枚であることに気が付いたPdがさらっと確認する。


「1Dってこういうのも言うんですね」

「言うよー」


でカーディングが終わった時に今度はPdがディレクターコール。


Pdは「D2枚で1Dと言われてそのアラートを受けられませんでした。受けられていれば2Dとダイレクトにビッドして3NTへたどり着いていたはずです」と主張。オポーネントは“双方が”、D2枚で1Dということもあると回答。


裁定は「じゃあ情報を開示しなかったのは良くないですね。NSの3NTメイクで」で終了。



ボード終わって。


左手

「いや僕は裁定に不満はないんですよ、ですがこれって全部アラートできるものなんですかね?」

「1mオープンに3=3=2=5の弱い手を持っていたら、システムによっては1Dって捌くしかないかもしれないじゃないですか。」


解説すると、1C-1NTが8-10点、1m-2mがInverted minor raiseを使ってる人たちは、3=3=3=4の5-7点の扱いに苦慮することになる。多くの日本ペアは1C-1NTのレンジを切り下げることなく、1Dが3枚のこともあるという、アグリーメントというか論理解というか、まぁよくわからないものを合意し、捌くことにしている。


3=3=2=5の6-7点を1Dで捌くのはこの延長線上にあってアグリーメントというより論理解に近い。ブリッジのビッドはかなり多くの部分が知らなくても考えれば分かることから構成されていて、その中には、知らないなら知らないで考えずとも特に問題ないことも含まれている。


左手の問題提起は、「考えてもない論理解を全てアラートするのは無理くないですか」と読み替えられるだろう。



テーブルで僕は、オポーネントがこちらのシステムを熟知する義務はないから、システム的にアンナチュラルになりうるものは開示する必要があるんじゃない?と言ったが、それは本質的な回答ではないと思う。


例えば



1H 1NT*;2C

*F1



の2Cってよくよく考えると2枚保証。

フラナリーオープンの用意がない限り4=5=2=2の13HCPのハンドではそう捌くしかないというのが理由。


だけど、そんなことアラートされなくても何のお咎めも受けないだろう。それどころか「指摘されて確かに2枚保証になると気づいた」即ち「知ってることを知らない」まである。実際2Cに、クラブ2枚かもしれないとアラートが出ているのは、1-2度しか見たことがない。


それと別に古い記憶も思い出した。


12年くらい前、当時オープンでやってI-Iペアがユースの講習会に講師として来て、「国際大会で1C-1Dが3枚の可能性があることをアラートしなかったら裁定されたから、実際はなんでもアラートした方がいい」と言っていた。今回は2枚だから捕まる可能性はより高い。



答えはない、裁定はディレクター任せ。+10IMP。



とはいえこれでテーブルは少しナーバスに。

もう一つ僕がクレームを聞き違えてディレクター呼んだりしてもうピリピリ。


終わってスコア合わせてたら、も一つの元ユースからN君の怒りの声が聞こえる。


「この10IMPなんすか?これは?…Daisukeさんていつもこんなブリッジやってるんですか!?」



ーーーーー



さて、ちょっとディールを検討してみよう。


#3

再掲




上から9個、の方はクレームとしてとても良くない。なにしろ上からは8個しかないからとても数え間違いっぽい。それは通常悪い方向へ裁定される。


ただ、Northが1=5=4=3か2=5=3=3のHAとDA持ちの時は、自然な手順で必ずメイクする。


ハートリードを手で勝ち、クラブ3回めにCQに負けて、ダイヤリターンをハンドのDKで勝ち、クラブ最後まで取った時のEastのハンドは


T x Qxx -


Westのダミーは


AQ Q9 x -


この時Northがハート2枚残しているのならハート、ハート3枚残しているのならSAからのダイヤと出すことで、SKの位置によらずメイクする。一種のノンマテリアルスクイズだ。


ディクレアラー目線でNorthのハートの枚数だけは数えられるんだけど、その情報だけでプレイが選択できるのが良いところだ。


この自然な、ほぼ上からキャッシュするだけのプレイは、Southの初手パスを見るとNorthがスペード0枚のことはほぼないので、シングルダミーでも良いプレイだと思う。3NTはメイクと裁定される未来もあったかもしれない。



そして#18も再掲。1Dを2枚で言った方。



これはまずオポーネントの受け答えは非常に誠実。


多分以前にあった/議論した状況だから、双方共に1Dは2枚の可能性があると回答したのだと思うが、僕が彼らと同じシステムを使っていても、


「ジャッジメントとしてはあるかもしれないがアグリーメントにはない」

とか

「そこまで決まっていない、3=3=2=5の5-7点は1Mで捌くこともある」

と回答すると思う。


さらにこっちの方が本質的なのだが、1Dは2枚からというアグリーメントがあったとして、1Dは3枚のことがあるのはこのフィールドでは広く知られていることだから、Northは2Dくらい言えたんじゃないかと反論する。1Dに対してのみならず2Cに対しても介入しなかったところを見ると、3NTに辿り着けなかったのはアグリーメントの不開示のせいじゃなくて、Northのパッシブなビッドによるところが大きいのでは?と主張できるだろう。



-----



翌週、日本リーグの後で高田馬場のHUBに行ったら先に終わっていたN君とPdが飲んでいて、そこへ行ったらN君に怒られた。2人の間で一通りあらましの話があったそうで、よく酔ったN君が言うには、「Daisukeさんが言ったらそれっぽくなりませんか、ルール的にどうとかってことじゃなく、そういう生き方でいいんですかってことですよ!」と言うことだった。


僕内では特に#18で気が重い。少し恥ずかしい感じすらする。

1Dについて、例えば自分よりキャリアのあるプレイヤーに、「決まってないけど普通のことでしょ。」「3枚で1Mって捌いてほしかった?」とか言われたらPdを守ってあげただろうか?


内藤杯前、Pdに少なくとも2回目の機会には2Dで介入するべきだったのではと伝えたら、「確かに介入すべきだったと思いますが、1Dが3枚のこともあると知らなかったんです。」という。


今まで1C-1NTは6-10点でシステム的に困ったことがなく、1Dは5枚か、ディフェンスになった際リードがきてほしいちゃんとダイヤが強い手のみで言うものだと考えていたとか。これは、知らないことを知らない状態。


Pd「Nさんに、『1Dは3枚で言うこともあるんだよ!知らないのか!』ってHUBで教わりました。」


誰にとっても既知のことなどないのだ。

しょうがないから、君が人類で最初にN君にビッド教わった人だよ、と回答した。



Rd8 14.94VP 48-26 +20



ちゃんと勝ち。このラウンドは2つPDi(Pass/Double inversion)があった。


#5




裏のテーブルはNorthから


1H P 3H 3S

4H 4S//


カーディングの展開は不明ながら-2ダウン。

こちらのテーブルは僕がNorthで、


1H P 3D* 3S

4C 4S P** P

X//


*7-9 H4+

**PDi


HQリード、H8を見てDA、DK、Dラフ。CA、クラブ。CK取ってSA。スペードの分かれを確認し、ダイヤをダミーで切ってスペードフィネス。-2。4Cでフォーシングシチュエーションを生んで、Pdは平凡なハンドなのでパスし、こちらがダブルをつけることができた。


PDiは、新しいものの導入にかなり抵抗のあるPdでも出現頻度と分かりやすさから定着まで早かったコンベンション。結構使い勝手がいいと思うでしょ、でももう一つ。


#7



こちらのテーブルはSouthのPdから


1C P 1S 2H

3C* P 3H P

3S 4H ?


*15-17,ちゃんとクラブとパワー持ってる



PDiではXが先に進んでいいか、4Hxにするか悩ましい手を指す。North、僕の2AとCJTxは5Cにするか4Hxにするかぴったり悩ましい手だと判断しXを選択。これが流れる。


1C P 1S 2H

3C* P 3H P

3S 4H X//


CKリード。これは切られてスペード。SQ勝ってハートを出すも後の祭り。スペード3回切られてDKも勝つので5メイクしそうだが、4メイクで許してもらった。


終わった後何が悪かったか話したけれど、僕のダブルはいかにもなダブルで双方合意が得られて、Southで判断するしかないけど難しいと言う話になった。


Southは行き先が見えていないのと、Aレスのためどうもビッドを続けにくい。非常に例外的だが、4Hが落ちないから5Cへ逃げるシチュエーションもあることを念頭に置かないとうまく使えない。今日は4Hxから脱出するつもりで5C置くとうまくメイクするということのようだ。



Rd9.が始まる時点で8位くらい。

1位は遥か彼方でほぼ優勝決定、2位まで10VPあって3位までは5VP程度と言ったところ。元々全然ダメな前二日間だったけれど、勝ったら中々いいところまで行けそう。



Rd9. 15.93VP +13



このラウンドはスコア並べてみるとほぼ何で勝ってるかわからない感じ。まぁセコくできない4S作らせてもらったりしたからか。


最後3つだけ振り返ってみる。


#18



こっちのが見やすいよね。


SouthのPdが1Hで空けて、1NTオーバーコールにNorthの僕が2Hとつけて終了。


リードはDK。切ってクラブロー。CK勝ってダイヤ、これを切ってHQ(!)。

これが思わず勝たされ、HAを取ったのちクラブを適切なやり方で出し続け、SKも勝つ流れで4メイク。


T2、CxでCKが飛び出た瞬間にクラブエスタブリッシュが見えてくる。続くダイヤを切ったらハートを安全に2巡出したいのでHQは合理的な選択である。左手はプレイに習熟していないとHKを出すことは難しいし、出したところでメイクはしている。


裏はDK切ってHA、Hx。HJ、HK勝ってダイヤをつづける。CA、CQ、Cxと続き、CJで勝ってダイヤを続けるとダミー貼り付けになる。SKは勝たせてしまったものの1ダウン。DD解析だとHA1発出すだけでクラブ出し続ければメイクとのこと、そんなもんだよね。+7IMP。


つぎ。



“システムが癒してくれる”



僕の手は


-

AQ98

A842

QJ953


オークションはPdから


1H P 3S* X

4H P ?


*SPL



3Sは上限決まっていて、2NTと言わない14pts以下のスペードサポートのある手ということになっている。


Plan your bid.













パスも4の代も言える中でキュービッドを無限回避して4H言われる時は、いくらなんでもスラムはないだろう…か?


Pdにクラブアナー無ければ基本ダメで、あるけどスペードスプリンターを聞いてやめようと思うような激弱パターンを並べてみるも、よくわからない。


僕はゲロ吐きながらパスした。2NTの代わりに3Sを選んだからにはそのつもりだし。フルハンドは以下の通り。




スペードリード、見た目通り7メイク。

14点のスペードムダ点なしってそりゃあないぜ。


ゲロを吐いた分イラチになっていた僕は不機嫌を隠しきれず、Pdの3Sって上限ない感じですか?というクエスチョンにそういう問題か?と逆質問しながら手を仕舞った。大人気ない。


後で会話したところ、Pdは僕の手にはスペードが1枚あると見ていた。その時3Sにスラムができる手はごく低いと感じたという。


僕がSPLを選んだのは、2NTのサポートレイズスタートだと自分のスペードの短さを4H以下で表現しきれなくなるから。4Hで止まりたいこともあると思ったから3Sを選んだので、4Hにパスしたのは整合性がある。


終わったあと黙々と手を並べてみたところ、3S SPLハンドの上の方の手でメイク可能なのはどうやら事実で、Southはスラムがないと決め切れるほどではないようだ。実践的なのはXに一度パスして僕のXXを待つこと。僕がスペードボイドとわかればスラム一直線なのは間違いない。


…冷静に振り返ると、僕の手は4Hで必ず止まらなくちゃいけないかは微妙だ。1Hオープンにはかなりスラムゾーンともいえる。Pdの提案は2NT後のシステムを改善すること、お互いのショートネスを表明できるようにしたのだ。これには僕も賛成。ストレスはシステムが癒してくれるだろう。


さいご。



#20



こちらはWestの1Dオープンに僕が1Hオーバーコール。1SにPdがスペードを表明したあと2Hにつけてコントラクトは終了。3メイク。


裏はトランスファーシステムなのでWestが1Cであけることになっていて…


1C 1H P 2D(!)

P 3D P 3NT//


ここでタイ人、選んだのは…S8!

消去法で選べるリードだから殊更騒ぎ立てる事はないのだけど、何を隠そう彼の得意技はNTのダブルトンリードはなのだ。あんまり愛でる機会がないので今回はそこを愛でたい。


なんやかやこれは素晴らしい選択で、ほんとどうしようもなく3NTは2ダウンさせ。ま、何出してもなかなか作られることはないので、こういうダブルトンリードで味を占める事のないよう精進して頂きたい。


相手の話になるが2Dは、手馴染み良いが何も解決しないビッド。特に3Dに対してはもうどう動いても程よいプラスを取る事ができない。2Cか2NTか、変わり種の1Sか辺りが良かっただろう。



最終ラウンドでぼちぼちの勝ち、VPが団子となっていたのが幸いして3位が転がり込んできた。真っ当に生きてる(?)といいこともあるんだね。


ブリッジ終わりはしんみちで焼肉食べてタイ人を野に放ち、錦糸町の楽天地スパへ。広くて綺麗で1時間コース1,100円。ちょっと千葉寄りではあるが、とても良い感じ。