テキスト公開1~第12回無料講座
本日も「復縁塾」の開催日である。
これから生徒が集まる。
今教室で一人で待っている。
さて、どうしようか迷ったが、前回と同じように今度の無料講座もテキストの一部を公開します。
すべて文学作品の引用で構成されていますが、引用部分は当日解説する予定でもしかしたら変更の可能性もあります。
現在、編集中ですから。
経験者以外は解らないでしょうが、文章を引用する作業は誤字脱字がとても出やすいのです。
何度かに分けて公開しますが、気をつけていても誤字脱字が出ると思います。
大変申し訳ありませんが、ご了承ください。
以下の「ボヴァリー夫人」はフランスのとてつもなく有名な不倫をテーマとする古典小説です。
言うまでもないでしょうが、当然ながら渡辺淳一の「失楽園」よりも、ずっとずっと有名。
「ボヴァリー夫人」第一部六 フローベル・新潮文庫より引用
尼さんたちはさいしょルオーの娘の信仰のあつさを買っていただけに、彼女がだんだん自分たちの教育から抜け出そうとするのに気づいてろうばいした。じっさい、尼さんたちは娘にお勤めや精神修養や九日間の祈祷や説教といろいろ手をほどこして、聖者や殉教者を尊敬すべきこと、肉体をかろんじ魂の救いの大切さといった戒めを説きすぎたので、こちらは馬が手綱ばかりつよく引かれたかっこうで立ちどまると、轡(くつわ)が歯からすっぽりぬけてしまったのだ。感激性でありながら実際的なこの娘の心、花の美しさにひかれて教会を愛し、恋愛の詞(ことば)のために音楽を好き、情熱のしげきのために文学が好きだった心は、いまでは信仰の神秘に反抗しはじめ、同時にもともと自分の気質にあわない規律にはいっそうのいらだたしさを感じてきた。父がきていよいよ塾から出たとき、彼女が去るのをざんねんがる人はだれもなかった。修道院長は近ごろは彼女が院内の人々を尊敬しなくなったとさえ思っていたのだ。
エマは家へ帰ると、しばらくはきげんよく召し使いたちに指図をし、やがて田舎がいやになり、修道院をなつかしがった。シャルルがはじめてベルトーにきたときは、彼女はもう世の中はすっかり見た、なにももう新しく感じることはない、といった気持ちですっかり幻滅を味わっている人間のつもりだった。
しかし、新しい生活にたいする不安から、あるいはこの男がそばにりうことによって起こるいらだたしさからといってよかろうが、エマは、いままではばら色の翼の大きな鳥のように詩的な大空のうちをただ飛びまわっていたすばらしいあの情熱がやっと自分のものになった、と思いこんだーーしかし、いまその中に生きているこの平穏さ、これがいつも夢みていた幸福だとはどうも考えられなかった。
これから生徒が集まる。
今教室で一人で待っている。
さて、どうしようか迷ったが、前回と同じように今度の無料講座もテキストの一部を公開します。
すべて文学作品の引用で構成されていますが、引用部分は当日解説する予定でもしかしたら変更の可能性もあります。
現在、編集中ですから。
経験者以外は解らないでしょうが、文章を引用する作業は誤字脱字がとても出やすいのです。
何度かに分けて公開しますが、気をつけていても誤字脱字が出ると思います。
大変申し訳ありませんが、ご了承ください。
以下の「ボヴァリー夫人」はフランスのとてつもなく有名な不倫をテーマとする古典小説です。
言うまでもないでしょうが、当然ながら渡辺淳一の「失楽園」よりも、ずっとずっと有名。
「ボヴァリー夫人」第一部六 フローベル・新潮文庫より引用
尼さんたちはさいしょルオーの娘の信仰のあつさを買っていただけに、彼女がだんだん自分たちの教育から抜け出そうとするのに気づいてろうばいした。じっさい、尼さんたちは娘にお勤めや精神修養や九日間の祈祷や説教といろいろ手をほどこして、聖者や殉教者を尊敬すべきこと、肉体をかろんじ魂の救いの大切さといった戒めを説きすぎたので、こちらは馬が手綱ばかりつよく引かれたかっこうで立ちどまると、轡(くつわ)が歯からすっぽりぬけてしまったのだ。感激性でありながら実際的なこの娘の心、花の美しさにひかれて教会を愛し、恋愛の詞(ことば)のために音楽を好き、情熱のしげきのために文学が好きだった心は、いまでは信仰の神秘に反抗しはじめ、同時にもともと自分の気質にあわない規律にはいっそうのいらだたしさを感じてきた。父がきていよいよ塾から出たとき、彼女が去るのをざんねんがる人はだれもなかった。修道院長は近ごろは彼女が院内の人々を尊敬しなくなったとさえ思っていたのだ。
エマは家へ帰ると、しばらくはきげんよく召し使いたちに指図をし、やがて田舎がいやになり、修道院をなつかしがった。シャルルがはじめてベルトーにきたときは、彼女はもう世の中はすっかり見た、なにももう新しく感じることはない、といった気持ちですっかり幻滅を味わっている人間のつもりだった。
しかし、新しい生活にたいする不安から、あるいはこの男がそばにりうことによって起こるいらだたしさからといってよかろうが、エマは、いままではばら色の翼の大きな鳥のように詩的な大空のうちをただ飛びまわっていたすばらしいあの情熱がやっと自分のものになった、と思いこんだーーしかし、いまその中に生きているこの平穏さ、これがいつも夢みていた幸福だとはどうも考えられなかった。