和歌山県新宮市・・・
「なぜ報われないのか。正しいことが評価されない社会。間違ったことが罷り通っている社会。そんな社会に愛想が尽きた。自分は報われない。社会に不要な人間なのだ。」
そんなことを思いながら正気と言う名の男は床についた。
そして夢を見た。
「獄中に誰かがいる。数え切れない数の人々が海へ身を投げている。船が覆り多くの人が溺れている。」
「そして自分は三人の中国人に連れられて道を歩いていた。たどり着いたのは、とあるマンションの一室だった。表札には「正気」とあった。」
「驚いた。自分と同じ苗字じゃないか。」
「振り返ると三人の中国人の姿はなく、変わって自分と同じくらいの年の男性が三人、自分の側に立っていた。」
「その男達も驚いていた。なんと、彼らも正気という名前だというのだ。」
少し間をおいて一人の老人がその部屋から出てきて、四人は家の中に通された。
「今の世の中は大変じゃな。」
老人は四人に語りかけた。
これにも驚いた。この老人は自分の悩みを知っているというのか。見れば、他の三人も驚いている。同じ境遇にある人間のようである。
「ピーンポーン」インターホンが鳴る。
「おじいさん。でないんですか?」
「でてはならない。誘いに乗るな。」
それだけ言って、老人は書斎から一冊の本を取り出してきた。
表紙には「正気の歌~古道に照らされて~」とあった。
「答えはこの中にある。」
そういって老人は本を広げた。
四人が見れば、それはれっきとした一つの物語であった。
悠悠として我が心悲しむ 蒼天曷んぞ極まり有らん
哲人 日に已に遠く 典刑 夙昔に在り
風簷 書を展べて読めば 古道 顔色を照らす
茫漠とした私の心の悲しみ、この青空のどこに果てがあるのだろうか。
賢人のいた時代はすでに遠い昔だが、その模範は太古から伝わる。
風吹く軒に書を広げて読めば、古人の道は私の顔を照らす。
文天祥
「なぜ報われないのか。正しいことが評価されない社会。間違ったことが罷り通っている社会。そんな社会に愛想が尽きた。自分は報われない。社会に不要な人間なのだ。」
そんなことを思いながら正気と言う名の男は床についた。
そして夢を見た。
「獄中に誰かがいる。数え切れない数の人々が海へ身を投げている。船が覆り多くの人が溺れている。」
「そして自分は三人の中国人に連れられて道を歩いていた。たどり着いたのは、とあるマンションの一室だった。表札には「正気」とあった。」
「驚いた。自分と同じ苗字じゃないか。」
「振り返ると三人の中国人の姿はなく、変わって自分と同じくらいの年の男性が三人、自分の側に立っていた。」
「その男達も驚いていた。なんと、彼らも正気という名前だというのだ。」
少し間をおいて一人の老人がその部屋から出てきて、四人は家の中に通された。
「今の世の中は大変じゃな。」
老人は四人に語りかけた。
これにも驚いた。この老人は自分の悩みを知っているというのか。見れば、他の三人も驚いている。同じ境遇にある人間のようである。
「ピーンポーン」インターホンが鳴る。
「おじいさん。でないんですか?」
「でてはならない。誘いに乗るな。」
それだけ言って、老人は書斎から一冊の本を取り出してきた。
表紙には「正気の歌~古道に照らされて~」とあった。
「答えはこの中にある。」
そういって老人は本を広げた。
四人が見れば、それはれっきとした一つの物語であった。
悠悠として我が心悲しむ 蒼天曷んぞ極まり有らん
哲人 日に已に遠く 典刑 夙昔に在り
風簷 書を展べて読めば 古道 顔色を照らす
茫漠とした私の心の悲しみ、この青空のどこに果てがあるのだろうか。
賢人のいた時代はすでに遠い昔だが、その模範は太古から伝わる。
風吹く軒に書を広げて読めば、古人の道は私の顔を照らす。
文天祥