股関節が痛い! 日常でやってはいけない行動や姿勢は? 変形性股関節症 治療大全 第6回
からだとこころ編集チーム によるストーリー
• 3 か月 •
2024.4.13
股関節は人間が移動するための要です。何らかの原因によって変形してしまうと、痛みが生じて動くことがつらくなり、QOL(生活の質)が低下することもあります。
そこで、股関節の構造をはじめ、変形を起こす原因や治療法、股関節の負担をやわらげるさまざまな方法などをQ&A方式で解説します。今回は、股関節の負担をやわらげる日常生活の工夫についてご紹介します。(変形性股関節症 治療大全 第6回)
股関節が動かしにくい人は要注意! 誰でもなる可能性のある「変形性股関節症」とは? 変形性股関節症 治療大全 第1回© 現代ビジネス
Q1.日常生活で避けるべき動作を教えてください
身の回りのことは、自分でおこないたいもの。しかし、股関節の痛みで行動に制限があると、日常生活のちょっとしたことがしづらくなります。
変形性股関節症の人は、保存療法中や骨切り術後は軟骨の摩耗を、人工股関節の手術後も脱臼と摩耗を防ぐ必要があります。
日常生活で股関節に痛みや変形を起こしやすい姿勢や動作があるので、それらを防ぐ動作を覚え、常に落ちついて行動してください。時間がかかっても、股関節を守ることが最優先です。無理のないように、ゆったりと動きましょう。
●股関節をひねる・深く曲げる姿勢や動作
股関節を曲げたままひざを内側に回転させるような姿勢や、しゃがむ・あぐらをかく・正座するといった股関節とひざを深く曲げる姿勢は、股関節への負担が大きく痛みが起こりやすいので、変形性股関節症の人は禁止されます。人工股関節の場合、ひざが内側に入ると脱臼の危険があります。
また、前かがみになって股関節を曲げすぎるのもいけません。こうした動きを避けて、股関節に負担をかけない姿勢や動きを身につけましょう。
●長時間の歩行、重い荷物の持ち運び
長時間歩くと、痛みが起こりやすくなります。杖を使いながらゆっくり歩いて、10~15分ごとに休憩を5分とりましょう。また、重い荷物を持ったり片手で荷物を持ったりするのもよくありません。荷物はカートなどを利用するか、できるだけ軽くしてリュックで運びます。
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●痛む動作を避けるために周囲の協力を
痛みが起こりやすい姿勢や動作を避けるためには、家族や周囲の人の協力が欠かせません。とくに変形性股関節症の進行期から末期は、痛みで体を動かすこともままならなくなります。
手術をした人も退院後しばらくは、脚の筋力が衰えていたり股関節が安定していなかったりして、なにかと人の助けが必要です。自分には変形性股関節症があることと、禁止の動作や姿勢があることを伝え、ものを拾うときや運ぶときなどに助力をお願いしましょう。
体の動かしかたを覚えると同時に、その動作をしやすい環境や股関節の負担が少ない環境にすることも大切です。股関節周辺の筋力をつけながら、無理なく日常生活を送る動作を身につけることで、できるだけ自力で生活できるようにします。
Q2.股関節に負担の少ない座りかたを教えてください
股関節は、立ち座りといった上下の動作で負担がかかるので、畳に正座をするような和式の生活は必要なとき以外は避けましょう。いすやベッドを使う洋式の生活のほうが、床から高い位置にいて上下の動作が比較的少ないのでおすすめです。
●いすに座る場合
低いいすや柔らかいソファは、立ち上がりづらく、股関節には負担となります。腰かけやすく、さっと立ち上がれる高さのいすに替えましょう。座面の高さが50cm以上あると、楽になることが多いようです。
立ち座りするときは、いすに手を添え、できるだけ重心の移動を前後にします。両手でひじかけにつかまり、背すじを伸ばすようにゆっくり動きましょう。座るときはまず浅く腰かけ、手の力でおしりの位置を変えます。立ち上がるときは逆の順にし、垂直に立ち上がります。問題のない側の脚を少し引いてから立ち上がると楽です。
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●床・畳に座る場合(手術後は禁止)
正座は、人工股関節の術後半年間は厳禁で、その後も人工股関節を長持ちさせるためにいすを利用してください。
保存療法中の人はひざ関節が健康なら、正座は比較的可能です。しかし股関節への負担が大きいので、負担の少ない方法を身につけましょう。
まず、問題のある側の足を少し後ろに引き、両ひざを曲げながら両手を前の床につきます。さらに、床にひざを付けて四つんばいになり、ひざを折って腰を下ろし、正座します。
法事などでどうしても畳での動作が必要な場合、正座したりひざを前に伸ばしたりして座ります。正座用のいすは携帯用のものがあるので、備えておくとよいでしょう。
Q3.自転車に乗ってもよいですか?
自転車は歩行よりも股関節に負担が少なく、移動に便利な道具です。転倒しないように十分注意し、正しい乗りかたで有効に利用しましょう。
まず、無理なく乗れるように、サドルやハンドルの高さを事前にチェックします。乗っているときは、左記の姿勢になるように、サドルやハンドルの高さを調整します。立ってペダルをこいではいけません。坂道を上るのはできるだけ避けるか、電動自転車のアシストを利用しましょう。
乗り降りの動作には、十分な注意が必要です。脚を上げ、片方の脚だけで体を支えることになるので、痛みのない側の脚から乗り降りします。安全のために、自転車を完全に止めた状態でおこなってください。
二輪に乗るのが怖い人は、後輪が2つの三輪を使いましょう。うしろに荷物を置けて、転倒しにくくなります。
【自転車に乗るときの姿勢】
自転車に乗るとき、最も怖いのは転倒して骨折することです。転倒予防のために、サドルの高さなどを自分に合った状態にしましょう。
●上半身
やや前に傾いた姿勢をとる
●ひじ
ハンドルを握ったときに軽く曲がる
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●ひざ
ペダルがいちばん下に来たとき、ひざが軽く曲がる。ペダルがいちばん上に来たとき、ひざが股関節より高くならない
●足
サドルにまたがったとき、両足が地面につく
●腰
おしりが浮かない、動かない。立ちこぎは禁止。
乗るときやペダルをこぐとき、ひざは外向きにします。
手術後の人は、左右の筋力やバランスの回復状態によるので、乗る前に必ず医師や理学療法士に相談をしましょう。
大好調の意見
知人で手術した人がいるので気になっている。