160億の脳神経をスーパーコンピュータで再現して見えてきた「驚きの脳の実態」
池谷 裕二 によるストーリー
• 1 日
2024・4・11
累計43万部を突破し、ベストセラーとなっている脳研究者・池谷裕二さんによる脳講義シリーズ。このたび、『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(講談社ブルーバックス)に続き、15年ぶりとなるシリーズ最新作『夢を叶えるために脳はある』(講談社)が刊行され、早くも話題となっている。
なぜ僕らは脳を持ち、何のために生きているのか。脳科学が最後に辿り着く予想外の結論、そしてタイトルに込められた「本当の意味」とは。
高校生に向けておこなわれた脳講義をもとにつくられた本書から、その一部をご紹介しよう。
神経細胞は「発火」する
まず、この映像を見てほしい。脳の活動だ。神経細胞の集合体である脳。その活動は、こんな感じになっている。
脳の中に神経細胞がいくつあるか。10年前に講義した『単純な脳、複雑な「私」』で、僕は「数え上げた人はいない。だから、いくつあるか本当はわからない」と言ったけれど、その後、わりと精度よく計算した人が出てきて、860億個くらいだったそうだ。銀河系に存在する星の総数に近い桁数だね。そのうち19%、つまり約160億個が大脳皮質に存在するらしい。
この映像は、大脳皮質の神経細胞が活動する様子を、ピカッと煌めく光で表現している。脳の発火を、モニター上のピカピカで代替している。
脳の神経活動をコンピュータで再現する photo by gettyimages© 現代ビジネス
いま「発火」と言った。発火、つまり火が出ることだね。実際、英語で、神経細胞の発火のことをfireと言う。
ーうそ。
ーへえ。
花火や火薬に着火して飛び散る火花。あの発火ね。神経細胞はこんなふうにピカピカと活動している。まるで発火しているみたい、きれいだね。
スーパーコンピュータで脳を再現
あ、しまった。もちろん脳の中で本当に「発火」しているわけではないよ。火花は飛んでいない。あくまでも神経活動は電気信号だ。電気は目には見えない。だから人の目に見えるように、カラフルな色に代えて、あたかも発火しているように表示しているんだ。
こんなふうに本来は色のないものに、あえて色をつけて、可視化することを「擬似カラー表示」と言う。ここで見えているものは、あくまでも偽物の色だけど、脳の内部の様子をイメージするのに役立つ。
1回光る時間は1ミリ秒。つまり、1000分の1秒。ほんの一瞬だ。これは実際の脳そのものではなく、コンピュータ・シミュレーションで再現したもの。スーパーコンピュータを使うと、脳の神経活動をこんなふうにコンピュータ内でかなり緻密に再現することができる。
さらに連載記事〈なんと、「1000分の1秒」でやってのけるとは…! ノーベル級の顕微鏡で見えた「脳の神経細胞のスゴすぎる働き」〉では、神経細胞の仕組みについて語ります。
大好調の意見
「スーパーコンピュータを使うと、脳の神経活動をこんなふうにコンピュータ内でかなり緻密に再現することができる。」とのことである。本当ならば素晴らしいことである。だがこんな描き方をしても我々生命の不思議は少しも解決されない。この著者には他にどんなことが記載されているのか、のぞいてみたくなりました。