無人のモグハウスで発見された手記 -5ページ目

公爵? 侯爵? ― アロケン

見返してみると、以前はネタに困ったときのお手軽小ネタ帳として活用していたレメゲトン出典の悪魔について、久しく取り上げていないことに気付きました。
今回は久しぶりに、その辺りから引っ張り出してみることにしましょう。


本日のお題は、ソロモン王によって封じられた七十二柱の悪魔の一、アロケンをご紹介します。

アロセス(Alloces)、アロケル(Allocer)などとも呼ばれるこの魔神は、地獄の公爵(または大公、大侯爵、大男爵とも)として、36の軍団を指揮する存在といわれています。


召喚に応じて顕現する際は頑健な軍馬に跨って現れるアロケンは、燃え盛る炎の瞳を有した、獅子頭の偉丈夫の姿で描かれることが多いようです。


アロケンは、天文学をはじめ様々な学問に通じた理知的な悪魔で、彼を召喚し使役することによって術者は、占星術や自由七科(文法、修辞学、論理学の三学と、算術、幾何学、天文学、音楽の四科、計七つの科目からなる、非奴隷階級の自由人が学ぶべき基礎的な学問)の知識を授けてもらうことができるとされています。


ヴァナ・ディールにおけるアロケンは、ズヴァール城外郭に配置されたDemon族NM、Marquis Allocenとして登場します。


ヴァナのアロケンは公爵ではなく侯爵なんですね。大侯爵ですらないようです。
まぁもっとも爵位については詳しくないので、侯爵と大侯爵がどう違うのかは知らないんですけどね。


約24h間隔の時限POPタイプのNMで、ドロップアイテムはコルセアナイフ
コルセアナイフ自体は該当LV帯では飛びぬけて優秀な短剣ですが、装備可能ジョブも限定されていますし、アクセスの悪いズヴァール城へ積極的に狩りにいく人も珍しいんじゃないでしょうかね?



短剣:コルセアナイフ/D21/隔206/攻+10/Lv50~/シ狩コ

応報者 ― フラガラッハ

ここのところこのケースが多いような気もしますが、約三年前のエントリーで、ケルト神話の光の神、ルーがその手にしていたとされる三つの武具の一つ、タスラム をご紹介しました。


その時点では未実装のために名を上げるに留めていた残り二つの内一つ、“フラガラッハ”が前回のVer.upで追加されたので、今回はそれを取り上げてみましょう。


さて、またの名を「アンサラー」あるいは「リタリエイター」とも呼ばれるこのフラガラッハは、古ゲール語で「応じる者」「報復する者」を意味する言葉です。先に挙げた二つの異名は、これらを英訳したものですね。


ルーが養父である海神マナナーン・マクリールから譲り受けたといわれるこの剣は、いかに頑堅な鎧をも易々と斬り裂く凄まじい切れ味を有しており、斬られた者は何人であってももう助からないという強大な威力を秘めています(解釈の違いか、フラガラッハよって負った傷は決して癒えないとされることもあります)。
その切れ味だけでも十分に脅威的なのですが、のみならずこの剣を前にした者は誰もが魅入られたかのように、進んで刃の下に伏したとも言われています。


またこの他にも、ルーが(担い手が)求めれば勝手に鞘から抜けて手に収まる。投擲すれば自動的に敵を倒して手に戻る。風を意のままに操る。などの属性が付与されて語られることもあります。


もっともフラガラッハは聖剣・魔剣の類としてはかなりのビッグネームで、あちこちで引用されて使われているので、先に挙げた特性も含め、どこからどこまでが元から言われていたもので、どこからが後世に付け加えられた脚色なのかはもう判然としませんが。



フラガラッハ/D44/隔240/MP+20 命中+4 魔法命中率+2/Lv74~/戦ナ暗青/Rare



ヴァナ・ディールにおけるフラガラッハは、過去エリアを徘徊するSandworm族HNM、SandwormのTP技“ドゥームヴォイド”によって強制移動させられるBF内で遭遇する、同じくSandworm族HNM、Lambton Wormからのドロップアイテムとして採用されています。


性能的には、命中や魔法命中のボーナスに、原典を意識していることが窺えますが……もっとこうD/隔の効率を思い切り悪くして、代わりに命中+20とかの尖がった性能だったら面白かったんですけどね。
いや、面白いだけで実用性が薄れますが。


! 「追加効果:時々魅了」!?
……論外か。

ヴァルハラの夜宴 ― アンドフリームニル 他

もう随分と前のことになりますが、エインヘリヤル(当時はエインヘイヤルとしていましたが、FFXIで採用された表記にあわせます)たちの夕餉を煮込む魔法の大鍋、エルドフリームニル をご紹介しました。


どうやら現在では、その他のヴァルハラの厨房に携わる面々も、エインヘリヤル(コンテンツ名)にモンスターとして配置されているようなので、改めてその辺りをまとめてご紹介しようと思います。


さて、これまでにも折に触れて軽く解説してきましたが、まず“ヴァルハラ”というのは、北欧神話における主神オーディンが住まう居城です。
「戦死者の館」の意を持つこの場所には、その名が示すとおりに戦死した勇者達の英霊が集められ、オーディンの手勢として来たるラグナロク に備え、日々錬兵に明け暮れています。


実はオーディンは結構身勝手なところのある困ったちゃんなので、目をつけた英雄がいたりすると、(さすがに直接手にかけたりはしないものの)ヴァルハラに召し上げるために死なせてしまったりすることすらあります。北欧神話の世界では、名を上げすぎるのも考え物ですな。


そうやってヴァルハラへと招聘された戦死者達が“エインヘリヤル”と呼ばれる軍勢です。
ラグナロクのために集められた精鋭集団のはずなのですが、悲しいかなそのラグナロクにおいて、エインヘリヤルたちにスポットは当たりません。
まぁそれぞれが一騎当千の豪傑揃いのはずなので、雄々しく戦ってはいたのでしょうが……報われない話です。


そんなエインヘリヤルたちの日々のスケジュールは、日中は実戦訓練という名の殺し合い、夜は宴会、翌日になると前日の錬兵で死亡した者も蘇ってまた殺し合いという、極めて豪快なものです。
前振りが長くなりましたが、この夜毎の宴会に供される料理に関わる面子が、本日のお題です。


まず料理長をご紹介しましょう。
彼の名は“アンドフリームニル”。「煤塗れの者」を意味する名の持ち主である通り、彼は来る日も来る日もエインヘリヤルたちのために魔法の大釜と睨めっこしているわけです。


その魔法の大釜の方は以前ご紹介しました。
片手根のブラックヘイローを習得するために戦うMagic Pot族NM“エルドフリームニル”です。
こちらは「火で煤けたもの」を意味しています。


エルドフリームニルで煮込まれているのが“サイフリームニル”という大猪です。
その名は「煤けた海棲生物」だそうなのですが……猪が海棲? よくわかりません。
サイフリームニルの肉は、食べるのがどれほどの大勢であってもその全てを賄うことができ、かつ殺され調理されてしまっても翌日にはまた元通りになっているという便利な特性をもっています。
延々と殺され続けると考えると、傍目にはひどく悲惨に見えはしますがね。


また、エルドフリームニルの回では割愛しましたが、この煤だらけの連中の他にも、夜宴に供される蜜酒を出す魔法の山羊(または鹿とも)というのもいます。
レーラズと呼ばれる木の芽(あるいは木の葉)を齧るその山羊は“ヘイズルーン”と呼ばれます。
ヘイズルーンから絞られる蜜酒は、常に全てのエインヘリヤルが一杯ずつ相伴に預かれる量とされています。
腹中で既に発酵しているんでしょうかね? どういう身体構造をしているんでしょうか。


ヴァナ・ディールにおけるこれらの名は、エルドフリームニルを除きエインヘリヤル中に見ることができます。
それぞれ、アンドフリームニルはCorse族のAndhrimnir、サイフリームニルはTiger族のSaehrimnir、ヘイズルーンはRam族のHeithrunとして採用されているようです。


先行して名を使われてしまったために、ヴァルハラから廃棄されてしまった格好のエルドフリームニルに幸多からんことを。

パラケルススの剣 ― アゾット

本日は、錬金術師としてはおそらく世界で最も高名と思われる彼のパラケルススが、生涯肌身離さずしたと言われている剣、“アゾット(アゾートとも)”をご紹介しましょう。


パラケルススについては以前ホムンクルス をご紹介した際に軽く触れましたが、彼は1400年代末から1500年代半ばにかけて活躍した、スイス出身の医師です。
本名を「テオフラストゥス・フィリップス・アウレオールス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム」といい、よく知られる「パラケルスス」というのは、古代ローマの高名な医師、「ケルスス」を超える者といった意味合いの、いわば芸名の類です。

前述のように元々は医学者なのですが、後年の評としては錬金術師としての業績の方が、より知られていますね。


その彼が肌身離さずに常携したと言われているのが、アゾットと呼ばれる剣です。
アゾットは短剣とされることが多いのですが、パラケルススの肖像画として最も有名なものに描かれている剣がそのアゾットと考えると、短剣というよりはロングソードに近い形状に見えます。


その名は柄頭にはめ込まれた水晶に刻まれた文字「Azoth」から来ています。
この「Azoth」という文字は、アラビア語で「水銀」を意味する「Azzauq」が転じたものとも、様々な言語で最初の文字となる「A」に、ラテン語の最後の文字「Z」、ギリシア語の最後の文字「Omega」、ヘブライ語の最後の文字「Tau」を組み合わせて作られた語とも言われています。


柄頭の水晶には一匹の魔物が封じられていたとされています。
魔物は完全に封印された格好ではなく、パラケルススの意のままに呼び出し、使役することが可能な使い魔だったのだとか。気に入らない相手に対しては、これをけしかけたりもしていたようです。


また柄の内部(あるいはキヨンの内部)には小さな容器が仕込まれており、そこにはいわゆる“賢者の石”が入っていたとも伝えられています。


ヴァナ・ディールにおけるアゾットは、過去エリアを徘徊するHNM、Dark Ixion がドロップする短剣として採用されています。



短剣:アゾット/D35/隔210/AGI+4 命中+4 回避+4/Lv74~/シ踊/Rare



元ネタのアゾットは、どう見ても実用からは遠い守り刀に近い代物だったはずですが、こちらは完全に実戦性能の高い武器にされていますね。
錬金術との関連性もスッパリとオミットされています。

名刀奇談 ― 八丁念仏団子刺し

日本刀にまつわる逸話というものには実に様々なものがあります。
古今鍛冶備考 」などに実際の試し斬りの結果と合わせて収録された比較的信憑性の高いものから、講談、果ては怪談の域にまで到達してしまったものまで、その内容はバラエティに富んでいます。
本日ご紹介のこの一振りについて語られるのは、人外の異形も登場せず、超常の霊験も起こりはしないものの、どう考えても眉唾物。そんなお話。
今回のお題は“八丁念仏団子刺し”です。


随分と前のこと(よく見たら約三年前だ…)になりますが、奇天烈な名前で知られる刀の中では双璧をなす“にっかり青江 ”のエントリーで、軽く触れたこの刀は、備前一門行家の手による作と言われています。
その太刀姿について明確に描写された資料は持ち合わせていないので、詳しいところは判りませんが、全長二尺七寸とやや大振りの刀だったようです。


その担い手としてよく知られているのが、戦国の武力集団「雑賀衆」の頭領・鈴木孫一重秀。通りのいい呼び名で言うなれば雑賀孫市です。

にっかり青江の項でも概要は挙げてありますが、この備前行家が八丁念仏の異名を持つようになった以下のエピソードは、その孫市の手によって行われたこととも言われています。


確かに斬ったはずの男が、倒れるでなく血を噴くでなく、何事なかったかのように念仏を唱えながらそのまますたすたと歩いていってしまった。
何とも面妖なとその後をついて行くこと八丁(一丁は約109m)ほど、ようやく男は真っ二つになって地に伏した。
杖代わりに突いていた刀のほうをふとみれば、路傍の石があたかも団子のように串刺しに連なっていた。


故に号して“八丁念仏団子刺し”(小石の団子刺しはオマケとして扱われ、単に“八丁念仏”とだけ呼ばれることもあります)というわけですが、仮にコレが事実だとすればその切れ味はもう常軌を逸したレベルです。斬られた人間がそれに気付くまでに時間を要するだけでも尋常じゃないところへ持ってきて、天然石をいくつも串刺しにして何の抵抗も手に感じなかった、目にするまで気付かなかったというのは豪快にもほどがあります。
ある意味、雑賀孫市には相応しいエピソードと言えるかも知れません。


似たような逸話として、斬り付けた人間が川に飛び込んで泳いで逃げようとし、川から上がった後に(あるいは泳いでいる最中に)真っ二つになったという“波泳ぎ兼光”なんてのもあります。
刃傷沙汰の話には違いないので不謹慎な言い回しではありますが、いずれも何とも浪漫を感じさせる切れ味ですなぁ。


ヴァナ・ディールにおける八丁念仏団子刺しは、先のupdateで追加された花鳥風月の第二段階、ゼオルム火山のドラゴン族NM、Anantabogaがドロップする両手刀として採用されています。
性能を見るにつけ、あまり元ネタの方は意識されていませんね。
まぁ、どうすれば元ネタの再現なのかと問われても困ってしまいますが。



両手刀:八丁念仏団子刺し/D70/隔378/命中+4/Lv74~/侍/Rare Ex

永劫の断罪 ― イクシオン

本日のお題は、ギリシャ神話よりの出典。
半人半馬のケンタウロス一族の祖として知られる、決して赦されることのない罪人、イクシオンをご紹介しましょう。


イクシオンは、テッサリア王 プレギュアスの子として生まれた、テッサリアの王子です。
以前ご紹介したアポロンの妻、コロニス とは兄妹(姉弟かもしれませんが)に当たります。

マグネシア王たるディオネウスの娘 ディアを娶るに際してイクシオンは、ディオネウスから結納として贈り物をすることを条件に出されます。


それに承諾してみせたイクシオンでしたが、その実彼は応じるつもりなど毛頭なく、約束の品を渡すと偽って誘い出したディオネウスを、赤熱した炭を仕込んだ落とし穴に落として焼き殺してしまいます。

こうして親族を殺害した最初の人間となったイクシオンは、あらゆる事物から咎めを受ける罪にまみれた身となったわけですが、ただ一人、大神 ゼウスだけはそんな彼を哀れみ、その罪を赦し、清めてやります。


当初こそそんなゼウスの寛容に深い感謝を示したイクシオンでしたが、元々性根が腐った男なのでしょう、恩を仇で返す格好でゼウスを裏切ることになります。
イクシオンは、あろうことかゼウスの妻、ヘラを誘惑しようとしたのです。


しかしそこは相手は全能の神、この企みは事前にゼウスの知るところとなります。
ゼウスに食事に招待されたイクシオンは、それがその下衆な本性を暴くために設えられた罠とも知らずにのこのこと誘いに応じ、神々の思惑通りにヘラに対して不埒を働きます。
実はイクシオンがそれと知らずに抱いたそのヘラは当人ではなく、ヘラの姿に似せて雲から創られた替え玉 ネペレだっのですが、不敬の極みであることには変わりありません。
邪恋の現場を押さえられたイクシオンはその罰として、奈落の底 タルタロスへと落とされ、そこで火炎を吹き上げる車輪に縛り付けられ、二度と赦されることなく永劫に引き回される罰を受けることとなったのです。


また、後にネペレはケンタウロスというイクシオンの子を出産します。
このケンタウロスは極めて好色な男で、何頭もの牝馬と交わり、その間に半人半馬の子をもうけます。
彼らがやがてケンタウロス一族と呼ばれることになるのです。


ヴァナ・ディールにおけるイクシオンは、過去エリアを徘徊する一角獣型のHNM、イクシオン族のDark Ixionとして登場します。
FFシリーズの過去作からの登板ですね。

イクシオン自身は直接馬とは関係ないはずなんですが、何故かこの姿にこの名がつけられています。


その戦闘開始に特殊な条件が設けてあり、投擲武器“火車の灰”を命中させない限り、交戦状態に入ることはできません。
この火車の灰は、原典の燃え盛る車輪からきているんでしょうね。


さて、既にあちこちで語られていることでしょうが、問題はこの火車の灰です。
ピクシー族 のドロップアイテムなんですよね、これ。
■eが何がしたかったのか、何となく察しはつきます。
欲深い人間たちが勝つか、保護しようという善意が勝るかという状況を、インタラクティヴに表現したかったのではないでしょうか(これまでの数え切れない前科からして、実は何も考えずにこうしたというセンも捨て切れませんが…)。
まぁ確かに面白いとは思います。ピクシー族の存亡が、完全にユーザの手に委ねられた格好になるわけですから。


……「欲深い人間」として悪者に配役されてしまう、Dark Ixion絡みのアイテムを求めるユーザたちの立場はどうなってしまうのか、というところまでちゃんと考えてから行動して欲しかったところですがね。
それまでなかったユーザ同士の対立構造をわざわざ作り出したのだということが、彼らには理解できているのでしょうか。

夏の夜の夢 ― ティタニア

本日は、彼の有名なウィリアム・シェークスピアの戯曲「夏の夜の夢」に登場する妖精の女王、“ティタニア(タイタニアとも)”をご紹介しましょう。


さて、前述の通りに「夏の夜の夢」において、妖精たちを統べる王オベロンの妻として登場し、そのオベロンとドタバタの夫婦喧嘩を演じるこのティタニアですが、元を辿りますとそのルーツは古く、実に紀元前前後まで遡ります。
古代ローマ時代の詩人オウディウスが記した「変身物語」という詩集があります。
これは、ギリシャ神話・ローマ神話のエピソードのうち、登場人物たちが様々なものに姿を変えるものを中心にまとめたものですが、その中で月の女神ディアナ(ローマ神話の表記。ギリシャ神話における“アルテミス”に当たる)を表すとき、その添え名として用いられたのが「ティタニア」という単語でした。
もともとはティターン(英語読みで「タイタン」)神族の女王といった意味合いだったのです。


これ以前は妖精の女王と言えば、“クイーン・マヴ”と呼ばれる芥子粒大の小人の姿をしたものが一般的だったのですが、ティタニアは人間と変わらない姿をした全裸、あるいは薄衣一枚の半裸の美女として描写されることが多いようです。
一説によると当時は裸婦画が禁じられていたため、その抜け道としてティタニアをそうした姿に描いたのだ、ともいわれています。人間でないからヌードもOK、というわけですか。
こうしてみると風俗的な発想というのは当時から余り変わっていないんですね。


「夏の夜の夢」に登場するティタニアは、「取替え子(ヨーロッパの伝承。人間の赤子を、妖精たちが自分の赤子とすり替えてさらってしまうとされている)」として連れてきたインドの王子を巡って、夫であるオベロンと諍いを起こす格好で描かれています。

この夫婦喧嘩で機嫌を損ねたオベロンは、目を覚まして一番最初に見た者を愛してしまうという魔法の媚薬で、ティタニアが、首から上をロバのものに変えられてしまった男を愛するようにしてしまいます。
すったもんだの末に二人は仲直りをするのですが、妖精族にも「犬も食わない」類の痴話喧嘩があるんですねぇ。

……内容はいかにも妖精らしいものではありますが。


ヴァナ・ディールにおけるティタニアは、カンパニエバトルに参戦するPixie族のスカウトNPC、Titaniaとして登場しています。
さすがは妖精の女王の名を冠しているだけあって、お供に9体ものPixie族、Faerieを引き連れての参戦です。


スカウト条件はまだ正確には判明していないようですが、彼女が参戦している間は、その所属国はシギルの効果に経験値ロスト軽減(戦績100消費)が追加されるとのことです。


残念ながら私はまだ拝謁したことはありませんが。

災厄の枝 ― レーヴァテイン

前回に続いて、本日もバルラーンの秘宝から一席いってみましょうか。
北欧伝承「詩のエッダ」の一つ、「フィヨルスヴィドの歌」中で言及される魔法の武具、“レーヴァテイン”が本日のお題です。


「災厄の枝」あるいは「傷つける枝」「裏切りの枝」といった意味の名を持つこのレーヴァテインは、前述の通り「フィヨルスヴィドの歌」という詩文の中に登場する武器です。
エッダにおいては「枝」は「剣」の暗喩であるという説があることから、剣の形をしているとされることが多いようです。(名前の類似からも判るとおり、同様に「枝」の名を持つミステルテイン も、同じように剣とされることがあります)


レーヴァテインは、悪神ロキがニヴルヘイムの門の下でルーン文字を彫り刻んで作り上げたとされており、九つの錠と女巨人シンモラによって守られたレーギャルンという箱の中に収められています。


以前ご紹介したフレスヴェルグ と共に世界樹ユグドラシルの樹冠に棲む怪鳥ヴィゾフニルを倒すためには、このレーヴァテインが必要とされているのですが……そこがちょいとばかし奇妙なことになっております。


「フィヨルスヴィドの歌」の主人公、英雄スヴィプダーグは、運命によって定められた恋人、メングラッドを捜し求めています。
メングラッドは、ヨトゥンヘイムにあるガストロープニル砦の中におり、その砦の門はギフとゲリという恐るべき番犬によって守られています。
番犬たちの気を逸らすためには、ヴィゾフニルの肉が必要なのですが、前述の通りそのためにはレーヴァテインを用いなければなりません。
がしかし、レーギャルンの番人であるシンモラは、ヴィゾフニルの尾羽根と交換でなければレーヴァテインを渡してくれないことになっているのです。


レーヴァテインを手に入れるためにはヴィゾフニルを倒さねばならず、ヴィゾフニルを倒すためにはレーヴァテインが要る……。

つまり結局のところレーギャルンを開ける手段は存在せず、誰もレーヴァテインをその手にすることは出来ないのです。
「フィヨルスヴィドの歌」中でもレーヴァテインが実際に振るわれるシーンは存在せず、ただ問答の中で言及されるだけに留まっています。


そんなわけで「ヴィゾフニルを討てる唯一の武器」という特徴以外、ほとんどが未知数なままに終始するこのレーヴァテインなのですが、何をどうしたわけか巨人スルトがラグナロク において世界を焼き払う際に用いた炎の剣こそが、このレーヴァテインであるとする説もあります(シンモラはスルトの妻なので、そこから連想したのでしょうか…?)。
何故か日本ではこの説が根強く、ジャパニーズ・ファンタジーにおいてはレーヴァテインを極めて強力な炎の剣とする解釈がまかり通っています。


ヴァナ・ディールにおけるレーヴァテインは、バルラーンの秘宝の一つ、黒魔道士専用両手根として採用されたようです。
スルトの剣説はおろか、剣であるという点すらすっぱりと切り捨てていますね。まぁミステルテインも枝のままで採用されているので、さもありなんといったところですが。


こちらもやはり魔道士の杖を強化して作るのでしょうか。

原典を意識するなら、バード族特効とかつくかも知れませんね。

鋒両刃作 ― 小鴉丸

いよいよ(おそらく)ナイズル武器の強化に関する情報が出てきましたね。
レーヴァテイン”、“ブルトガング”、“ヴァジュラ”等々、久しぶりに大物のマジックアイテムの一斉実装です。有難や。
早速それらバルラーンの秘宝から一つ取り上げてみましょう。
本日のお題は、神鳥からもたらされたと言い伝えられる平氏の至宝、神剣“小鴉丸(小烏丸と書くのが普通ですが)”です。


片刃の刀剣にしばしば見られる特徴的な形態に、“擬似刃”と呼ばれる造形があります。
これは、剣尖から刀身の半ばにかけて、峰の側にも刃部が設けられているものです。一部が両刃になっているわけですね。
こうした造りの物は我が国の刀にも時折見られ、そうしたものを指して“鋒両刃作(きっさきもろはづくり)”、または“小烏造(こがらすづくり)”と呼びます。
言うまでもなく、鋒両刃作の代表格たる小烏丸から取られた名称です。


現在は御剣として宮内庁所蔵で現存する小烏丸は、刃長が実測62.7cm、前述の通りに切っ先から刀身の中程までが両刃となった、特徴的な刀剣です。
1.3cmの反りはほとんどが茎(なかご)の部分に設けてあり、柄の上に出る刀身そのものはほとんど直刃(すぐは)に近い太刀姿をしています。日本刀の黎明期の毛抜形太刀に見られた「腰反り」と呼ばれるスタイルの極端な形状ですね。
作刀されたのは平安時代中期、天慶年間頃と目されています。


この刀には、その霊威を語られる伝説が残されています。
桓武天皇が、平安京に新築された南殿に昇った際に、遥か上空より飛来した全長八尺(約240cm)に及ぶ巨大な神鳥より賜ったものだというのがそれです。
神霊の御遣いたるその巨大な三本脚の烏(いわゆる八咫烏ですな)から授かった一振り故に、号して“小烏丸”というわけですね。
……なんで巨大な烏に貰ったものが小烏になるのかは知りませんが。


その後小烏丸は、朱雀天皇の代に平貞盛に下賜されて以降、平氏重代の宝として伝えられたとされています。
壇ノ浦の合戦にて、草薙剣 もろともに海中に没したとされていた小烏丸でしたが、平氏の一門に連なる伊勢家が秘蔵していたことが後に判明し、明治天皇の代に御物として献上され、現在に至ります。


また小烏丸は後世になって、江戸浄瑠璃「明烏夢泡雪(あけがらすゆめのあわゆき・安永元年)」の続編、「明烏後真夢(あけがらすのちのまさゆめ・安政四年)」で重要なアイテムとして取り上げられています。
心中を取り扱ったこれらの物語の中で、適わぬ恋の果てに首を吊って死んだ恋人たちが、小烏丸の霊験によって息を吹き返すというものです。
まぁこっちの方は完全なフィクションですけどね。御剣から平氏の伝家の宝刀になった小烏丸が、作中のように商家の家宝になるはずがありませんし。


ちなみに“小烏丸”の名で呼ばれる名刀は、よく知られた上記の物の他に一振り存在します。
そちらの方は前出のものとは正反対に源氏の側の刀で、蜘蛛切 (その時点では“吼丸”と改名されていましたが)を熊野権現に献上した源為義が、その代用として佩いた目抜の部分に烏をあしらった太刀を“小烏丸”と号したと、「平家物語・剣巻」に記されています。


ヴァナ・ディールにおける小烏丸は、バルラーンの秘宝 として発表された侍専用両手刀、小鴉丸として、公式サイトに記載されています。
十中八九、風切りの刃を強化して完成するのでしょう。


詳細データについては現時点全く不明ですが、SSを良く見るとちゃんと鋒両刃作になっているのが判ります。
反りが腰反りではなく華表反り(「とりいそり」。刀身全体が緩やかに反っているタイプ)なのは残念ですが。

ドワーフの先祖 ― ドゥエルグ

本日は、皆様よくご存知の剛健なる大地の妖精ドワーフの起源とされている、北欧神話の小人族“ドヴェルグ”をご紹介しましょう。


北欧神話における創世の物語は始原の巨人、ユミルの死に遡ります。
オーディンとその兄弟たちによって殺害されたユミルの屍は解体され、その血は海に、肉は大地に、骨と歯は山々に、体毛は森林に、頭蓋は天に、脳は雲にと創り換えられることで世界が創造されたとされています。
この時、その死体に湧いた蛆。後に神々によって知性と人の姿を与えられるこの蛆こそが、ドヴェルグたちの祖に当たるのです。


ユミルの死肉、即ち大地から生じたドヴェルグたちは、そのまま大地に属する妖精として地に満ちます。
ニダヴェリール(「暗き野」あるいは「暗き家」の意)に住まう彼らは、これまでに折に触れて言及してきた通り、工芸の技に優れ、グングニルブリシンガメングレイプニル といった様々な名品を産み出していきます。


彼らが英語圏に伝わると、ドワーフと呼ばれることになることは既に述べた通りですが、シーリー・コートの側に分類されるドワーフに比べ、ドヴェルグたちは善悪に二分した時、どちらかと言えば後者に属する存在と考えられており、しばしばスヴァルトアールヴヘイム(「黒き妖精の国」の意)に住まう闇の妖精、デックアールヴ(英語圏で言うところの「ダークエルフ」)と同一視されます。


神々の依頼に応じて色々と創り出したりしてますし、そんな邪悪な存在って感じもしないんですけどねぇ。


ヴァナ・ディールにおけるドヴェルグは、エインヘリヤルに出現する新種のデーモン類、ドゥエルグ(Dvergr)族のMotsognir(モートソグニル)として登場しています。
この“モートソグニル”というのは、ドヴェルグたちの頭領に当たり、その名は「疲弊し嘆息する者」を意味します。


ドゥエルグ族は当初はこのMotsognirのみでしたが、後のupdateによって中尉アサルトのキラーロード作戦にKing Goldemarが追加されました。
現時点ドゥエルグ族はこの二種類しか存在しないようですね。