何だろう? この法律 ~棚田地域振興法 | いくつ知ってる?法律トリビア【第一法規】

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こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当です。

 

山間の地域に行くと、山の斜面に棚田が広がっていることがあります。

水をたたえた棚田が整然と並ぶ様子は、心が洗われるような美しい風景ですね。

この棚田について、昨年、「棚田地域振興法」という法律が制定されたので、

どんなことが定められているのか、見てみたいと思います。

◯棚田は貴重な国民的財産

まず、法律の目的を定めた第1条は、棚田は貴重な国民的財産であると述べ、

棚田が持つ色々な機能を維持・増進することによって、棚田のある地域を発展させ、

国民生活の安定・向上に役立つことを目的として掲げています。
 

棚田地域振興法(令和元年法律第42号)
(目的)
 第1条 この法律は、棚田地域における人口の減少、高齢化の進展等により棚田が荒廃の危機に直面していることに鑑み、棚田地域の振興について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他の棚田地域の振興に関し必要な事項を定めることにより、貴重な国民的財産である棚田を保全し、棚田地域の有する多面にわたる機能の維持増進を図り、もって棚田地域の持続的発展及び国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。



◯棚田の定義

続いて、棚田の定義が述べられています。

この法律では、棚田を「傾斜地に階段状に設けられた田」と定義しています。
 

(定義)
 第2条 この法律において「棚田」とは、傾斜地に階段状に設けられた田を・・・いう。



◯棚田は色々なことに役立っている

第3条には、棚田のある地域をどのように振興するかという基本理念が示されています。

その中で、棚田のある地域が色々な機能を持っていることが述べられています。

列挙してみると、

・農産物の供給という、田んぼの最も主要な機能のほか、
・国土の保全、水源の涵養といった、土地や水源を守る機能
・生物の多様性の確保などの、自然を守る機能
・良好な景観の形成、伝統文化の継承といった、人々の心を豊かにしてくれる機能

というように、たくさんの機能があると書かれています。

そして、私たちが将来にわたってこうした機能の恩恵にあずかれるように、棚田を保全し、

棚田のある地域への定住や、他の地域との交流を促進するように、

棚田のある地域の振興を行うことが宣言されています。

 

(基本理念)
 第3条 棚田地域の振興は、棚田地域の有する農産物の供給、国土の保全、水源の涵養、生物の多様性の確保その他の自然環境の保全、良好な景観の形成、伝統文化の継承等の多面にわたる機能が維持され、国民が将来にわたってその恵沢を享受することができるよう、棚田等の保全を図るとともに、棚田地域における定住等・・・並びに国内及び国外の地域との交流を促進することを旨として、行われなければならない。



◯国は基本方針、都道府県は振興計画、市町村は活動計画を作る

それ以降は、具体的に国・都道府県・市町村の役割が規定されています。

国は基本方針を定め、都道府県は、棚田のある地域の振興に関する基本的な計画を定めます。

都道府県の計画には、地域の振興の目標、振興のために講ずる施策を盛り込むことと

されています。
 

(基本方針)

  第5条 政府は、棚田地域の振興に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。


(都道府県棚田地域振興計画)

 第6条 都道府県は、・・・棚田地域の振興に関する基本的な計画・・・を定めることができる。
 2 都道府県棚田地域振興計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
  一 棚田地域の振興の目標
  二 棚田地域の振興に関し、総合的かつ計画的に講ずべき施策
  三 前二号に掲げるもののほか、棚田地域の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項



◯市町村の役割

大臣から振興の施策を講ずる対象として指定された棚田地域がある市町村は、

関係者からなる協議会を設け、振興のための活動計画を策定します。
 

(指定棚田地域)
 第7条 主務大臣は、・・・都道府県の申請に基づき、棚田地域であって、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当するものを指定棚田地域として指定する。
 一 棚田等の保全を図るため、当該棚田地域の振興のための措置を講ずることが適当であると認められること。
 二 当該棚田地域に係る棚田地域振興活動が円滑かつ確実に実施されると見込まれること。
 

(指定棚田地域振興協議会)

 第8条 前条第1項の規定による指定があったときは、当該指定に係る指定棚田地域を管轄する市町村は、・・・当該市町村のほか、農業者、農業者の組織する団体、地域住民、特定非営利活動法人その他の指定棚田地域に係る棚田地域振興活動・・・に参加する者・・・からなる指定棚田地域振興協議会・・・を組織することができる。
 2 協議会は、次に掲げる事務を行うものとする。
  一 指定棚田地域振興活動に関する計画(以下「指定棚田地域振興活動計画」という。)を作成すること。

  ・・・


 
◯活動計画には、各年度の活動内容を示す
 
市町村の活動計画には、計画の期間や、各年度においてどのような活動を行うかを

盛り込みます。
 

 第8条第3項 指定棚田地域振興活動計画には、基本方針に即して(都道府県棚田地域振興計画が定められているときは、基本方針に即するとともに、都道府県棚田地域振興計画を勘案して)、次に掲げる事項を記載するものとする。
  ・・・
  二 指定棚田地域振興活動の目標
  三 計画期間
  四 各年度において行う指定棚田地域振興活動の内容及び実施主体に関する事項
  ・・・



◯棚田地域を振興する人材を育てよう

また、第16条は、国と地方公共団体に対し、棚田地域の振興活動を担う人材を育てる

努力義務を課しています。
 

(人材の育成及び確保)
  第16条 国及び地方公共団体は、棚田地域振興活動を担うべき人材を育成し、及び確保するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。


このようにして、国や地方公共団体、また地域の人たちも参加して、皆で棚田を守り、

棚田のもつ色々な機能を維持していこうという法律だということが分かりました。

なお、棚田地域の振興に関しては、内閣府のホームページに解説があります。

参考にご覧になってみてください。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/tanada/index.html

(この記事は、2020年7月27日時点の法令情報に基づいています)

 

 

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